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地球防衛軍の設立

今度は地球防衛軍です。

 さて、地球である。

 アーマル星の破壊という現実を突きつけられて、地球は混乱している。

 中では、日本はまだましな方で、もう引退の話も出ていた阿山首相が危機管理は彼がいなくては話にならないということで当分続投の情勢である。まもなく実施される衆議院選挙で、自由民主党は日本の夜明け党に第1党の席を明け渡すことが確実な情勢であるが、日本の夜明け党は自由民主党と連合を組み阿山首相を選出するという宣言をしている。


 たぶん、この2党で8割の議席を占めることになるので、間違いなくそうなる。しかし、一方で同党は健全な民主主義という観点からみれば、日本の夜明け党と自由民主党は2大政党として互いに政権をかけて争うべきであるとしている。しかし、現在は地球人類の存続にかかわる非常時であって、この時点ではベストの選択をすべきという観点から阿山内閣の成立を支持するという声明を出している。


 このなかにあっても、日本の防衛軍はアーマル星破壊の情報から中・長期の兵員の配置と装備の更新の計画を策定している。つまり、宇宙からの侵略および襲撃に対する防衛という意味では、多少でも頼りになるのはアメリカ合衆国とロシアのみであり、他はこちらで防護してやらなくてはならない存在である。


 現在、アメリカはおおぞら型類似の戦闘宇宙艦を10機運用しており、これはレールガンも同等のものを装備している。さらにロシアは3隻であり、他の国については戦闘宇宙艦を持っていない。

 しかし、謎の宇宙艦体、最近ではX艦隊、それを運用する種族をX種族と呼ばれているが、これは艦体が極めて丈夫で、レールガンではおそらく効果がない。唯一有効と考えられているのは、亜光速に加速した艦からその慣性をもってぶつけるミサイルのみである。従って、これには卓越した操縦技術と精密なミサイル制御技術が必要である。その意味では、アメリカはともかく、ロシアの技術では命中させることができるかどうか大変怪しい。


 ちなみに、日本国自衛軍のおおぞら型宇宙防衛艦は、まず70%以上のミサイルは命中させることができると自信を持っている。これは、やはり順平効果のたまもので、関係者がたびたび開発発想セミナーを持って日々制御機器、監視機器、ミサイル本体を改良してきた成果で、おそらくアメリカ、ロシアのものと段違いの性能を持っている。しかし、この事態になると、アメリカとロシアにはこの技術は開示せざるを得ないであろう。


 それにつけてもうっとうしいのは国連の存在である。

 日本の分担金支払い停止以来、金つまりの結果人員削減に踏み切った結果、長年の癒着やこまごました不正行為のうみが一気に出てきて、収拾がつかなくなっている。過去韓国人が事務総長だった時、大量に採用した韓国人職員はとりわけ不正行為の宝庫であり、追及される種がつきない。


 しかし、いわゆる途上国にとっては数の力でわがままを言えるのは国連の場しかないわけであり、そう簡単に見捨てるわけにはいかない。勢い、有力国は白けた状態で付き合っているだけ、途上国はいきり立って有力国の非をならすという構図になっている。

 それを、総長のワタリヤはどう収拾をつけるか考えもせず、なかばたきつける状態であるため、以下のような決議が連発されるような事態になっている。

 1)日本は、一連のすべての技術を無償で他の世界に供与せよ

 2)日本防衛軍は直ちに解体して国連軍として再編せよ

 3)先に日本が中心になって分配した惑星は全面的に国連の監視の下で再分配せよ


 まあ、これらの決議には強制力はないので実害はないのであるが、日本国民の感情を著しく損ねた。日本は、戦前、国際連盟の時は怒ってかっこよく引き上げてしまったのであるが、その後孤立して結局戦争をしてしかも負けることになったことを反省し、今回は大使を引き上げるようなことはしない方針である。それはせず、おのおのの決議の際には厳重に抗議させるとともに、『いいの?現在構築中の地球防衛計画策定時には今回の決議はよく覚えておくよ』と遠回しに言わせている。国連大使もご苦労なことである。


 日本は、とりあえず戦力になるアメリカとロシアを加えた首脳会談を開いた。場所は真ん中の日本である。そこで、会談の末に、地球防衛軍を3国で結成することを世界に向けて宣言した。まあ、アメリカとロシアにはそれしか選択の余地がないのであるが。

 現在、世界中の国々からおおぞら型戦闘宇宙艦の注文が殺到している。いまのところ、その建造は日本とアメリカにしかできないし、アメリカは他国に輸出するほど造船能力がない。

