拾壱段目:呪われた廃墟
どのくらい走っただろうか。仁は荒い息を整えようともせず、ある場所を目指して走っている。
住宅街を抜け、街を抜け、あまり人気のない団地の、廃墟の前で立ち止まった。三階建ての少し大きい建築物だ。仁はあたりを見回し、その建物の中に入っていく。
仁の入った廃墟は、昔はそこまで大きくない病院だった。とある事件がきっかけで、ぱったりと患者が来なくなってしまったのだ。
数年前、ある医者が手術に失敗したという嘘をつき、その患者の臓器を密売したという事件が発覚した。ある男一人の犯行だった。
しかし、ある日この極秘情報がどこからか漏れた。世間にこれがもれ始める、少し前だった。
入院患者行方不明事件が起きた。被害者は三十代後半の男性で、数日前からひき逃げをされ入院していた。そしてこの事件の容疑者とは友人関係があったらしい。
そしてこの容疑者は、臓器売買にも関係があることが判明した。
そして容疑者の男性は、尋問されるまで臓器売買事件、入院患者行方不明事件を行ったことを全否定していた。
そしてその男は、今も監獄の中にいるらしい。
そんな暗い事件があったのだ。仁は大通りの見える窓のある部屋に入った。そして大きく深呼吸をし、呼吸を整える。そして窓のある壁に、もたれかかった。
「あの男は、きっと来る、仲間を引き連れて」
仁が一人呟いた。仁はふところから銃を取り出し、ジッとそれを見つめた。
「これに俺のすべてが懸かってるのか、へへ」
仁は力なく笑った。辺りが少しずつ暗くなる。
――――――――――
仁が気を引き締めている中、尾形は警察署にいた。
「相手はまだ小さな餓鬼だ。だが油断するなよ、相手は銃を持ってる。事が大きくなる前にけりをつけるぞ!」
尾形が小さな群集に向かって叫んだ。尾形の連絡で集まったサットの人間だ。群集は気の入った返事で答えを返す。
人数は尾形を含めずに五人いる。青い征服に拳銃、警棒、大きな盾、ヘルメットなどを装着している。
「容疑者の居場所がわかりました。準備をお願いします」
一人の捜査官が叫んだ。それを待っていたかのように、尾形が群集を連れて進み出そうとした時だ。
誰かが尾形の名前を呼んだ。その正体は犬養だった。
「どうした、犬養」
「いや、一応声をかけておこうと思って」
「なんだ、俺が死ぬとでも?」
「はは、まさか」
「まぁ、俺が帰ってきたら、酒の一杯でもおごってくれや」
「よし、わかった。かわりに絶対帰ってこいよ」
「だから死なねえっての」
二人とも緊張すべき場面だったが笑顔だった。そして尾形は歩き出す。
病院の廃墟についた。中に小さな人影がうごめいているのが見えた。尾形があざ笑うかのように、その様子を見ている。
「俺がここで容疑者を説得するフリをする。その間に中に侵入して、確保しろ」
尾形がサットの五人に言った。そして全員が何も言わずにうなずいた。
そして五人は、できる限り足音をたてないように廃墟内に侵入する。
その間も尾形は、うごめく影を見つめていた。
「さて坊主、これで本当に終わりだ」 |