抱えきれぬ想い 〜ルーフェイア・シリーズより〜(10/27)PDFで表示縦書き表示RDF


抱えきれぬ想い 〜ルーフェイア・シリーズより〜
作:こっこ



Episode:10


「ルーフェイアも、銃なんて無視しちゃって良かったのに」
「でも、もし新型弾だったら、困りますから……」

 そういえばそんな話は、ロアも最近聞いていた。なんでも弾丸に新型の魔力石を使うことで、今までの数倍の魔力を持たせることができるらしい。まだテスト段階だが、もしこれが実用化されれば、戦法がまた大きく変わるような代物だ。

 ルーフェイアはその点も考慮して、身の安全のために叩き落したのだろう。学院長もイタズラのつもりが、ずいぶん高くついたものだ。
 続いて並びの、大きな建物の前へ来る。

「あっちが講堂で、こっちが図書館。
 図書館さ、けっこう本多いんだよ。でもテスト前とかけっこう混むから、早めに借りないとダメ」
 そんなことを言いながら歩き回り、最後に尖塔のひとつへ上がった。

「ここは西塔。
 えーっと、見えるかな? 校舎の裏庭が校庭兼ねてて、普段の訓練はそこでやるんだよ」
 下を見せながら説明する。
「あの、あっちの塀は……?」
 少女が校庭の奥の、がっちりした高い塀を指差した。

「ん? あぁ、あれはホントの訓練所」
「……♪」
 なぜかやけに嬉しそうだ。
「あのねぇ、訓練って言ってもホンモノの魔獣、放ってあるんだから。そんな浮かれてると、エライ目に遭うよ」
「え、でも、魔獣だけ……なんですよね?」
 それならどうという事はない、そんな表情だ。

(うーん、なんか自信過剰みたいだけど……でもたしかに、食堂でのこともあるしなぁ。
 どっちにしてもいっぺん、連れてったほうがいいかな?)
 もし一人で入り込んで、なにかあっては大変だ。

「そんなに言うなら、行ってみる?」
「はい♪」
 答えながらルーフェイアは、ずっと持っていた包みをほどいた。
 中から出てきたのは、一振りの見事な太刀。

「まさかそれ、キミの得物?」
「はい。両親が、これ……持ってけって」
(……あれ? この子って孤児じゃなかったんだ)
 少女の言葉に、ロアは自分が完全に勘違いしていたことに気づく。

 だがよく考えてみれば、ルーフェイアは一言も、そんなことを言っていない。こっちが思いこんでいただけだ。
 もちろん少女のほうはロアのそんな思いを知るはずもなく、慣れた調子で太刀を腰に下げている。
 見かけに比べて重量があるはずだが、よろめきもしない。かなり使いなれているようだ。

 いまひとつ狐につままれたような気がしながらも、ロアは少女と共に訓練所まで来た。
 弱いとは言え魔獣が野放しになっているここは、ルーフェイアたち低学年は原則出入り禁止だ。それどころかその上の中学年でも、それなりの資格を何か取らなければ、一人での出入りは認められない。

 当然低学年連れのロアは入り口で呼び止められたが、理由を話すと許可が出た。
 ここへ入学した低学年が、興味本位で訓練所に入り込むのを防ぐため、あえて最初に怖い思いをさせる。これ自体は、よく行われているのだ。
 ゲートの隣の、詰め所のドアが開けられた。普段の出入りは、この詰め所を通らないといけない。万一の事態に備えてのものだ。

「いい? この奥だからね」
 殺風景な詰め所を抜け、反対側のドアの前で立ち止まる。ここから奥は弱肉強食、弱いとは言え魔獣の世界だ。








Web拍手 ←Web拍手です

NNR 月1回のみ:ネット小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
1票で大きく順位が上がります。なお順位だけ見たい方はこちら
FT小説ランキング 毎日OK:FT小説ランキング“ルーフェイア・シリーズ”に投票
順位だけ見たい方はこちら

遠き風に願いし君は 筆者のムーンチャイルド用長編作品です。

筆者サイトへ(筆者連載物「ルーフェイアシリーズ」のまとめ、その日の最新話へのリンク、改行なし版等があります)







ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう