再会はしたくない
玄関を開けると、子供が居たのだという。
「気味の悪い子供でした」
心底薄気味悪かったのだろう。彼女は幾度も繰り返し述懐した。
胴体よりも頭が大きかったのだそうだ。と言っても、赤ん坊のように全体的に小作りだったというわけではない。
「小学生の子供くらいなんです、体は。でもその上に、同じくらい……いえ、ひょっとしたら体より大きな頭がついてたんです」
どうやって侵入したのかも不明なそれは、最初背を向けていたのだという。
それから帰宅した彼女を出迎えるように、振り向いて笑顔を浮かべた。
「不気味でした。無邪気にとか愛想よくとか、そういう雰囲気は何もないんです。笑顔を浮かべた人形って、怖く見える事があるじゃないですか。ちょうど、そんな印象でした」
そして、笑いながら膨らみ始めた。
「頭だけ、どんどん大きくなるんです。天井まで届きそうなくらいに膨れて、胴がその中に埋もれて、大きくなった笑顔が膨らみながらにじり寄って来るんです。悲鳴も上げたと思います」
腰を抜かした彼女は逃げる事もままならず目を閉じた。けれど、それきり何も起きなかった。
「恐る恐る目を開けたら、もう何もいませんでした」
宝くじに当選したのはその翌日の事だという。
因果関係はあると思いますか、と問うと、一等賞金を獲得した主婦は少し考え、
「判りません。でももし仮に、くじに当たったのがあれのお陰だとして。例えばあれが福の神みたいなものだったとしても」
もう一度は会いたくないです。
彼女はそう、話を締めくくった。




