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願い星、ひとつ。
作:梶原ちな



第36話 すき




 なにもいらないと、そう思っていた。
 彼があたしのもとへきてくれるのなら。

 なにもいらない。
 ただ、彼だけがほしい。



「りな!」
 風がまた戻ってきて、こーたに強く吹きつけた。
 身体ががくんとゆらぐのを間近にして、あたしはよりいっそう窓ガラスにしがみついた。

「こーた、だめ! あぶないよ!」

 窓ガラスに、くちびるを近づける。
 少しでもこの声が彼に届くように。
 少しでも彼を感じることができるように。

「びびったー。しかし、まさか台風にあたると思ってなかったよ俺」

 窓枠に手をついたこーたは、なんとか状態を安定させてあたしの顔を見た。
 
 目が合う。
 ぼろぼろと泣けてきて、子どもみたいな声を出してしまった。

「これ、窓開ねえの?」

 窓を揺らしても叩いても、開くことはなくて。
 それでも、こーたからずっと目を離さなかった。

 こーただ。
 どうしよう、こーただ。

 ばかみたいに悩んでいたことも、なにもかも吹き飛んでしまった。

 会いたかった。
 ほんとうに、そう思った。

「こーた、こーた……」
「泣くほど、俺に会いたかった?」

 首を縦にふった。
 声にできなかった。
 
 手のひらをガラスについていたところが暖かくなったと思ったら、彼の手が反対側から重なっていた。
 冷たいガラスが、白くにごる。

「俺のことが、好き?」

 ぼたぼた流れている涙。
 重なった手の温度。

 なつかしい、彼の声。

 ずっと、いえなかった。
 胸でちかちか、熱を持って。
 彼があたしにくれた、この小さな星。

 窓ガラスの厚みに負けないように。
 どうか、この想いが彼に伝わりますように。
 くちびるをよせて、つぶやいた。

「すき。こーたがすきなの」

 冷たいガラスに、そっとキスをした。
 目を閉じていたからわからなかったけれど。

 ガラスごしに、熱。
 暖かな、感触。

 くちびるが重なったあとが、窓ガラスに白く残った。
















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