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好奇心は吸血鬼をも殺す 作者:はちゃち

序章 最強の吸血鬼

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レスティア皇国暦1598年2月10日0時58分

挿絵(By みてみん)


「――化け物め」


 老いた魔女は己を(いさ)める為に憤慨(ふんがい)を言葉にする。

 しかし長い吐息に混ぜられた(てき)(がい)(しん)だけでは煮えくりかえった(はらわた)は収まらず、血は逆流するかのように(まん)(めん)(しゆ)(そそ)ぐ。



 世界の中でも優良種たる魔女によって創られた魔女の帝国――マシリティ帝国は、今では世界三大列強国の一角に数えられる程の栄華を誇っている。

 そのマシリティ帝国の中でも、屈指の実力と士気を誇る英傑達で構成された特別大隊。その戦力はまさに神格、あるいは神話の領域と断言しても過言はない。

 世界を敵に回しても勝てる程の戦力だ――そう、大隊長たる魔女アヴァンガルフィは確信していた。




 だが。




 血塗られた街道と引き裂かれた倒木、亡骸となった同胞と、欠損し地を這う同胞、恐慌をきたし平静さを欠いた同胞。迫り来る畏怖を前にしつつも必死に立ち向かおうと戦慄する同胞。

 その全てを飲み込まんとする勢いで『奴』はその本性を現す。



「――!! 大隊長殿!! 大賢者アヴァンガルフィ様!!!」

「すみやかに撤退を完了しなさい」


 部下の呼びかけによって我に返ると、部下に端的な命令を飛ばした。

 だが声をかけた部下の憂慮(ゆうりょ)はその事ではない様子だ。


「大隊長も撤退をッ!!」


 だが大隊長、あるいは大賢者と呼ばれた魔女アヴァンガルフィは、落ち着きを取り戻し、不敵に笑みを零し首を横に振る。


「大賢者たる(わたくし)めが退いては、だれが『アレ』を食い止めると言うのですか?」

「で、ですが! 聖母様に選ばれし大賢者がこのようなところでッ!! そもそも大隊長の術式構成もアーティファクトも、対アルファ戦を想定したものではありませんか!!! 標的ベータが相手では――」


 そう憂う部下の事は赤子の頃から知っていた。我が子ではないが、実子と同様に可愛がってきた。

 そんな部下を突き放すような鋭い語調で返す。


「お前達が居ては足手まといです。早々に離脱しなさい」


 別の部下に連れて行くよう手で合図を送る。

 周囲の部下は――いや同胞は大賢者の意をくみ取ると、案ずる部下を無理矢理引き離す。





「主よ――」


 周囲に部下がいなくなるのを確認し、アヴァンガルフィはその身の丈以上はある荘厳(そうごん)な杖を掲げると、祈る。


「御身を脅かす不逞(ふてい)悪鬼(あっき)に裁きの鉄槌を。聖母の忌まわしき宿敵に永遠(とわ)の破滅を」


 祈りと共に大賢者の皮膚上や服の表面、そして周囲の空間に多数の魔法陣が周囲に出現する。

 何れも大魔法、極大魔法と呼ばれる高等術式。

 そのひとつひとつが、並の人智では到底届き得ない叡智の結晶。




 ――だが『奴』はその遙か先を往く。





 神話世界の生残者。

 知性のある怨人(えんじん)

 貪婪(どんらん)の捕食者。

 皇帝にして最高戦力。

 闇夜の覇者。


 実在する唯一にして最後の吸血鬼であり、奴を冠する二つ名は内外を問わず数知れない。


 そして。


 かつて()弑逆(しいぎゃく)せし悪鬼こそが『奴』だ。



 アヴァンガルフィは無際限の憎悪を浮かべ、噛みしめるように『奴』の名を口にする。




「リネーシャ・シベリシス」




 幼い容姿に隠された奴の本性は、まさに闘争を形容化したかの如き禍々しき形貌(けいぼう)だ。




 そして。




 大地を引き裂き、風を殺し、血の雨を降らせる悪鬼(リネーシャ)に、アヴァンガルフィは魔法術式を発動させる――。


 


【作者より】

 冒頭を読んでいただきありがとうございました(>ω<)

 この小説は「異世界転移ファンタジー」で、いわゆる「ヒロインチート」系になります。
次回の第1話より登場する主人公がチート無双するわけではありませんのでご注意ください。

 また、三人称+群像劇になりますので主人公以外の視点にも移ったりします。
地の文も多めに、終始ダークでシリアスな雰囲気でおおくりします。


 世界観は中世ヨーロッパ風……というよりは、古代ローマ風の方が近いかもしれません。

 ド○クエと違い、モンスターがわんさかいる感じではないです。
その代わり、鬼人や魔人といった、半分人要素のある種族が多くいる世界の予定です。
吸血鬼は鬼人系統の種族。魔女は魔人系統の種族――と言った具合ですね。

 世界観の説明は一章の会話イベントの中で触れていきますので、詳しくはそちらでぜひぜひ!


 つまるところ「なろう小説」としては王道を踏襲していないニッチ向けになりますが、テンプレなろう小説に読み飽きたよって人は、一読してもらえると嬉しいです。


 ただでさえニッチ向けなので「こういう作品好きだよ」という趣向の合う方は、ポイント評価・感想・レビュー等、気軽にしてもらえると励みになります。
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