表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/52

X種族の探索1

おまたせしました。

ようやく気を持たせたX種族の探索にかかります。

広げたふろしきをどうつつむか、作者の苦労をしのんでいただけると幸いです。

お伝えするのを忘れましたが、この章から第3部になります。

 順平は、森下も一緒に地球の牧原宇宙港の地球防衛軍の本部ビルに来ている。あまり大っぴらではないが、狭山章一も連れてきている。章一は、順平に連れ歩かれるうちに門前の小僧ではないが、セミナーでなかなか能力を発揮してカタリシスト1級をとってしまった。

 もともと頭脳は優秀であり、柔軟な考えをするためか、発想と言う意味では鋭いものを持っているが、彼の課題は基礎が足りないということで、山ほど順平に宿題を出されて嘆いている。今回も、「宿題が!」と叫ぶのを無理に引っ張ってきたものだ。ちなみに、乗ってきたのは、新やまとに新たに配属された新型のむらくも型“さいうん”である。


 今回、順平が地球に来た主要目的は、アーマル人に接触した巨大惑星人の星系に調査に行く際に、地球防衛軍も巻き込んでおいた方が良かろうということになったためであるが、さらに地球防衛軍中央研究所の所長就任のためである。結局、地球防衛軍は順平を地球防衛軍中央研究所の所長に招へいした。しかし、小さめのビルは用意したが、今年の予算措置がまだで来年設立と言うのを、順平が待てないといって、とりあえず必要な費用を出した。

 そのいうのでいいのか、防衛軍!


 防衛軍で人類圏防衛会議と言う名の会議が持たれている。

 なんと言っても、ファースト・コンタクトを経験した森下新やまと自衛軍少将、および順平がいるので、やらない手はない。むろん防衛軍の司令官、副司令官以下主だったメンバーは皆出席している。

 冒頭、かってX艦隊を撃破するのは簡単といった(この話が出回って、X艦隊組みやすし論が出ている)、順平に意見が求められた。

「ええ、X艦隊を撃破するのは簡単ですが、また同時に、もし今かのX艦艇が襲撃してきたら、現在の装備・訓練ではわが方の惑星、地球やニューアメリカは守ることは不可能です」


「ええ!そんな馬鹿な!」皆が叫ぶ。


「まあ考えてください。亜光速の物体の衝撃、これは数kgのものであればともかく、数トンとなるとどんな防壁でも突破されます。これを防ぐことは、今のところどんなバリヤーを持ってこようとできません。

 したがって、X艦隊が襲来した時、たぶん大部分の艦は撃破出来るでしょう。しかし、自爆攻撃をしようとする亜光速の敵艦の突進を止めることは出来ないでしょう。

 また、X種族が自爆攻撃をしないという証拠は何もないのです」


 なるほど、この論理には納得せざるを得ない。「しかし、それでは敵に母星が最初に見つかった方が必ず負けるということになるのでは?」防衛軍司令官のアメリカのアラン・ギルバニー大将が言う。「さらに、地球やニューアメリカは守ることは不可能と言われたが、新やまとは?」


「そうです、言われる通りで、相手の母星を先に見つけて破壊する決心をした方が絶対的に有利なのです。また、新やまとは我々の想定が正しければ、基本的には守れます。

 なぜなら、この私中央研究所の所長である吉川順平が人工知能ラーナと協力して、そのような事態でも守れる手法を開発し、すでに必要な装備を新やまと防衛軍には設置し、必要な訓練も施したからです。この点は、地球防衛軍もこの吉川順平が中央研究所の所長に就任したからには、お任せください。装備は準備してきましたし、そのシステムや訓練の手順等については森下司令官から説明してもらいます。

 どうです、私が中央研究所の所長に就任してよかったでしょう」と胸を張る。


 森下が、苦笑しながら立ち上がり狹川章一にあらかじめ用意したプロジェクターを操作させる。どうも順平は防衛軍中央研究所の所長というとお、茶目ぶりを発揮する傾向がある。


「これをご覧ください。防衛システムの概念図です。

 結局このシステムは、亜光速の重量物体の運動エネルギーによる衝撃を防ぐ方法がないという所から考えられたもので、要は“当てなければいい作戦”です。すなわち、近づけないで先に撃破するということです。

