表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ホラー】集

トイレの怪

作者: 蠍座の黒猫

14.10.17 推敲。終盤を変更。全体を圧縮。

 夜中にトイレに立った。寝ている猫を跨いで、玄関先にあるトイレのドアを開けた。我が家のトイレは少々広い。一畳半ほどの長方形型である。突き当りに洋式便座と窓がある。その窓を開けた。そして、しんと、静まり返ったトイレで用を足した。

「?」

何だろう。後ろで人の声のようなものが聞こえた気がする。

「いいじゃない。」

用を終えて、振り返る。

ドアの前あたりに、ぼんやりとした白い影のようなものが、いた。

電球の明かりに後ろのドアが透けていた。なぜか怖くはなかった。

「なにが。」心の中で呟いた。

「もういいじゃない。」

声は続く。

「だからなにが。」

影は、次第にはっきりと女のような形をとってきた。

「もう、生き続けなくていいじゃない。」

女は呟くように言った。

「まだ、だめだろ。」

影の女は、少し笑ったように思えた。

「子どものこと?まだ小さいから?」

「そうだな。」

女は、少し近づいたようだ。

「じゃあ、こうしてあげる。このドアを開けたら、あなたの小さい子どもは成人しているの。そして、あなたは成功していて、貯金も5000万円あり、生命保険もしっかり入っている。そのことを確認したら、私に命を頂戴。」

「え…」

私は、正直迷ってしまった。

女は、すっかり姿をみせていた。白い経帷子のようなものを着ている。足元だけがおぼろげだ。

「もちろん、納得してからでいいのよ。ただし、今夜じゅうに。あなたが、このドアをあければ、今夜死ぬ選択をしたことになるわ。」

そのときの私は、生きることに疲れているというより、この先の希望が見えなくなっていた。

 私は、返事をした。女は信じられないよけ方で、私を避けて奥へ行った。私は、覚悟をしたつもりで、そのドアを開けた。

「……」

夜の玄関先は、変わらないように見えた。

階段の2段目と3段目には、相変わらず猫が寝ていた。廊下の隅にも、変わらず猫が寝ている。私が訝しく思った時、声だけが聞こえた。

「多すぎる……。」

振り向くと、さきほどまでの静かな白い顔ではなく、夜叉の顔が見下ろしていた。

「命が多すぎる。今夜この家の全ての命を持ち去るお役目であるのに……。」

血の底から響くような声で、鬼となった女は言った。私は、あまりの形相に足ががくがく震えた。

「ひっ……な、なにが。」

「命が100を超えている。取り切れない。」

口惜しそうに、私を睨みつけて、女は消えた。私は、少し気落ちしながらも、どこかほっとしながら、猫たちを見た。我が家には、猫が12匹いる。そういえば、猫は命を9つ持つという。数えてみると、ああそうかと、思った。あれが何か知らないが、なるほど困ってしまうわけであった。

本当に、12匹いてます。。。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 猫に助けられましたね(^_^) 猫が12匹も!凄いですね(≧ε≦)
2015/01/15 12:35 退会済み
管理
[一言] いつか読んだ、星新一のエッセイを思い出しました。 真夜中、トイレに立ったとき、 「今、何時だろう?」と考えるのが怖いと言うんです。 もしかしたら、背後から、 「丑三つ時だよ……」 などと、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