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home truth
作:乙未七菜


しんと静まった夜にこそ、わたしとあなたは一つの魂だったんじゃないかって思う。
孤独や不安など、実はどこにもなかったのかもしれないと思う。
あなたがいれば。あなたさえいれば。それだけで。
もうわたしはなにもいらないのだ。
あなたさえいれば。

目覚めたのは真夜中で、そしてそれはとても冷たく、カーテンの隙間から見えた月は嘲笑っているかのように光って見えた。
小さなベッドに五月と二人ぎゅうぎゅう詰めで寝ていて、そしてわたしは五月にぴったりとくっついていた。寝巻きというものを持たないこの男は、昼間着ていた白いシャツを着たまま寝ている。毛玉だらけのスウェットの感触を足の裏で感じた。
まるでわたしはこの男の、抱き枕かのような状態になっている。
これが本当にあの貧弱で虚弱だった男と同じ人間だとは思えない。あっという間にわたしの身長を越え、大して変わらなかった体重も増え、有り得ないほどに成長してしまった。前ならえの時に隣に並んで腰に手を当てていた、あの人間とは思えない。どうしてわたしは、あの時とほとんど変わらぬ姿形をしたままで、ここにいるのだろうと疑問に思ってしまうほどだ。
わたしは五月と壁とが作り出す隙間にすっぽりと収納されていた。背中が冷たくて顔や腕や脚には温もりを感じる。背中に回った五月の腕は多少なりの寒さを追い払ってはいたが、体の末端にあたる腕はだいぶ冷えているのかもしれない。
わたしは彼の背中に、腕を回した。だいぶ大きな背中。少なくともわたしよりは大きい。
わたしは一つ年が離れたこの男の背中ばかりを見てきたように思う。記憶の中に散りばめられた色々を思い出すとその度に五月の存在があった。
彼なしでは生きていかれない。たぶんそうだろう。
背も体重も大して変わらなかったこの男が、わたしを守り、育て、そして共に歩んでくれた。わたしの言葉を理解し、頷き、それからわたしの背中を押すのだ。例えそれが眠っている間でも。例外などない。
別々の人間なのにどうしてここまでこうして歩いてこれたのだろう。時々わたしの意思が、皮膚を溶かして彼の中に流れていっているのではないかと思うときがある。それほどに、境界が曖昧になるのだ。
「きさらぎ、どうした、如月。」
必死になって五月の体にしがみついていたら五月が目を覚ましてしまった。半分も目を開けないで、とても眠そうに泣いているよと言った。
「なんでもない。」
「そう。」
「なんでもないのよ。」
「なら、ゆっくりおやすみ。」
わたしの髪を撫でて、それから少し笑うとまた目を閉じた。月の様に細い目だったなと思った。
ああ、どうして。どうしてあなたはそんなに優しいの?この夜も朝も全て呑み込むみたいに笑う。そして眠る。
この皮膚が、あなたとわたしを分かつのなら溶けてしまえばいい。そしてこの夜が、全ての境界を曖昧にする。冷たい月の様に綺麗に笑うのだ。
「おやすみなさい。」
全て壊れてしまえばいいのに。

しんと静まった夜にこそ、わたしとあなたはばらばらなんじゃないかって思う。
孤独や不安など、実は全てここに在るのかもしれないと思う。
あなたがいれば。あなたさえいれば。それだけで。
もうわたしはなにもいらないのだ。
あなたさえいれば。














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