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生贄姫とカリスマ公爵 作者:樹 泉

本編

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後編

 ティアラは15歳の誕生日を間近に控え、ベルハルト王に呼ばれて王の部屋へやって来ていた。
 ティアラは扉をノックし、許しを得てから室内に入った。
 王の部屋には王太子であるハルトライルも居り、ティアラは挨拶をし、空いているソファーへ座った。

「ティアラお前の降嫁先が決まった。成人の儀後、アルトラム・フォン・タルレスに嫁ぐように」

「畏まりました」

 ベルハルト王の命令にティアラは是と言うより他なかった。
 この中世の様な考えの世界において男女平等とは夢のまた夢、男尊女卑の世知辛い世の中なのだ。
 ずっとアルトラムと話してみたかったティアラにとって、悪い話ではなかったのだ。
 話す為に結婚しなければならないのは気が重いが、ティアラは転生者である。他の同年代の少女と比べて結婚観はとても淡泊であった。恋愛結婚に憧れはするものの、転生後の王族としての教育で更に淡泊になったのかもしれない。

「本来はアンネフィーネが嫁ぐ予定であったが、アンネフィーネが嫌がった事とアルトラム本人からティアラの方が良いと言われた事もあり、ティアラが嫁ぐ事になった」

「ティアラすまないね」

「是非も御座いません」

 ベルハルト王の説明が終わり、ハルトライルが申し訳なさそうに謝罪した。
 二人にとって、いや、王家に取ってアルトラムに首輪を着ける事は急務であった。


 ベルハルト王に呼ばれ降嫁先が判明した後、ティアラは自室で刺繍をしていた。アルトラムに渡す為だ。
 アルトラムといえばタルレス公爵家を早々に継ぎ、現在タルレス公爵になっていた。
 ティアラは刺繍針を動かしつつ、記憶にある形と差がないか慎重に確認している。
 出来上がった柄に不備がないか確認したティアラは、侍女に箱を用意させその箱に刺繍をしたハンカチを閉まった。

「これを渡す時が勝負の時よ」

 ティアラがいくら結婚に淡泊とはいえ、恐怖はあった。一言自身を鼓舞すると結婚式に思いを馳せた。


 ついに婚儀とお披露目のパーティーが終わり、深夜の寝室にティアラは独り座っていた。
 ナイトガウン越しにティアラは震えていた。手に持った箱もティアラの震えに合わせ振動している。
 寝室に独りでいると思考がネガティブな方向へばかり進む。幼い頃聞いたあの鼻歌は、実は聞き間違いだったのではないか、アルトラムではなかったのではないかとそんな事ばかり考えてしまう。
 思考がグルグル迷走していると、寝室の扉がノックされアルトラムが入って来た。
 ティアラは姿勢をただし挨拶をすると正面からアルトラムを見た。
 始めて会った時に比べグッと伸びた身長は高く胸板も厚い。だからといって筋肉隆々ではなく細く引き締まっている。

「こちらを」

「何だ? 何が入っているんだ」

 ティアラは目の前までやって来たアルトラムに小箱を手渡した。

「後で見るとしよう」

「今、見てはいただけませんか? 今日の為に用意した物です」

「フム」

 アルトラムはティアラから手渡された箱を開けると、中のハンカチに目を落として目を見開いた。

「これは誰が縫ったんだ?」

 アルトラムの声は珍しく動揺で掠れていた。
 ティアラはアルトラムのその反応に僅かに溜息を洩らす。そして肩からは自然とこわばりが抜ける。ティアラが縫ったハンカチには青い狸が縫われていた。

「わたくしが縫いました。……アルトラム様も同じなのですね」

 アルトラムは瞑目すると口を開く。

「まさかこんな所で元同郷の者を会うとわな。……「マギのまどろみ」という物を聞いた事はあるか?」

「いいえ。魔法関係の言葉でしょうか?」

「……そうか。知らないのならそれで良い」

「不勉強で申し訳ございません」

「いや。……さて、本題に戻るか」

 アルトラムはニヤリと笑うと、ティアラを抱きベッドに向かった。

「ほ、本題って!? な、べべべベッド。あ、あのですッン……」

 動転するティアラにアルトラムがキスを落とすと、ティアラは真っ赤になって黙ってしまった。その様子を見てアルトラムはクッと笑いティアラをそっとベッドに横たえた。


 チュンチュンチュンと小鳥の声を聞きティアラが目を覚ますと、窓から朝日が射していた。

「起きたか。調子はどうだ? 何か願いがあれば聞こう」

「ん? ……へ、あっ」

 寝ぼけていたティアラは現状を思い出し真っ赤になり布団に潜った。

「ククク、布団から出てきたらどうだ。願いはないのか?」

 アルトラムの悪戯子の様な言い回しの言葉に、ティアラは顔だけ布団から出すと何でも良いのかと聞き、アルトラムは肯定した。

「では、王家に膝を折って下さい」

「ふ、ハハハ。そうきたか、ククク」

「何で笑うのですか!? わたくし何かしましたか!?」

 ティアラの事情の後とは思えぬ言葉にアルトラムは大笑した。王家から生贄のように差し出された少女は、アルトラムに食われて直、凛とした王家の花だったからだ。

「ク、わ、分かった。お前がお前でいる限り俺は王家に屈しよう」

 未だ笑いが収まらぬアルトラムにティアラは再度布団に潜ろうとして止めた。

「本当ですか? 約束ですよ」

「ああ、約束だ。今日城に行ってこよう」

 アルトラムは笑いを納めるとそう答えた。
 布団に横たわるティアラに一度キスを送ると、アルトラムはベッドから抜け出した。


 アルトラムは夕方王城から戻ると、ティアラに三通の手紙を渡した。

「お父様とハルト兄様、ベルト兄様からですね。いったい何でしょう?」

 三人からの手紙には言い回しは違うが、似たよった内容だった。
 アルトラムが王家に膝を折った事への感謝とティアラを生贄の様に送ってしまったことへの謝罪が書かれていた。

「感謝は受け取りますが謝罪は受け取りませんよ。わたくし楽しんで居りますから」

 そう言ってティアラは微笑を溢した。



お読みいただきありがとうございます。
誤字脱字は確認していますが漏れがあるかもしれません。見つけたら感想いただけると幸いです。

残りは番外編のみです。乙女ゲームタグはそちらで出てきます。
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