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願い星、ひとつ。
作:梶原ちな



第7話 ここにいるからなまえをよんで



 

 あったかい。
 それだけで、なんてしあわせ。
 扉の向こう側では、冷たい声しか聞けなかった。

 夜が深みを増す。
 いつも夜になると、あたしは闇に溶けて消えていってしまうような感覚を覚えていた。

「りな、俺、ちょっとやばい、かも」
「……なにが? 暗いの、怖い?」

 こーたもきっと、この真っ暗な部屋が怖いんだろう。
 体はこわばっているし、なんだか体温が上がっているような気がするし。

 あたしはこーたより三つも年上だから、その頭に手を伸ばしてよしよしとなでてあげた。
 犬のこーたもなでられると安心したように目を閉じていたことを思い出して。

「……そーいうんじゃねーけど。つか、犬じゃないっての」
「あたしは、暗いの怖い。でも、今日は平気」
「なんで?」
「こーたがいるから、なんだかちっとも怖くないよ」

 抱きしめた腕から。
 なでてあげたその感触から。
 あたしはここにいるってことを実感できる。

 セカイはあまりにもシカクで。
 夜はあまりに真っ暗で。
 あたしは消えかけていた。

 彼が名前を呼んでくれるたびに、あたしは存在する。
 だれかがいるということは、自分の存在を証明できることなのかもしれない。

「……俺、毎日お前に会いにくる。約束するよ」

 こーたの手があたしの背中にまわって、きつく抱きしめられた。
 ちょっと驚いたけれど、その言葉がなによりも嬉しかったからこーたの腕の中でお礼をつぶやいた。

「けど、オマエって呼ばないでよね。年上なんだから、おねーさんなんだからね」
「うるせー。年上に見えねーよ。なんか、ニブいし」
「あたしのどこがニブいっていうのよ。こーたなんてあたしより背低いくせに」
「すぐ追い抜かしてやるよ。なんたって成長期だからな、俺は」

 こんなばかみたいな会話も、ひさびさで。
 あたしは彼にすっかり気を許してしまっていた。

 襲い来る本当の闇に、気がつきもしないで。


















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