 アーマル星の悲劇の戦闘記録の解析の結果、X艦隊のテクノロジーについて、重力エンジンは当然運用しており、その運用も相当熟達しているものと考えられます。そのために、理論上の重力エンジンの最高速である光速を超えた大体2倍程度までの速度を出していますが、我々はまだ重力エンジンのみでそこまでの速度は出せません。また、当然我々のいうFR機の開発は当然できているものと考えられます。

 しかし、一方でかれらは我々が実現している時間フィールドの操作による超光速の実現は出来ていないと、想定されます。

 従って、先ほど吉川所長(強調する)が言っていた、亜光速の運動エネルギーを武器としている、あるいはできることはほぼ確実と判断しています。


 では、アーマル星の破壊になぜ使わなかったのか。

 これは、一つには元来あれがジェノサイドを狙ったもので、あとに放射能が残るいわゆる汚い爆弾を意図的に使ったのではないかと想像できます。また、一方で亜光速を使った攻撃はそう簡単ではないことが、理由に挙げられます。すなわち亜光速を利用するには自分の艦体を亜光速に加速して、相手に突進しつつ重量物体を相手に正確にぶつかるように分離し、自分は的から外れる運動をする必要があります。

 その意味では、自爆攻撃が最も簡単なわけです。

 また、重力エンジンを積んだ亜光速まで加速するミサイルも考えられます。しかし、我々が日常運用している重力エンジンを装備したコミュータ並みの大きさではレールガン並みの速度を出すことはできても、亜光速に達するには、最低で今のおおぞら型程度の大きさが必要になります。今から説明しようとするシステムが開発される前において、日本の防衛軍では、すでに先ほど説明した亜光速で相手に迫ってミサイルを当てるというシステムを一応完成していました。これは、地球防衛軍の各艦にすでに導入されています。

 しかし、これでは惑星など動かない標的を自爆攻撃してくる艦体を防ぐことは出来ないのです。仮に相手を撃破しても、その運動エネルギーの慣性をもって惑星は破壊されるでしょう。これは吉川所長の言う通りなのです。


 結局、時間フィールドを使った超光速、ここが現状における我々のほぼ唯一絶対のアドバンテージであり、それを利用したのがこのシステムです。

 ちなみに、時間フィールドは推進システムを包んで時間を早めることで現状のような超高速を実現しています。現在のシステムのものは概ね1日に10年間経過するというものですから、3,650倍の時間経過と言うものです。これは、重力エンジンにのみ影響していますので中にいる人間には影響がないわけですが、ロボットだったらこの時間ゾーンに包んでも問題ないのです。


 そこで、人工知能ラーマ、これは現状のところ地球で作られたあらゆるコンピュータを超えた能力を持っていますが、その協力で人工頭脳の提供を受け、戦闘宇宙艦用の頭脳に適用しました。そして、その人工頭脳は、時間フィールド稼働中にはその時間帯に入るように設定していますので、いわば3,600倍の速さで考え、反応出来るわけです。


 なお、超光速飛行中は基本的には外の状態は知覚できませんが、太陽系内の活動などは人工頭脳にとっては、超光速飛行中に入る前の状態をきちんと把握しておけば、タイムラグは非常に小さいのでほとんど障害になりません。このように、我々はいわば無敵の戦闘宇宙艦を手に入れたわけです。まあ、かなりの部分はロボットに頼りきりになりますが。


 次に、防衛のためには、相手の艦体を守るべき惑星に一定以上近づけないことが必要になります。現状ではわれわれは、1天文単位(太陽から地球までの距離)である1億5千万km程度がその一定の限度だと今のところ規定しています。そのため、貴防衛軍から提供を受けた監視システムをこの図のように展開し、発見次第、ハブに当たる基地から無人機の1機が本部に急行し、他は侵入艦体を排除に行動します。現在新やまと防衛軍では、監視システムは一応運用しており、戦闘宇宙艦を無人機として運用して、5機を深宇宙に配置しています。しかし、理想的には10機の無人機、即応艦隊が予備を含めて15機を配置すべきと考えています


