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Chapter:02 新入生
Episode:08
(え?)
(だめよ!)
(あっ!)

 少女の不安げな面持ち。これからどうなるのだろうと、半ばおびえているのが、その表情から読み取れた。
 ふっと、昔母親を亡くした頃の自分が重なる。
 この学院には孤児が多い。もしかすると、彼女もそうなのだろうか?

「えっと……ごめん、ちょっと考え事してたから。とりあえず部屋まで行こうか? 荷物、あるよね?」
「あ、はい」

 やっと少女の顔から怯えが消える。
 思わずほっとした。それほど落ちこんでいるわけではないようだ。

「そしたらロア、私は図書館寄ってくから」
「あ、そう? じゃぁまた後でね」
 食堂を出たところでエレニアと分かれ、ロアは少女と二人になった。

 こうして見てみると、なおさらその美少女ぶりが際立つ。明日あたり――下手をすれば今日中か――には、男子生徒の間でウワサになること請け合いだろう。
 事実こうして歩いているだけで、すれ違う生徒のほとんどが振り返っていくのだ。

(――世の中、絶対不公平だよね)
 思わずひがみたくなる。

 これだけの容姿に、この学院へ直接入学できるほどの能力と学力。およそ普通の人間が欲しがるものは、ぜんぶ持っていると言っていい。
 だがルーフェイアのほうは、あまりそう思っていないようだった。

「あの……先輩、なんかみんな、こっち見るんですけど……? あたしどこか……変ですか?」
「あのねぇ」
 最初はいやみかと思ったのだが、どうやら本気らしい。

「キミが可愛いから、注目されてるんだってば」
「……え?」
 ロアの言葉を聞いて、少女はきょとんとした表情で、考え込んでしまった。何を言われたのか、理解できないようだ。

「あきれた! 言われたことないの?」
「ない……です。強い、はよく、言われましたけど……」
 思わず頭を抱えたくなる。

 この美少女、いったいどういう生活をしてきたのか、この手の常識は全く知らないようだ。
 とんでもない後輩を押し付けられた気がする。
(まったくこの年で……って、あれ?)
 そういえば、少女の年齢さえも知らなかった。

「――あのさ、キミ幾つ?」
「十歳、です……」
 それにしては小柄だ。
 だがロアは、そんなことを思う暇がなかった。

――十歳。
 妹が生きていれば、ちょうどこの歳だ。
 げんきんなもので、急に少女がいとおしくなる。

「そっか。それでひとりでここへ来たんじゃ、心細かったね」
「心細いっていうか……あたし、学校とか……初めてで……」
「え、学校行ってなかったんだ」

 だとするとやはり、戦場育ちだろうか? 少年兵として前線に出ていたなら、さっきの食堂での行動も納得がいく。
 これだと学科でパスしたのが不思議だが、おそらくはもともと頭のいい子なのだろう。戦地で生き残るためにはそれなりの知識が必要だし、インテリ崩れの兵士からいろいろ学んだ可能性もある。
 何かが心の片隅に引っかかった気はしたが、ロアはそれ以上考えなかった。

「そっか、それだと心配だね。でも大丈夫だよ、きっと。うん、大丈夫」
 死んだ妹と同い年と知って、すっかりお姉さんモードだ。先刻までの嫌がっていた様子はどこへやら、根拠のない自信で少女を励ましている。


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