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  幻想郷爆誕 作者:蒼響草
第一章07「二人の心境」





「あら、お久しぶり」


久しぶりに会った彼、ヒビキは以前と変わらぬままの姿で私の前に現れた。
私の姿を見ても大して驚いた様子のないことから、おそらくここに来る前までに私がここにいることを予想済みだったのだろう。

私がここに半年以上も居座ってるのに特に意味はない。
しいて言えばただ何となく待ち人を待つという状況を楽しみたかった、という理由にもならないようなものだった。
そんな私の心境を悟ったのかどうかは分からないが、ヒビキの最初の言葉は……


「どこかでお会いしましたっけ?」


中々のご挨拶。
もしこれが、本気で私のことを忘れて言ってるのであれば私は機嫌を損ねているとこである。

しかし、ヒビキは真っ直ぐと私の目を見て今のセリフを出したとこを見ると本気でそう思ってるわけではないとすぐに分かる。
普通、自分が知らないと思ってる人をジッと見つめてくるとは考えにくいし、
なによりこの人がたかが100年で人を忘れるような人間でないのも、ほんの僅かな付き合いだった私でも十分承知済みだ。
彼がわざとこういったの振りをしてきたのだから、こちらもそれに乗ってみる。


「貴方は覚えてないのかもしれないけれど、私は100年前に貴方に助けられたしがないスキマ妖怪よ」


我ながら随分と芝居臭くしたものだと思うが、まあ向こうも似たようなものなのでおあいこだろう。
私の答えをどう捉えたのかは分からないが、ヒビキはフーッと溜息にも近い深呼吸をした。


「それで? スキマ妖怪の紫はなんでここに居座ってるんだ?」

「居座ってたわけじゃないわ。貴方を待ってたのよ」

「俺を?」


ヒビキはやや驚きを示した表情で返事をする。
表情の変化が分かりにくいので、驚いたというのも私の主観で見た感じなのだけども。


「単刀直入に言うわ。ヒビキ、貴方に住んでもらいたい場所があるのよ」


回りくどい話は抜きにして、私は本題を述べる。
他にも語ることはあるにはあるけど、それはまたゆっくりと時間があるときにすればいい。


「住んでもらいたい場所?」

「そう。ここからさらに東にある辺境の地よ」


私はその土地について掻い摘んで説明する。


妖怪や忘れ去られた者達が集う土地。
決して変わることのない土地。




「そこに貴方も住人として住んで欲しいのよ」

「なるほどな。しかしなんで俺なんだ?」


彼の疑問はもっともだ。
少なくとも私の今の説明では、彼を住まわせる理由にはならない。


「知っていると思うけど。妖怪は人間との関わりが不可欠なの」

「まあな。妖怪自体、人間が生み出したようなもんだからな」

「その通り。そして妖と人は時に寄り添い、時に争い、時に滅ぼしあう」


座敷わらしのような人間と寄り添うことを決めた妖怪もいる。
逆に、人間に恨みをもって悪戯してくるものもいる。
そして……


「妖が人を捕食し、人はそれを防ぐために妖を退治する。むしろこれが普通ね」

「確かにな」

「妖と人は陰陽の関係。お互いの力がなるべく均衡を保っていることが望ましいの」

「……そのために俺を?」


私は静かに頷く。
かなりの時間を生きてきたが、彼は私が会ってきた人間の中で規格外の存在。
ただでさえ増えつつある妖怪の数も考えると、ここで是非とも人間の勢力を強めたい。
彼にはそれだけの実力を持っている。これは私の直感にしかないのだけど。

彼はしばらく考え込む仕草をみせる。
こればかりはどう転ぶか分からない。
私は内心でどう答えるのだろうかと思いを巡らせながら注視していると、
ヒビキは先ほどと打って変わったような態度になった。


「分かった。ありがたくその土地に住まわせてもらうよ」

「そう……、良かった」


もしかして最初の難色は演技だったんだろうか?
こうまで態度を変わられるとそんな気さえしてしまう。
もしそうだとしたら私は一本取られたということだろう。


(私もまだまだってことかしらね……)

「どうかしたか?」

「いいえ、何でもないわ」

「ところでその土地には名前をつけてあるのか?」

「?」


私は急に訊かれた質問に意表を突かれる。
色々と他に考えることがあって、そこにまで気づかなかった。
名前。考えてもみなかったわね。


「そうね、まだ決めて無いわ」


ここで何か適当な言葉で名づけることは出来るが、さすがにそれも憚られる。


(この際、ヒビキに決めて貰うのも一つの手かもしれない)


もともとこちらが無理を言って住んでもらうことになったのだ、彼が名づけ親となるのもそれはそれで納得できる。
それに彼が何と名づけるかも興味があった。


「よければ、貴方が決めてくれて構わないわ」

「いいのか?」

「私からの再会の贈り物とでも思ってくれればいいわよ」


私の言葉に納得してくれたのか、ヒビキは腕組をしながら考える素振りをみせる。
私はそのまま何十分でも待つつもりだったか……


「それなら『幻想郷』というのはどうだ?」


意外にもあっさりとヒビキは答えてくれた。
まるで初めからそう名づけるつもりだったかのように。

それにしても『幻想郷』か……悪くない。
ずっと前に彼にお世話になった時もそれっぽい名前を口にしていた覚えがある。
何か思い入れでもあるのだろうか?
私は彼の案に賛成の意を示すとこれからの事を話した。


「こちらに来る準備が整ったらその札に念をこめて頂戴、すぐに迎えにいくわ」

「分かった。これから世話になる」

「ふふ。こちらこそヨロシク」


お互いに最後の挨拶を済ませると、ヒビキはゆっくりと町の方向に戻っていく。
私は彼が以前渡した勾玉を身につけていてくれた事を思い出しながら、日傘を回しつつ目の前に作ったスキマの中に消えていった。











   ―――――――――― サイドチェンジ ―――――――――――











「あら、お久しぶり」


ジーザス。
運命の女神よ、お前に会う機会があったら覚悟しておけ。
俺は目の前にいるスキマ妖怪を視界にしっかりと収めながら現実逃避する。


(いや、待てよ!!!!)


