抱えきれぬ想い ルーフェイア・シリーズ03(6/27)PDFで表示縦書き表示RDF


抱えきれぬ想い ルーフェイア・シリーズ03
作:こっこ



Episode:06


◇Loa said
「ほんと、エレニアありがとね。どうにか間に合いそう」
「よかったわね。新入生がっかりさせたら可哀想だもの。
 それで、同室なんでしょ?」
「うん、そーなんだよね」
 昼食には早いものの、一仕事終えたロアとエレニアは、食堂でおしゃべりに興じていた。

「まさか、夏休み中に新入生が来るなんて、思わなくてさ。あーあ、これで独り部屋ともサヨナラかぁ」
「ロアったらよく言うわよ。もともと二人部屋なのに、部屋換えのたびに記録に細工して、うまってるように見せかけてたんじゃない」
「それ、言わないでってば」

 新入生の世話は、同室の者の役割だ。そのため空きは年長者の相部屋から、順に埋まっていく。
 だがロアは気楽な独りが好きで、新入生が来る春はいつもこっそり記録を書き換え、相部屋に誰も入らないようにしていたのだ。
 とはいえずっと記録がそのままでは、怪しまれてしまう。そのためシーズンが過ぎると元に戻していたのだが、今回はそれがアダになった。

「それにしたって、珍しいよね。普通は最低でも春までは、分校にいるはずなのに」
「そうよねぇ」
 シエラ学院はもともとが特殊なうえ、本校は分校からの選りすぐりが集まっている。授業の進度も速いし、何よりある程度の訓練がされていなければ、実地で即座に落ちこぼれだ。
 だからここへの直接入学はほとんどなく、年に一度、選抜試験を通り抜けた分校生が、春に入ってくるだけだった。

「まぁ、よっぽどデキるんだろうけど」
 それしか理由は考え付かない。
「そうだとしても、実技をどこで覚えたかよねぇ」
 エレニアの言うとおりだった。学科のほうはまだ分かる。世の中やたらと勉強が出来る人間は、一定数存在するものだ。
 だが実技はそうはいかない。だいいち戦闘技術など、普通は身につける術さえない。

「少年兵上がりとかかなぁ?」
「それも珍しい気がするけど」
 実戦で鍛え上げられたなら、実技のデキの説明はつく。が、それだと今度は学課の説明がつかない。シエラの本校へ直接入れるほど戦闘慣れしているようでは、正規教育など受けていないはずだ。

「……よく分かんないね。まぁ、会えば分かるか」
 ここで考えても仕方ない。悩むのが苦手なロアは、そう結論付けた。
「それでその子、いつ引き取るの?」
「昼ごろってたかな。でもイザとなったら、連絡あるだろうし」
 言いながらロアは、耳飾りに仕立てた通話石をいじる。

 学院が生徒に無償で貸し出している通話石は、何かと便利だ。こういう場合に呼び出してもらえるし、いろいろ制限はあるものの一対一の直接通話も出来る。
 そのほかこの石を使ったシステムは、映像の送信などにも応用され、いまや文明の根幹を成す技術になっている。

「名前は聞いたの?」
「いちおうルーフェイア=グレイスっていう女の子、までは聞いたんだけどね。でも、それだけ」
「ふぅん、そうなの」

 食堂の向こうのほうでは、なにやら食料の争奪戦が始まったようだが、二人は意に介さなかった。
 食べ盛りが多い学院では、この手のコトは日常風景だ。時には魔法や武器を使って、実戦さながらの奪い合いが起こることさえある。

「けどさ、いまさらチビの面倒見るなんて、思いっきりめんどくさくて。あーもうヤダヤダ」
「そうでもないわよ? けっこう可愛いんだから。
 まぁ確かに、その子の性格でかなり左右はされるけど――あ、外行かない?」
「――そうしよっか」

 二人はテーブルの上のトレイをそれぞれ手にとって、立ち上がった。
 後ろのほうで「バカやめろ」とか、「早く逃げろ」などといった声が聞こえてくる。








Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 純愛ファンタジー? 長編です

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう