壱弾目:全ての始まり
雨が轟々と降り続ける、人気の無い道。コンクリートの壁には二つの影がうつる。傘はさしていない。いや、させないのだろう。
「はぁ、はぁ……」
片方の影の手は鋭い刃物を持っている。
「俺が、俺が何をしたっていうんだ!」
刃物を突き付けられている影が叫んだ。
「いいから刺されてくれ」
狂気の影が一歩づつ迫る。それを見たもう一つの影は、小刻みに震えている。そして取り乱しながらも一目散に駆け出した。
逃げ続ける影とそれを追う影。そして、この二人の追いかけっこにも、ついに終わりが来た様だ。
「うわっ!」
逃げる影の目の前には、残酷に反り立つ壁が行く手をふさいでいた。
「畜生……」
一体どうすれば!動揺する影が、大きく揺れ動いている。するとその影は、足下にある何かに気がついた。しかし、もう一つの影は、そんな事お構いなしに迫って来る。
「さぁ、追いついたよ」
少しづつ二人の距離が縮まっていく。片方の影が刃物を突き出して迫る。片方の影が、それを振り上げた、その時だった。
「なんで、そんな物を持ってる?」
「この野郎が……」
噛み合わない、短い会話。今まで押していた方の影の動きが止まった。何故なら、押されていた側の影の手には、拳銃が堂々と構えられていたからだ。
しかし、時間が少し経った時、この拳銃には、大事な物がない事に気がついた。マガジンが入っていない!拳銃を持っていた腕が小刻みに震え始めた。ただ、それに気付いたのが、拳銃を持っている本人だけならば、まだ良かった。しかし、現実はそう甘くは無かった。相手の顔からは恐怖が消え、だんだんとにやけ顔に変わっていくのが、嫌なほどわかった。
雨の音が小さくなった様に思えた。
俺……死ぬのか?
ああ、こいつに会うまでは平凡な日常が永遠に続くものだと思ってた。押されている影が不意に思う。
あの時までは……よかったのになぁ
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