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先を越される
ため息って行為は、ふたつの動作から構成されている。
息を吸う。吐いて出す。そのふたつだ。
さて。
これは俺が高校生の頃の体験。当時俺は実家の二階に自分の部屋をもらっていた。まあ狭いスペースだったんだが、初めて獲得した自分の空間って事で随分気に入って、試験勉強なんかもそこに篭ってやっていた。
その日の夜も、確かグラマーか何かの教科書を広げて翌日の試験に備えていた。
開始して十数分。
勉強に関しては集中力の続くタイプじゃない俺は早くも飽きがきて、盛大にため息をつくべく大きく息を吸い込んだ。
すると窓の外で、
「ふぅ」
俺の先を越して、盛大なため息がした。
前述したが俺の部屋は二階で、当然窓のすぐ側でため息などつけるはずもない。
うわっと鳥肌が立って、俺は居間へ逃げて出た。
それだけといえば、それだけの話である。




