大事にするよ
梅桃さくらの闇の世界に、ようこそ。
ショートホラーの連作、第7回となります。
結婚しよう。
絶対君のこと、大事にするから。
あ、笑ってる。信じてないな~?
本当だよ。
僕、父親も母親もいないだろ?
でも小さい頃、二人がまだ揃っていた頃、僕は両親をとっても大事にしてたんだよ。
お父さんは酒に酔って僕を毎日殴ったよ。
でも僕はお父さんが大好きだったから、母さんが隠しているお酒を見つけ出して飲ませてあげたんだ。
足りなそうだったら、僕のおこづかいで買ってきてあげたよ。
え?お父さんは肝臓が悪くなって死んだよ。
今なら分かるよ。
アル中のお父さんにお酒を渡しちゃいけないって。
でも小さかったから知らなかったんだ。
仕方ないよね。
母さん?
母さんが死んだのは僕が高校の頃だよ。
再婚するって言ってね。
幸せそうだった。
でも僕のことが心配だから、この家から出たくないなぁって言ったんだ。
だから僕は母さんが家から出なくていいように、庭に埋めてあげたよ。
母さんは泣いて喜んでたよ。
僕が土を掛けるたびに手を振ってね。
最後まで幸せそうだったよ、母さんは。
どうしたの?
顔色が悪いけど、大丈夫?
帰りたい?
送っていくよ、もちろん。
僕は僕が愛する人を
とても大事にするんだからね。
優しい人と怖い人。
保護と破壊。
どちらも背中合わせの気がします。