第27話:シャーペン
あ〜、テスト勉強忙し! 周り見渡したら勉強してるやつばっか…じゃないといけないんだがこの学校の昼休みは雰囲気はいつも通りだった。何を隠そう勉強忙し! とか言ってる俺がもう勉強していない。なぜなら旅立ってしまったと思われていた俺の恐竜シャーペンが目の前に現れたのだ。
今すぐこの手に掴んでやりたいがそれは出来ない。なぜなら変人扱いされてしまうからだ。
何故自分のシャーペン持つのに変人扱いされるのかって? それはそのシャーペンがリナの胸ポケットに入っているからだ。
「別に取ってもいいけど?」
なんてほくそ笑みながら言ってくるがどうせ取ったら変人扱い決定だ。周りは
「いやー、中林はどうするのか楽しみですねー、解説のヤジマドルさん」
「できればおじちゃんにしてくれないかい?」
「実況中じゃ使いにくいんで却下でーす」
「ちぇ。えと中林がどうするかと言うとおじちゃんの予想じゃ隙を見て無理矢理奪うと見た!」
「へ〜、じゃあ変態に成り下がると思うわけですね。つーか意地でもおじちゃん入れやがりますかー」
なんて実況して下さっていたり
「土下座して返してもらうに百円」
「私はリナちゃんが素直に返すと思うわ。それに百円」
「いや、それは無いな。おじちゃんを信じて百円だ」
賭けしてるやつらもいる。周りのギャラリーにイラついているとまた一人増えた。
「大変ですね、中林君」
「学級委員さんか…。ちょっと助けて」
曲がりなりにもクラスの代表だ。微かな望みを託してみた。
「分かりました。山口さんに矢島君」
「はい?」
「あなた方今日は図書委員でしょう? 司書の方が困っていましたよ」
「あれ、そうだっけ?」
「この成り行き見てたかったのに…、ちっ!」
山口と矢島はぶつぶつ文句言いながら教室から出てった。さすが学級委員!頼りになる。
「それじゃちょっと助けたんで僕はこれで」
そう言って石川はいそいそと教室を出ていってしまった。ちょっとと言わずいっぱい助けてとでも言えば良かっただろうか。ギャラリー減ってマジでちょっとしか助かってねぇ。ていうかリナにシャーペン返してもらえるよう頼んでくれんのが一番なんだが…。
仕方ない、言葉遊びで勝てるとは思えんが俺が説得するしかない。
「さっさと返してくれないか?」
「私が素直に返すと思う?」
「森本はそう賭けてるようだけどな?」
「う〜ん、ミオちゃん分かってないみたいね」
「じゃあどうするの?」
「こうすんの」
リナは胸ポケットからシャーペンを取り、それをミオの胸ポケットに入れた。するとミオの顔から笑みがこぼれた。嫌というほどイタズラを受けた俺には分かる。この笑みはイタズラする時の笑みだ。
「素直に返すと賭けてくれた君なら返してくれると思うが?」
「ごめん、今ならリナちゃんの気持ち分かるわ!」
そう言ってミオは教室から逃走した。ダメ元で言ってみたがやはりだめで俺の感覚に狂いはないことが立証された。
「ち、追い掛けんのも面倒だし、勉強すっか」
俺は塾でもらったテキストを開きそれに取り組む。が、リナ達は何らかのアクションを起こすだろうとじーっとこちらを向いている。そんなに注目されたら勉強しにくいだろうが。
「勉強してんだからあっち行ってろ」
「私の席ここなんだよね」
そうだった。それじゃ文句言えん。
仕方ないから勉強を進めるがどうも集中できん。しかもなんだか恐竜シャーペンの思い出が蘇ってきた。
まだ俺に母親がいた頃の話、あるテーマパークでそのシャーペンを母親に買ってもらった。そのテーマパークには恐竜を模したマスコットキャラクターがいて、そのシャーペンにはそれが描かれていた。
特に買いたい物がなく不足していたシャーペンを買ってもらったんだが、それが母さんからの最後の贈り物だとは夢にも思わなかった。母さんは交通事故で死んでしまったのだ。それ以来俺はそのシャーペンを大事に使うことにした。
長い間そんなこと忘れてたんだが…。我ながら嫌なこと思い出しちゃったな。
「ちょっと中林、もうチャイム鳴りそうだから返すわ。全く難しい顔しちゃって、返すタイミング分かんなかったじゃない」
あの日の出来事を繊細に思い出してる間にそんな時間になってしまったようだ。結局勉強できてねぇ。
俺はミオからシャーペンを受け取った。できるだけ難しい顔しないようにして。
「それは悪かったな。それともうこのシャーペン取らないでやってくれ」
「へ?」
「難しい顔してる間に思い出したんだよ。このシャーペンを取ることは俺の心に土足で踏み込むことだって」
「は?」
みんなポカンとしている。まあそうだろうな。あんまり深く言いたくないしこんな感じでいいだろう。
「ようはこんな面倒なことすんなってことだよ。分かったか?」
「分かったも何もなんか中林の反応薄かったからもういいや」
「へ?」
今度は俺が驚いた。いや呆れたのかもしれない。
「そうだよなぁ。なんかつまんなかった」
「文化祭疲れかな?」
「教室出て逃げた甲斐がないじゃない」
………どうやらこいつらは面白いか否かで物事を判断するらしい。まあそれでこいつが盗られないならいいさ。
「ま、そういうわけだから盗らないでいるわよ」
「ああ、そうしてくれ」
「しばらくは、ね」
ちょうどチャイムが鳴りリナが最後になんて言ったか聞こえなかった。
「なんて言ったんだ?」
「何も」
窓の方を向きながら言ったのでリナの表情が分からない。イタズラする時の顔かもしれないしまた別の顔かもしれない。だがこいつはまた狙ってこようとする気がする。
少しシリアスな場面もありましたがリナたちには関係ありません(笑)
あんまりこの小説でシリアスやって面白いか分からないんでこれでいいのかもしれません…
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