とても暗い部屋の中。
部屋の中には僕と君。
二人が、お互いを見つめ合って座っていた。
「はじめまして」
「久しぶりだね」
僕等はそれぞれ言葉を交じり合せる。
言葉は違うが、同じ意味。
僕は云った。
「人を殺すということを…………いったい君はどう思う?」
君は答えた。
「許されざること、かな」
その通りだ、と思いながら僕は言葉を続ける。
「そう、人を殺すという行為は、決して許されるべきではない」
君が問う。
「どんな理由があっても?」
「どんな理由があっても、だ」
例えどんなことがあろうと、人を殺すという行為は正当化されるべきじゃない。
「もしも、自分が殺されそうになっていたとしても?」
「そこで、相手を殺す以外の方法で生き残れない、その自分の無能さが、悪だ」
君は、軽く笑った。
「極論だね」
「そうかも知れない。だけど、僕はそう信じている」
一瞬間が、開く。
「人が人を殺す行為は許されるべきじゃないんだ。どんな人間にも生きる権利はあるはずだし、どんな人間にも今まさに生きている人間の命を奪うことを許されたりは、しない。それは悪だ。人を殺すとき、傷つけるときに、誰かのためにそれを行うなんて事は出来ないんだよ。それまでに何があったとしても、殺される瞬間は、ただの犯人と被害者だ。理屈をいくらこねてみたってね。エゴなのさ、所詮は。殺す側のね」
「それで?」
「……………………」
君は僕が云い終わるのを待って。そして、
「キミは結局何が言いたいんだい?」
核心に触れた。
「…………僕は、絶対に殺人を犯した人間を許さない。犯してしまった人間を許したくない。他に選択肢が無かったとしても、それが最悪のエンディングを避けるためであったとしても、僕は、僕だけは、それを許容しちゃ、いけないんだ」
そう、
「そんな人間は、死んでしまうべきだと、君は思わないのかい?」
これが、
「君は、人の事を殺してしまった人間が、のうのうと生きていていいと思うのかい?」
僕の―――
「キミの云う事は矛盾してるね」
君が、云う。
「キミは、どんな人間にも生きる権利はあるといったじゃないか」
…………確かに云った。
「でも、それでも、僕は―――」
―――――本音。
「 僕は、君を……殺して、しまいたい…… 」
「やめなよ」
君は云う。
「キミはそこまで落ちる気かい?」
…………。
「いや、分かってる。そう、分かっているさ」
僕は言葉を返した。
理解は、している。そう、僕は、僕だけは、それだけは出来ない。しちゃいけない。
だけど…………、それでも、僕は―――
「おや、そろそろお客さんが来たようだ。行かなくちゃね」
「分かってる」
思考をボクによって強引に閉じられる。
ボクは暗闇に包まれた部屋を出た。去り際に、ふと振り向いた部屋には誰も居らず、ただ、古ぼけた鏡だけが暗闇を返すのみだった。
―――(了)―――
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