 同時に建造にかかっているのは50機であるが、うち40機を輸出する予定になっている。輸出時の1機の価格は250億円であり、かって、エアバスが250億円以上したことからすれば安いものである。もっとも原価は100億円であるが、政府を通してでしか輸出できないようになっている。従って、イギリス、フランス、ドイツ等が買い込んで艦隊を作って防衛軍に加わる予定になっている。この場合、国連は全く無視である。


 地球防衛軍の司令部は、日本の牧原宇宙基地におくが、もちろん、アメリカとロシアの支部としての宇宙基地もそれぞれアメリカ、ロシアに置いている。地球防衛軍の設立会議は、2026年の7月10日に行われたが、この日は奇しくも新やまとにおいて、新やまと防衛軍の準備会議が開かれた日であった。

 司令官は、既存兵器では世界一に敬意を表して、アメリカのアラン・ギルバニー大将、副司令官は日本の西山慎吾空将、ロシアのヨセフ・アジゾフ中将である。防衛軍最初の仕事は、アメリカとロシアの戦闘宇宙機の改修である、現在アメリカから5機、ロシアから3機全機がきていて、改修中である。


 その7日後に、牧原宇宙基地に突然、新やまとから“はくうん”が飛来した。

 その日は、司令部として与えられたビルに、ギルバニー大将、西山空将、アジゾフ中将3人がそろってミーティングをしており、「新やまとから来た、戦闘宇宙艦“はくうん”が着陸許可を求めています」という日本語の知らせに振り返った。ちなみに、ミーティングの言葉は英語である。


「どうして?予定にはないのに」西村が日本語で聞く。


「わかりません。しかし、超光速飛行からの通常空間への現れ方が少し異常でした。位置が通常より遠すぎるのと、速度が光速の98%まで達していました」連絡員が答える。


「ふむ、まあ、ずれにせよ着陸許可は出したのだろう?艦長は白鳥三佐だな?着陸したら来てもらってくれ」西村に連絡員は答える。

「はい」


 西村は、ギルバニー、アジゾフに英語で状況を説明する。30分ほど待つうちに、先ほどの連絡員が制服を着た将校を案内してきた。


「失礼します。こちらが、白鳥三佐です。いま、お着きになりました」


 白鳥が敬礼する。「新やまと駐在で、“はくうん”艦長の白鳥三佐です」


「こちらが地球防衛軍(Earth Defence Force)の司令官アラン・ギルバニー大将で、私西山慎吾空将およびヨセフ・アジゾフ中将が副司令官だ。まず、そっちに座ってくれ、それから君の飛来の理由を教えてほしい。新やまとでなにかあったのか?」と西村が英語で聞く。


「はい、私は新型の超光速飛行システムを積んだ、私の乗艦の“はくうん”でこのシステムを防衛軍にお届けするために参りました。また、新やまとでは新やまと自衛軍の設立準備会が開かれ、今準備中の戦闘宇宙艦7隻を受け取り次第発足式が行われることになっています。ちなみに今、地球時間7月17日の15時ですが、私が新やまとを出発したのは地球時間で昨日の7時です。1日と8時間のフライトで到着しました」白鳥の英語での答えに、3人の将軍は目をむいた。


「なに!そんなことがあるのか。以前は新やまとからは10日と12時間が最短記録だったと思うが」西村が言う。


「はい、たった5日前に組み付けられて、試運転に成功したシステムです。必要な部品は10式持ってきています。組み付けは私の艦の機電下士官ができます。またシステムの設計資料と、詳しい大学のスタッフが来ていますので、部品の量産はすぐにでもできます」


 白鳥の英語の説明に、ギルバニー大将が言う。

「とりあえず、そのたった1日と8時間で12光年を飛んできたという艦を見せてくれ。それと、どういう風に改修したのかもね」


 皆で、コミュータに乗って、“はくうん”まで行き、乗り込む。

 電磁銃とコントロールパネルのカバーを佐良山曹長が外して、白鳥艦長が英語で説明する。


ギルバニー大将がそれを受けて評価を述べ質問する。「たった、これだけの改修か。これは、既存の艦の改修は非常に早く済むね。しかし、10倍の速度は画期的なことだ。わがニューアメリカも現在の11光年の距離が1/10の距離に縮んだのと同じことになる。今もっている船団で10倍の荷物を運べるわけだ。

