「多賀ぁ〜そろそろ準備いいかぁ」
監督は唾をとばしながら俺にいった。
俺の名前は多賀陽一。
いちおう俳優を職業としているが、さっぱり芽がでない。
そして、俺に唾を飛ばしてるのが自称映画監督の遠藤だ。
遠藤は数々の自作映画を作ったが、全く売れず、映画監督のポリシーを捨てて、
アダルトビデオの製作もしたが、それもパットしない。
今では借金まみれで舌だけはよくまわるがクビがまわらない。
才能の無いただのおっさんになっている。
売れない俳優と、才能のない借金まみれの監督で、あるシナリオを立てた。
そのシナリオとは本物の幽霊を撮影して、それを、
大手テレビ局に監督のつてを使って売り込むというもの。
もちろん本物の幽霊なんている訳がない。
そこで、監督の知り合いのAV女優を幽霊役にさせて、俺を驚かすのだそうだ。
撮影場所はつぶれた病院で、近所では幽霊がでると評判になっている。
そこで、それが真実かどうか確かめるべく、俺が病院内を探索して三階にある
手術室で、女の幽霊を目撃して逃げ帰るという安っぽい設定だ。
もちろん幽霊がでるなんて噂は存在しない。
俺はこんなの売れるわけがないと思ったが、当面の
生活が苦しいのでギャラに釣られて参加する事にしたしだいである。
そして、撮影がはじまった。
撮影といっても、カメラマンがついてくるわけじゃない。
予算節減のため、俺がデジタルビデオカメラを持って撮影するのだ。
監督はこの方が臨場感があっていいと言ったが、余分なギャラを
払うのが嫌なだけだろうと俺は思った。
監督は幽霊役の女が怖がるからといって、一緒に病院に入っていった。
そうして、俺は病院内に足を踏みいれた。
さすがに、夜の誰もいない病院は怖い。
俺は事前の監督の指示通り、ゆっくりと病院の一階から丁寧に撮影していった。
そんなに大きくない病院なので、一階の各部屋をすべて見て回った。
つぶれた病院だけあって、かなり老朽化しており病院内は荒れ放題だ。
壁には、不良どもの溜まり場だったのか趣味の悪い落書きがそこらじゅうに
書いてあった。
次は二階にいこうと思い、階段を上ろうとした。
その時、上のフロアーからバーンとなにかが倒れる音がした。
さすが、監督こういう事だけ抜け目がない。
俺は二階にあがった。
二階にあがると、老朽化の為、コンクリの壁が崩れているところがあった。
床も穴があいてるところがあり、つまずいたら怪我するなぁと思った。
万が一のために、監督は俺に保険かけてるといったが、あてに出来たものじゃない。
一人で暗い病院を回っていたら気味が悪い。
だんだん気分も悪くなってきたので、とっとと、撮影やめようと思い、
俺は問題の三階、手術室にむかった。
手術室には大きな扉がついていた。
俺はいよいよ、クライマックス突入だと思い、扉をあけた。
開けた時、ぎぃーと嫌な音がした。中には、大きな手術用の照明とボロボロのベッドがあり、手術用具を入れるための棚が並んでいた。
その棚の間に白い服をきた女が立っていた。
俺は、お約束の悲鳴をあげて手術室から出ようとした。
すると、俺は後ろから、何者かに羽交い絞めにされてしまった。
そして、白い服を着た幽霊役の女がゆっくり俺に近づいてきて、あろうことか、俺の首を絞めだした。
こんな設定聞いてないぞ
すると、後ろで羽交い絞めにしている何者かがいった。
それは、聞き覚えのある声だった。
「悪いなぁ〜多賀。お前には、ここで死んで貰うよ。お前には、多額の保険金をかけてあるんだよ、その金で、女と悠々自適の暮らしをさせてもらうよ」
俺は目で女に合図を送った。
女は俺の首をしめるのをやめた。
俺は素早く、監督の背後にまわり、逆に監督を羽交い絞めにした。
そして、女が監督の首を絞める。
俺は監督にいった。
「悪いなぁ〜監督――女と悠々自適の生活をさせてもらうよ」
そうして俺達は、監督を殺した。
監督には、借金苦で自殺したというシナリオをあげた。
こうして、俺は名実ともに一流俳優の仲間いりだ……
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