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プワプワなすなす

 プワプワのナスくんは秋がすぎ、少しあせっていました。

 〝秋ナスはヨメに食わすな〟

 と言われるほどちょっと前までチヤホヤされていたナスくん。

 お父さんにはお酒のおともの焼きナス、お母さんには、おとなりの奥さんに教えてもらった揚げナスのめんつゆぶっかけサラダ、お姉ちゃんにはエビとナスのグラタン、と、皆ににおいしく食べてもらったのに、マーくんだけはかたくなにたべてくれません。

 そして今は冬、皮はかたくなり、実はだんだん水分がなくなってきます。おいしい時をのがすと、これからますます食べてもらえなくなってしまうのではないか?そんなおもいがナスくんをふあんにします。

「ねえマーくん、きみはどうしてナスをたべてくれないの?」

 そうきいてもなにもこたえず、チラリとナスくんをみるマーくん、その目はツヤツヤのクロいおなかにむけられていました。

『やっぱりこんな黒いお野菜なんかたべたくないのかな?それともたべるときのキュッキュッとなるあれが嫌いなのかな?あっ、アツアツになった時のトロトロか、トロトロがきらいなのかな』

 そう思うと、ナスくんはだんだん悲しくなってきました。

『おいしい時期をのがしたナスなんて、なんの栄養もないただのプワプワだ』

 今日はふだん忙しいお父さんもつれて、お姉ちゃんとマーくんできんじょのスーパー「まつだいら」まで来てくれたのに、そのお父さんが「こんばんも焼きナスで一杯いきたい」といって買ってくれたのに、マーくんはたぶんナスを食べてくれないんだ。

 しょうがないよね、焼きナスじゃ子供がよろこぶはずがない。

 さっき買い物カゴの中で聞いた、お父さんといっしょにハンバーグやジュース、チョコレートをえらぶマーくんのうれしそうな声に、ナスくんは『ボクもあんなによろこんでほしいな』とおもいました。

 ナスくんだっておいしいおかずになる自信があります。
 お肉をはさんで焼いたナスの肉づめ、そこにチーズでも溶かせばハンバーグにも負けないこどもにもおいしいナス料理になるんだよ。

 だけども、マーくんがよろこんでくれたことはありません。このあいだはマーボーナスをたべる時ですら、きようにナスをよけていました。ナスのないマーボーナスなんて、トロミのついたピリカラひき肉なのに。

 いつもナスくんを見てはガッカリ顔をみせるマーくんをおもいだして、なんだか悲しくて涙がでてきました。

 秋をすぎたとはいえ、まだまだ水分タップリのジューシーなナスくんからはとめどない涙があふれでてきます。

 あんまり涙があふれでて、小さな水たまりとなったところへ、足をとられたお父さんがツルンッ! とすべって、スッテンコロリンころんでしまいました。

「いてててて」

 お父さんがひどくぶつけたひじをさすりながら立ちあがります。
 お姉ちゃんとマーくんは「おとーさんだいじょーぶ?」としんぱいしますが、だいじょうぶ、なんともありませんでした。

「ゴメンゴメン、お父さんすり傷もないからへいきだよ」お父さんはひじを曲げのばし、へいきな所をみせてくれています。

 あんしんしたふたりは道にころがった買い物をあつめてまわるおてつだいをしました。

 さいわいワレ物を買っていなかったので、ホッとしながらナスくんをひろいあげた時、ウラを見たマーくんがギョッとしました。

 なんと、ナスくんの下半分がアスファルトでジャッとすれてしまったのです。

『おわったーーー』

 ナスくんはあたまがまっしろになってしまいました。マーくんに食べてもらうどころか、お父さんの焼きナスにすらなれないなんて。

「あーあ、これじゃ食べれないね」

 マーくんのひとことがトドメをさします。それもしょうがないこと。
『泣きぬれたボクがわるい』とガックリおちこんだナスくんは、その後どのようにして家についたか分からないままに運ばれて行きました。

