僕等の街に雪が降る。
今年も、白い雪が。
音も無く、しんしんと降る雪の中、君は歩みだす。
並んで僕も歩き出す。
サクサクと靴の下で音が鳴る。
静かな夜。
雪が降る。
雪が降る。
白く降る雪に、いつもの街の喧騒は吸い込まれてしまう。
手を繋ぎ、ゆっくり、君と歩く。
白い息がはねる。
揺れるマフラー。
小さな結晶がとけて、君の髪をキラキラと飾ってゆく。
「綺麗だね。いっぱい降って、世界中綺麗になれば良いのにね。」
手を広げ、空から落ちてくる妖精を受け止めるように。
「こんな綺麗な雪になりたいな。今度生まれてくる時には…。」
街灯の下、僕は何も言えず立ち止まる。
抱きしめる事も、未来を紡ぐ事も出来ない僕。
切なくて、悲しくて、何も言えなくて…。
「遠い、遠い空の上で、天使が死ぬとその体は雪になるの。
そして地上を綺麗にしてくれる。
争いや、嫉妬、妬み、憎しみ…。
それらを浄化してくれる雪になって。
一時でも良いから、そんな事を忘れさせてくれる。
だから、雪になるってのもいいかなぁ、なんて。」
繋いでいるフリをしていた手を離し、彼女の体を抱きしめるように両の手で包み込む。
「ねぇ、見て。」
見上げた夜空から街灯の光に包まれた雪が降り続ける。
それは、まるで空に昇ってゆくように…。
不安になり彼女を見る。
彼女はまだそこにいる。
「忘れないで、私の事。きっとあなたに最初に降る雪は、私だから。」
「たとえ、とけてしまっても水になり、海になり、雨になってあなたの傍にいる。」
「いつか、あなたが私に追いついてくれるまで、わたし…。」
「私、天使になれるかな…?」
手を繋ぎ、また歩き出す。
二人並んで、雪の中。
彼女から見えないように涙を拭いた。
悲しくて。
悲しくて。
どうか。
どうか、もう少しだけ。
彼女とこのまま…。
胸いっぱい。
願う。
想う。
僕等の街に雪が降り続ける。
恋人の幽霊と、手を繋ぎ。
歩いてゆく。
歩いてゆく。
そして。
雪は降る。
雪が降る。
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