 白鳥三佐、旅客船や貨物船も同じ改修ができるのだろう?」


「いえ、残念ながらそうはいかないようです。戦闘艦は超光速用の電磁銃に余裕を持たせて能力を決めていたので、今回の改修で交換の必要はなかったのですが、旅客船や貨物船は電磁銃を制作して交換する必要がありますので、最初の改修まで2カ月位は要するかと。ただ、組み付けそのものの時間は要しませんので、全体で100機程度であれば10日もすれば試運転も含めて終わるでしょう」

 そのとき、改修指導に“はくうん”で一緒に来ていた斎藤準教授が答え、さらに説明する。「失礼しました。真珠大学の物理学教室の斎藤准教授です。改修の技術指導に新やまとから来ています」


「おお、今回の持ってきた開発品は地球防衛軍にとっては極めてありがたいものだ。速度が10倍と言うのはなにものにも代えがたいアドバンテージだからね」ギルバニー大将が斎藤に握手を求める。


 その後、3日間で、アメリカ2機、ロシア1機を含め、10機の戦闘宇宙艦の改修を終え、さらに、必要な基盤の製作方法および増強型電子銃の設計内容の説明を含め、7日間を牧原宇宙港で過ごした、“はくうん”乗員および斎藤をはじめとする大学からの要員は、着いて7日後新やまとに出発した。

 なお、白鳥艦長は、森下の指示で、新やまとへ配置される予定の艦の視察と、宇宙港の一角で訓練中のその要員105人に会いに行っている。艦については、艤装はすでに終わり機器の動作試験と調整に入っている。


「あと一週間で航海に出ることができますよ。最後になって、白鳥さんが持ってきた超光速システムの改修が入りましたがね」艤装担当の技術将校が言う。


「いやあ、最後になって変更ですみませんでしたね」白鳥艦長が頭をかきながら言うのに、


「いや、これほどメリットがはっきりしているものは、どんなに無理でも意義を感じられますから、苦痛ではないのですよ。むしろ、我々が作っているものの価値を高め、かつ生存性を高めてくれるのでありがたいです」技術将校は真面目な顔で言う。


 白鳥が訓練所に行ったとき、ちょうど休憩時間であった。

 訓練生が、汗を拭きながら座っているのに対し、案内してくれた地球防衛軍の日本艦隊の指揮官である、深山空将補が紹介する。


「皆、注目!かれは新やまとから来た、“はくうん”の白鳥三佐艦長だ。はくうんは知っての通り、新型の超光速システム装備の艦であり、かれはそれでわずか1日と8時間で地球まで来た。君たちの配備される艦にも同じシステムが装備されるので、今後新やまとまで1日半もあれば行けるようになる。白鳥艦長は君たちと同じ新やまと防衛の役を担う、いわば同じ釜の飯を食う仲間だ」


「よろしくお願いします。白鳥三佐です。あなたたちは、1週間程度のうちに実際に試運転として航海に出るように聞いています。その後、1週間以内には日本と言うより地球を去って、新やまとに来られることになります。

 新やまとでは、あなたたちが乗ってきた艦が着き次第、新やまと防衛軍の発足式を行う予定にしています。あなたたちは、その新やまと自衛軍の一員になっていただきます。行ってみればわかりますが、新やまとはいいところですよ。今日の夕食には、私どもの司令官の森下少将から、差し入れで、少しばかしですがアルコールを提供します。その席には、私と乗り組み員12人がご一緒させて頂きますのでよろしくお願いします」


「おお!それはいい」と歓声が沸く。


 その夜、白鳥と“はくうん”の乗員は元気な105人の乗員(男70名、女35名)と楽しい時を過ごした。また、訓練生にとっては、新やまとに住んでいる同僚から話を聞けて有意気な時間であった。


 また、白鳥は、いま防衛軍が準備中の監視システムの話を聞く、これは全部で100機のターミナルを太陽系の各所に設置し、センサー体を各ターミナルにつき1万散布して、センサーがキャッチした信号をターミナルで受けたら、5つのハブターミナルに送るというものだ。残念ながら信号は光速なので、相手が超光速であると、必要な時間内に情報は届けられない。従って、天王星軌道および、土星軌道、木星軌道付近に全部で無人機10機を配置して、有意な信号をキャッチした時は超光速で地球に届けるというものである。

 これに関する資料を使っての説明には、テクニカル的に高度な話ということで斎藤に立ち会ってもらっている。


 この設計図および仕様書まで含んだ資料と、センサー体のサンプルは新やまと防衛軍への貴重なお土産になり、新やまと防衛軍も同じシステムを建設する決断をするのであった。



地球防衛軍と言う響きが好きなんですよね。

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