もしかしたら、俺がスキマ妖怪だと思ってるこの女は別の女なのかもしれない。
俺は自分でもわけが分からんと言いきれる一筋の願望にすがりながら、静かに口を開いた。


「どこかでお会いしましたっけ?」


一瞬キョトンとした顔をみせた彼女にちょっと萌えたが、それをおくびにもださずに見据えた。
ここで視線を外したら負ける。
何に負けるかは謎だが。


「貴方は覚えてないのかもしれないけれど、私は100年前に貴方に助けられたしがないスキマ妖怪よ」


はい。分かってましたよ。
そうですよね。別人なわけないですよね。
はぁ……みじめだ。


「それで? スキマ妖怪の紫はなんでここに居座ってるんだ?」

「居座ってたわけじゃないわ。貴方を待ってたのよ」

「俺を?」


こんな手のこんだ真似をしてまで?
なんだか嫌な予感しかしないな。
俺は紫の言葉に一抹の不安を湧かせたが、紫は淡々と話を続けてきた。


「単刀直入に言うわ。ヒビキ、貴方に住んでもらいたい場所があるのよ」


あ。
これ完全にフラグたったわ。
なんのフラグかはあえて言うまい。


「住んでもらいたい場所?」

「そう。ここからさらに東にある辺境の地よ」


十中八九『幻想郷』で間違いないだろう。
俺の知識では、幻想郷は最初、ただの辺境の地でしかなかったとあったはずだ。
紫が続けて言い放つ説明を聞く限りでも間違いない。


「そこに貴方も住人として住んで欲しいのよ」

「なるほどな。しかしなんで俺なんだ?」


考えてみれば、妖怪達が集ってる場所に人間の俺を誘う意味が分からない。
いや、まあ俺もちょっとばかし人間を超えてる感は否めないのは確かだが。
それでも俺は人間です。


「知っていると思うけど。妖怪は人間との関わりが不可欠なの」

「妖怪自体、人間が生み出したようなもんだからな」

「その通り。そして妖と人は時に寄り添い、時に争い、時に滅ぼしあう」


“滅ぼしあう”という部分を強調してくる紫。
まさかこのスキマ妖怪は俺を滅ぼすつもりじゃないだろうな?
それは嫌すぎる。


「妖が人を捕食し、人はそれを防ぐために妖を退治する。むしろこれが普通ね」

「確かにな」

「妖と人は陰陽の関係。お互いの力がなるべく均衡を保っていることが望ましいの」

「……そのために俺を?」


理由としては通ってる気もしなくもない。
俺に白羽の矢がたったのも……まあ大体予想はつく。
本来なら即答で「だが断る」とでも言いたいのだが、
ちょっと冷静に考えてみると悪い話でもなさそうだ。

紫がこう言っている以上、俺はバランスキーパーみたいな役割をするのは確実。
そうなれば、紫も俺への危害を最小限にするのを手伝ってくれるはずだ。
紫と仲良くとかしてたら大抵の死亡フラグが回避出来そうだしな。
死亡フラグそのものを味方につけることで、その他のフラグを寄せ付けない。
中々斬新だ。

それに東方の世界で生活するというのにもちょっと憧れる。
憑依前ではいわゆる“幻想入り”ということになるだろう。
幻想郷が出来たばかりの頃だから、ちょっと違う気もするが。


「分かった。ありがたくその土地に住まわせてもらうよ」

「そう……、良かった」


俺が様々な計略と願望を考慮した上での答えを聞いた紫は、なんだか面くらったような顔をしている。
俺に住んで欲しいんじゃなかったのか?


「なんか問題でもあったのか?」

「いいえ、何でもないわ」


うまくはぐらかされた。
追及するつもりもないが。


「ところでその土地には名前をつけてあるのか?」

「?」


さっきから紫は“辺境の地 辺境の地”と連呼してたが。(連呼してないけど)
もしかしたら『幻想郷』という呼び名すら決まっていない可能性を俺は危惧していた。
ハッキリ言って、それはこの先のことを考えると色々と不味い。


「そうね、まだ決めて無いわ」


予想どおり。
今の段階で気づいてよかった。
このままずるずると『幻想郷』の名が定着しなかったら、俺の知る東方歴史が再現されるかも怪しくなってしまうからな。


「よければ、貴方が決めてくれて構わないわ」

「いいのか?」

「私からの再会の贈り物とでも思ってくれればいいわよ」


これは願ったりかなったりだ。
どう誘導していこうか悩んでいたが、杞憂に終わったようだな。




俺はすでに決まってあるその名前を、心の中で反芻しながら紫に伝えた……





次からようやく幻想入り(?)。

前のサイトで掲載してたときも一応言ってましたが。
この作品はそのストーリー展開や設定の特殊性により、結構な独自解釈を多く含んでいます。

東方の歴史が曖昧な部分をいくつもはらんでる故に必然的にそうなるのですが、
この解釈は気にいらないだとか、こういう解釈にして欲しいだとかのコメントは避けてください。
(矛盾があるという場合のみコメントしてください)


この作品は オリキャラ介入によるオリ歴史・オリ展開で進んでいくことを 初めに承知してください。
ではでは〜 ・ω・ノシ


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