 従って、当面戦闘宇宙艦をあと10機早急にほしいのですが、この件については後で相談します。システムとそのコンセプトは以上の通りですが、いかがでしょうか」


 森下が長い説明を終える。

 期せずして、拍手がおきる。


「素晴らしい。聞く限りでは完璧だと思う。それで、どういうものを持ってきていただいたのかな。吉川所長?」

 アラン・ギルバニー大将が尋ねる。


「操縦用の人工知能5セットです。また、戦闘宇宙艦へセットのためのロボットも連れてきています。いま、新やまとでラーナの指導の下でロボットたちがこの人工知能を生産しています。しかし、あと1月で20機分がそろうかなという所です」順平がいうのに、森下が追加する。


「新やまとでは、いま戦闘宇宙艦5機を無人機としため、機体が足りません。とりあえず、5機頂きたいのですが」


「うーん。」キリバリーが西山慎吾空将を見る。空将がうなずくのを見て、キリバリーが。

「まあ、よかろう。では回航員が帰りに人工頭脳を持ってくるということだね」


「承知しました。また、追加の戦闘艦も早めにご準備ください。お願いします」と森下。

「次に、本日の主要議題の一つである、X種族の探索について、協議します。これについては提案者の吉川地球防衛軍中研究所所長からお願いします」


 司会の深山空将補が次の議題に振るが、なかなか順平をくすぐるのがうまい。


「はい、今回調査しようとしているのは、アーマル星系の巨大惑星を探索していた種族で、アーマル星から5光年の距離の恒星系に住んでいると考えられています。

 これは、アンモニアを呼吸する種族でアーマル人も直接は接触しておらず、アーマル人の絵によるコミュニケーションによってある程度の情報取集をしたのみで、相手の言語構成はわかっておりません。ただ、自分たちをリネンと呼んでいるようなので、今後はリネン人と呼びます。

 どうも、接触の印象からはこの種族リネン人は接触には消極的であり、アーマル人からの呼びかけにも嫌がっているような印象を持っています。アーマル人が、去っていくかれらの軌跡を追いかけて、対象の太陽系はすでに特定しています。また惑星の構成についても、アーマル人が10光年程度の星系の惑星の構成を知る方法を持っているためわかっています。

 また、その宇宙船はロケットエンジン式のもので、光速の1/2しか出ないものであったようです。従って、隣の恒星系であるアーマル星系に来るには10年以上を要しているわけで、リネン人がアーマル人の星系まで旅をするというのは相当強い理由があったと思われます。


 X種族の探査は、まずこのリネン人から始めようと思っているのは、一つにはアーマル星の襲撃が、接触も、予備段階の脅迫もなにもなく余りに突然行われていることです。少なくとも、酸素呼吸生物で地球に近い環境で住んでいる種族であれば、自分たちでも住める惑星一つを滅ぼすというのは、少なくとも惜しく思い、ためらうはずです。そういう意味で、私はアーマル星がその種族にとって生活に適さないため、なんら価値を感じていなかったのではないかと思っています。


 従って、巨大惑星でアンモニアの大気に住む種族であれば、十分そういうアクションを取ることは可能性としてはあります。しかし、光速の2倍程度の速度で100隻からの艦体を送る、しかも核爆弾を大量に消費するというのはどういう種族にとっても一大イベントです。

 何らかの明確な理由がなくてはなりません。


 実は、今回調査しようとする対象の種族がその襲撃をなした種族とは思いません。まず、重力エンジンを使っていないこと、またアーマル人はその種族リネン人がたいへん穏やかであり、他種族を滅ぼすようなメンタリティでないと、はっきりした印象を持っていることがあります。

 アーマル人はそうした、対人関係に関しては極めてセンシティブであり、私は彼らの印象を信じます。また、アーマル人は同時に、そのリネン人は調査の結果に失望していたという印象を持っています。つまり、10年をかけて他の太陽系内まで出かけたけれど無駄になったということです。まあ、結局行かないとわからないということですけれど、今回の調査は、従って危険性は低いと思っています。必要な機数としては、1機では万が一失われた場合にどうしてであるかかわからないので、少なくとも2機、やはり余裕を見て3機でしょう。

 そういうことで、私は行きますのでよろしく。

 出発は、先ほどお伝えした改修が終わってからですから、1週間後ですね。

 ご清聴ありがとうございました」


 すでに、順平が行くのはだめだと大声の抗議の声が出ているが、無視して順平は話を終えた。


 結局あらゆる反対を押しのけて、順平と章一は新やまとから来た、むらくも型“さいうん”により今回の調査飛行に同行することになった。


皆さんの読んでいただいている反応が、励みになっています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