『このままゴミばこ行きか、奥さん、はかない夢を見たバカなボケナスがここにいますよ、どうぞ笑ってポイッとやっちゃって下さい』

 すてばちになったナスくん、あんのじょうマーくんはナスくんを持ってゴミばこにむかいました。

「チョット待って、マーくん」

 その時、お父さんがマーくんを呼びとめました。

 マーくんがふりむくと、肩に手をおいたお父さんが「これは食べ物だから、捨てないんだよ」と言ってマーくんの肩をはなし、手をさしだします。

 マーくんはお父さんの手にナスくんの入ったふくろをのせると、お父さんは大事そうに受け取りました。

 お父さんは台所に立つと「今日はひとしな僕がつくるぞ」とお母さんに声をかけます。

「まあ珍しい、結婚してからはじめて作ってくれるのね」お母さんはじょうきげんでうれしそうに台所にやってきました。

 流しをひねってタライに水をためると、ナスくんをほうりこんでジャブジャブと洗いだしました。

「見てごらん、水にぬれたナスはキレイだろう?」

 そう言われてのぞきこんで見れば、黒いかわがキラキラとかがやいて、ヘタの近くのむらさき色がとってもきれいで、マーくんはナスくんをみなおしてしまいした。

 ていねいにゴミを取った後よく水気をとってから、アスファルトですりむけた所をキレイさっぱりとりのぞくと、真っ白の実がスパッといさぎよい切り口をみせてくれます。

 その実を大きめに切ったお父さんは、となりで見ていたお母さんに「ナスは塩をふると油をすいすぎないんだ」と言うと、パッパッと塩をふりかけます。

 横で見ていたマーくんは、高いところからじょうずに塩をふるお父さんを見上げました。パラパラと降る塩がまるで雪のようにキレイに輝いてみえました。

「あなたいつも高い所から塩をふるタレントを見てバカにしてたくせに、子供の前ではいいカッコして」と妙なツッコミを入れるお母さんに照れるお父さんは、フライパンに油を入れて熱すると、ジュワンッ!といっきに炒めはじめました。

 そのてぎわの良さにマーくんはおどろきます。お父さん料理できるんだ。ふだんのご飯前はテレビを見てビールばっかりのんでいるお父さんが、きょうは台所に立っている、マーくんはそれだけでなんだか楽しくなってきました。

 お父さんはリズミカルにザッカザッカとフライパンをふると、だしの素をふりかけてしょうゆをひとふりジュンッとかけたらできあがり。

 白いお皿にのったナスくんは油のてりでツヤツヤと輝いてみえました。

「食べてごらん」

 お父さんがお皿をもってしゃがみます、優しい目でまっすぐマーくんを見ていると、お母さんがお箸をもってきてくれました。

 みんなが見守るなか、マーくんはナスをつかむと一口パクリ。

「おいしい!」

 油でしっかり炒められたナスはマーくんのきらいなキュッキュッという音もしませんし、油とあいしょうのいいナスならではのコクがお口にひろがり、アツアツでトロトロのプワプワがなめらかにとろけてしまいます。

「トロトロっておいしいんだね」マーくんはあたらしいはっけんをしたようです。

 よこで見ていたお姉ちゃんも一口食べて「うん、いける」と言いました。

 お母さんもよってきて一口パクリ。

「あら、いけるわね」

 と言ってもうひときれ食べようとするので、お父さんが「これは僕のおつまみなんだぞ!」と言うと「いっけない」とお母さん。

 お父さんが笑うと、お母さんも、お姉ちゃんも、マーくんも笑いました。

「あはははっあはははっ」

 いつまでもいつまでも笑いがたえない台所、そしてモチロン、ナスくんもうれしくて笑いましたとさ。

 めでたし、めでたし。
子供ができた記念に投稿しました。
教訓は「食べ物は大事にしよう」ですかね?ナスのぷわぷわ感が出ていれば幸いです。

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