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生贄姫とカリスマ公爵 作者:樹 泉

本編

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前篇

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
 「……」

 目を覚ました赤子はベッドの天蓋を見つめた。

(え、此処どこ。私は死んだはずじゃ……)

 勢いよく起き上がろうとして、体が動かない事に気付く。
 いや、少しは動いたのだ。だが、目に映った手に驚く事になった。

(何この紅葉の様な赤ちゃんの手は?!)

 手を何とか持ち上げ、赤子は転生した事に気が付いた。
 感情は追いつかないようだが。


 鏡に映る金髪金眼の人形の様な少女を見つめティアラ・フォン・リベリアは溜息を吐いた。それに合わせ鏡の少女も溜息を吐き、鏡に白い靄を作る。

(何度見ても美少女、いえ美幼女よね)

 左右対称に作られた自身の顔を見つめる。綺麗というより、可憐で可愛らしい印象を受ける。
 もう一度溜息を吐くと、くるりと踵を返し部屋の扉に向かう。
 ティアラが扉の前に着くと、控えていた侍女が扉を開く。
 何の因果か、ティアラはリベリア王国という国の第二王女に転生してしまったのだ。そう、ティアラ・フォン・リベリアは転生した赤子だった。
 そこからすくすく育ち、今では6歳になっていた。
 この世界は前世の地球という星とは違う星か、異世界に当たる事をティアラは嫌というほど見る事になった。
 この世界には魔法というものがあるのだ。ティアラの前世で見た漫画やアニメ、小説やゲームの中にしかなかった魔法。発動方法は呪文などなく現象を想像するだけ、と至って簡単だ。
 火の玉や氷の矢のように飛ばす事も出来れば、竈に火をつけたり畑に水を撒いたりもできる。実に応用が利くものだった。
 4大元素、火・水・風・土という基礎元素と、雷・氷・樹という派生元素、特殊元素と呼ばれる光・闇の9種類がある。
 適正と呼ばれるものがあり、その適性の魔法は誰でも使う事が可能で、後は訓練次第で増やす事ができる。
 平民であれば1~2属性の適正があり、貴族は階級に寄るが2~4属性の適性を持つ。王族は更に特殊属性が使える事が多い。
 何故此処まで分かれるかというと、魔法の適性は遺伝しやすいのだ。恐らく過去に、魔法の適性が高い者が国を起こしたのだろう。歴史の書を読みティアラはそう思った。何処の国も似たようなものだった。


 トコトコ歩き、庭園の一角にたどり着いたティアラは溜息を吐きたくなった。後ろには騎士が控えていて、非常に落ち着かない。
 庭園の一角には小さな花壇がある。小さいといってもそれは庭園に比べればというものだ。ティアラの前世で見た花壇を思えば明らかに規模は大きい。
 花壇の縁に着いたティアラは、飛び出している草を選別しながら抜き出した。

(ああ、落ち着く)

 雑草を抜き終わるとティアラは花壇に掌を向ける。ジョウロから出る水を想像しつつ魔力を練り、力を解放した。
 そうするとティアラの掌から、細い水が幾つか分かれて出で来る。

「~♪~♪……」

 水を撒き終わりティアラは頷くと、かすかに音楽が流れて来た。それは鼻歌で、数秒で止んでしまった。
 ティアラはハッと顔を音の聞こえて来た方に向けると、駈け出した。

「殿下御待ちを」

 騎士達がティアラを必至で止めるが、ティアラの足は止まらない。

(あの曲は前世で聞いたアイドルのヒット曲のサビの部分だわ)

 ティアラが駆け込んだ東屋には一人の少年が佇んでいた。赤髪赤眼の少年だ。
 ティアラは息を整えると、少年に声をかけようとした。

「そんな所で何をしているんだい。ティアラ」

「ッ、ハルト兄様」

「おや、アルトラムもいたんだね」

 ティアラが声をかけようとした時声をかけて来たのは、ティアラの5歳年上の兄ハルトライル・フォン・リベリアだった。

「これは殿下方お揃いで。ティアラ殿下に置かれてはお初にお目もじつかまつります、アルトラム・フォン・タルレスと申します」

 そう挨拶するとアルトラムはティアラの手を取り、ティアラの手の甲にキスを落とした。
 それは礼儀に適わない挨拶であった。
 しかし、アルトラムの纏う空気は非難を受け付けなかった。
 王族以上に王族らしい覇気のある空気に、ティアラもハルトライルも咎める事ができずにいた。

「挨拶ありがとうございます。わたくしはティアラ・フォン・リベリアと申します。ご存知の通りリベリアの第二王女です」

 空気を変えようとティアラは自己紹介をした。
 本来話しかける順は身分の高い者からだ。
ハルトライルとアルトラムは顔見知りだが、ティアラとアルトラムは顔を会わせたのはこれが初めてだ。ハルトライルが二人を紹介するのが筋だった。

「本日はもう辞す予定ですので。失礼いたします」

 そう言うとアルトラムは東屋を去って行った。

「ティアラ何もされなかったかい?」

「ええ、ハルト兄様。アルトラム様はタルレス公爵家の御嫡子ですか?」

「ああ、そうだ。何もなかったのなら良い。もう行きなさい」

「はい。ハルト兄様」

 そうしてティアラは東屋を後にした。
 しかし、ティアラの頭の中は先程の鼻歌で埋め尽くされていた。


 東屋でアルトラムと会って以来ティアラは、ふとした瞬間にアルトラムの事を思い出していた。
 あの鼻歌の曲についてアルトラムに尋ねようとした事もあったが、何故か邪魔が入り未だに聞けていない。
 その為ティアラにできる事はアルトラムの噂を集める事しかできなかった。
 知識は既に高位文官並みにあり、剣術は騎士団並みに使え、魔法は国でも5指の指に入るほどである。というものであった。


 それはティアラがアルトラムの噂を集めて暫くした、ある晩餐の席でのことだった。

「ティアラ、余りアレの事は調べぬ方が良い」

 その注意はティアラの父、ベルハルト王の言葉である。
 アレとはアルトラムの事であろう。

「何故ですか?」

「お前はアルトラムを恐ろしいと感じなかったのか?」

 ティアラの言葉に答えたのは4つ年上の下の兄、ベルトライルものだった。

「ティアラは幼いから余り感じないのかもしれないけれど、わたくし達にとってアルトラム様はとても恐ろしいのです。あの知識、武力、カリスマ性はとても危険ですよ。王家の血が入っているせいか特殊元素も扱えて、御実家も公爵家あらせられるわ。いつわたくしたち王家に牙を向けるか分からないのよ」

 ティアラに分かりやすく解説したのは2つ年上のティアラの姉、第一王女のアンネフィーネ・フォン・リベリアであった。

「だが危険だからと言って排除は出来ぬ。アレを擁護する者はそれなりの数がおるし、此方から手を出せば手痛いしっぺ返しが待っていよう」

 ベルハルト王はそう締めくくった。


 それからというものティアラはアルトラムの事を調べるのを止めた。自ら調べずともアルトラムの事らしい話題は何処からか入って来るからだ。
 ティアラのアルトラムにたいする思いは燻りながら、時は過ぎて行った。
誤字脱字ございましたら感想でお願いいたします。

よろしければ明日お会いしましょう。
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