抱えきれぬ想い ルーフェイア・シリーズ03(3/27)PDFで表示縦書き表示RDF


抱えきれぬ想い ルーフェイア・シリーズ03
作:こっこ



Episode:03


「きれい……」

 曲線がいろどる、滑らかな肌の建物。東西南北と中央、合わせて五つの尖塔。
 手前の庭や周りの木々もきれいに手入れがされていて、緑の間に花が咲いている。
 石畳の道と、あちこちに置かれたベンチ。
 あたしと同じくらいの子や、もっと上の人なんかがたくさんいて、すごく賑やかだった。

「……なんか、夢みたい」
 ほんの何日か前まであたしがいた世界と、まったく雰囲気が違う。
「でも、夢じゃない……よね? あたし、ここに行けるんだよね……?」
 なんだか不安になって、イマドの方へ振り向いた。

「夢なわけねぇって。
――おい、頼むからここで泣くんじゃねぇぞ。おれが泣かしたと思われるかんな」
「だいじょぶ……」

 イマド、けっこう言うことがひどい。
 そのまま歩いて、彼は玄関のところで受付の人に話しかけた。

「すいません、こいつ、ルーフェイア=グレイスって言うんですけど。連絡来てますか?」
「おかえり、イマド。今年はいつもより、早く帰ってきたんだね」
 言いながら受付のおじさんが、何か紙をめくる。

「ルーフェイア……ああ、この子だね。
 ちゃんと聞いてるよ。このまま真っ直ぐ、学院長室へ行きなさい」
 予想と違って、あっさり通してもらえた。分校からきちんと、連絡が来てたらしい。

――それにしても。

 あたしが特殊な事情で本校へ入学すると、ちゃんと知らせが行ってたっていうのが不思議だ。本校の学院長経由だと分校の人は言ってたけど、よくそこへ話が行ったと思う。
 まだアヴァンのほうは戦闘直後で混乱してたのに、母さん、どうやったんだろう?

「いいか、あの昇降台でいちばん上だからな、学院長室」
「わかった。ありがと」

 イマドと別れてひとりになった。
 明るい廊下。置かれた緑。笑いながら行き交う生徒たち。

――あたし、ほんとにここにいて、いいんだろうか?

 なんだかすごく、場違いなような気がしてくる。
 あたしの知っている世界は――武器と魔法と、血。ものごころついた時から、戦場がすべてだった。
 たしかにここは名だたるシエラ学院でMeSだけど、それでも戦場とは違う。
 もっとずっと穏やかで……けど、あたしは……。

 イマドに言われたとおり昇降台の前に立って、手をかざす。見たことがないほど旧式の造りで、とちゅうで浮力を失って落ちたりしないか、ちょっと心配だ。
 開いた扉から乗り込んで最上階を表す石に手をかざすと、ガタンと揺れてから、昇降台は動き出した。

――不安だった。

 自分の両手をみつめる。
 この手に太刀を握って、どのくらいになるだろう?
 あたしは息をするくらい自然に、人を殺せる。そんなあたしが、ここで上手くやっていけるんだろうか?

 けどそんなあたしに関係なく、昇降台は止まって扉が開いた。
 豪奢な絨緞が敷かれた廊下。がっしりした扉が、いくつも並んでいる。

「えっと……」
 なんだか気圧されながら、案内板と扉の上の部屋名とを見比べて、院長室を探し出した。
 そっとノックする。
「どうぞ、開いてますよ」
 おそるおそる重い扉を開けると、広くて大きな窓と、その前に立つ人影が目に入った。

「いらっしゃい」
 なんだか優しそうなおじさんが声をかけてくる。








Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 純愛ファンタジー? 長編です

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう