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狂人の恋同様、エッチなシーンはないけど、一応こちらもR指定といたします。
約束なんていらない 〜最低男と最低女2〜
作:深水晶


 私は恋人に信頼されていない。それは当然かもしれない。私はこれまで、複数の男に抱かれてきたのだから。尻軽、淫売、男にも女にもさんざん言われた。
 誰も何も、私を愛さなくて良い。愛されたいと思わない。私が愛しいと思う人以外には。
 聖人君子のような顔をしていても、男は皆、女と寝たがっている。相手の内面なんかどうだって良い。相手の心なんか気にしない。
 私はモノだ。男が入れて出すだけの存在。
 私が快楽を与えなくても、身体を許さなくても、それでも私を愛してくれる男なんていない。恋人の貴雄ですら。
 私に、性欲の対象として以外の価値などない。
 私を性欲なしに、私の容姿ではなく、内面のみを、純粋に愛してくれる人はいない。
 私に友人などはいない。家族もいない。
 私は物心ついた頃には、既に性欲の対象だった。
 私を守ってくれるものは何もない。
 私を救ってくれる人はいない。
 私は孤独だ。だけど誰かに何かに、慰められたいとは思わない。
 だけど、愛は欲しいの。
 永遠なんかいらない。
 一瞬だけで良いの。だから、私を全身全霊で愛して。あなたの全てで愛して。
 信頼なんかいらない。誠実さもいらない。
 女との約束など、簡単に忘れて破るのが男の性でしょう?
 貴雄は上手な嘘をつくのが得意な男。
 女の気分を良くする言葉を知っている男。
 そして女に束縛されたくない男。
 満足されたら、全てを知られたら、彼はきっと私に興味を失って去ってしまう。
 優しくされたいとは思わない。
 愛されたいけど、慈しまれたいとは思えない。
 だって私は、無条件で誰かに愛された事がない。
 何もなくても好きだと言われた事がない。
 見返りがなくても好きだと言った男は、誘いをかけると皆乗って来た。拒んだ男はいなかった。
 私はその度に絶望した。
 同じ男に何回か体を許すと、中には専属になれと言ってくる男がいた。だけどそれは愛情じゃない。単なる独占欲。それは決して愛じゃない。
 私は言葉を信じない。だって口では何とでも言えるもの。
 特に性欲に踊らされた男の言葉は信用しない。
 彼らは自分の欲を満たすためなら何でもする。嘘なんて簡単。
 だから、私は約束を、誓いを信じない。
 私は頭がおかしいの。生まれてこの方、何度も言われた。
 こんなことは、セックスなんて、たいしたことじゃないと思わなければ、生きていけなかった。
 生きていくためには、身体を許さなくてはならなかった。
 誰も私を無条件で守ってはくれなかった。
 身体を許さなければ、食事を与えられないなら、それを与える。更に好条件を得るために奉仕して、自分の要求を受け入れさせる。
 私は誰も何も信じない。だから、誰にも何にも信じられなくて当然だ。
 だけど思う。徹夜明けで、帰宅途中で、軽くシャワーを浴びて仮眠を数時間取って、始発で帰宅した途端、浮気したと決めつけられる、理不尽さ。
 これは全て、私のせいなの?
「寝たのか?」
 と、聞かれて、
「寝たわよ」
 と答えた。それは、仮眠のことを差して言ったつもりだったのだけど、次の言葉で、そういう意味ではなかったと初めて気付いた。
「俺は寝てないぞ。それとも前言撤回か? お前が他の男と寝るなら、俺もそうするぞ」
「貴雄はダメ」
 反射的に言った。
「何だと?」
 ものすごい目で睨みつけられた。……最低の気分。だから、偽悪的に、挑発的に言ってしまう。
「だって貴雄、他の男と寝た後の私とするの、実は結構好きでしょ? いつもより激しいし濃厚だし、時間もかけてくれるし」
 そう。貴雄は愛していない女でも、他の男と寝た女を抱く時は、そうではない女を抱く時よりも、熱心に奉仕する。
 彼は精神的な子供。我儘で、愛されたくて、甘えたくて、自分が愛してなくても、相手に愛されたいの。子供っぽい嫉妬もする。
 彼は大人じゃない。大人の顔した子供だ。だから、女を愛するという事がどういう事か判っていない。だけどそれでも良い。それでも、私は、貴雄を愛している。だけど束縛したいとは思わない。彼が私を本当に望んでいるとは思えない。だって私に、誰かに何かに愛されるほどの価値があるとは思えない。
「ふざけるな。いい加減にしろ」
 貴雄は吐き捨てるように言った。睨みつけて言う彼の顔は紅潮している。可愛い。その顔は、とても可愛いと思う。私は無言で微笑んだ。
「じゃあ、別れてくれ」
 傷付いた子供のような口調で彼は言う。
「でなきゃ死ね」
 ああ、なんて甘美な言葉。
「素敵」
 私は言った。
「殺して?」
 彼を見上げて、恍惚としながら言った。それは、とても甘美な夢。
「今すぐ殺して?」
 死にたいとは思わないけど、あなたに殺されるのなら、悪くない。
「殺してよ?」
 死ねと言うなら、どうか本気で私を殺して。殺してよ。だって、そうでもしなくちゃ、私は報われない。生きていても、意味を、理由を、価値を見出せない私には、快楽を貪る以外に、生きる理由なんてない。
 だって誰にも必要とされていないんだもの。
「好きよ、大好き。愛してるわ、貴雄」
 だから、どうか、お願い。私の息の根を止めて。
 あなたが私に飽きる前に。
 あなたが私に愛想を尽かす前に。
 あなたが私に興味をなくす、その前に。
 私を、あなたの永遠にして。
 殺した女を忘れてしまえるほど、あなたは薄情な男じゃないでしょう?
「私が欲しいなら、もっと求めて。昼も夜もなく狂うほどに、あなたしか見られなくなるくらいに、私を求めて愛してよ?」
 そしたらあなたが殺してくれなくても、あなたのために、死んでも良い。
 私はあなたの全てが欲しい。
 それがあなたの全てじゃなくても良い。
 だけど、私がそう思えるだけのあなたを、私にちょうだい。
「あなたの愛が、心が欲しいの。あなたの全てを、私にちょうだい。欲しいの」
 お願い。
 苦しいの。
 だって、私は、あなたのために、何をすれば良いのか判らない。
 料理もできない。
 掃除も下手。
 洗濯は洗濯機があれば何とかなるけど、手洗いはダメ。
 アイロンがけも満足にできない。
 あなたは料理が得意で、掃除も上手で、繕い物も、アイロンがけも、下手な女より器用に出来てしまう。
 あなたは家事に従事させるための、女を必要としない。
 あなたが必要なのは、自分の性欲を満たすための女。
 あなたは子供を欲しがらない。
 あなたは契約を欲しがらない。
 だから、私に、あなたを繋ぎ止める方法は何一つない。
 あなたは無言で、私を抱く。苦しげに私を見つめて、情熱的に。
 私はそれで、至福を味わう。
 あなたに必要とされている間だけ、私は何も考えずにいられる。
 今この時だけは、私はあなたのもので、あなたは私のものだと思えるの。
 永遠なんていらない。
 一秒でも良いの。
 私をあなたの全てで愛して。
 ……約束なんて、いらないの。


The End.


というわけで(?)美幸サイドの話を書きました。
とりあえず別サイトの書きかけの美幸視点の物語が終わってないので、どうしようか迷いましたが(多少そちらのネタバレになるので)。
要望あれば、そちらの話をこちらにUPします(ただし完結次第)。













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