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醜い少女と恋する王子

作者:黛 カンナ
昔々、一人の少女がいた。
その少女の顔面は恐ろしく醜くかった。右半分はともかく、左半分は焼き爛れたようになっており皮膚がないみたいになっていて、眼球は大丈夫だが本当に見るも無残な醜い少女、それが、カルラ・アレックス。

「まあ仕方ないよね」

カルラは仕方がないと割り切っていた。顔を見られれば悲鳴をあげられ、声をかけただけでも、泣きそうな顔をされる。この左半分が焼き爛れた顔では仕方がない。

早々に諦めたカルラは普通の少女として生きるのは無理だと判断し、軍人として生きる事を選んだ。幸いにも、武術の才に恵まれたカルラはメキメキと腕をあげて、まだ子供ではあったが多大な成果を上げた。

その評判は戦場のみならず、王宮でも評判となった。左半分が醜く、腕利き剣士の少女はその腕を買われ、王子の護衛となった。

...なのだが...

「何で私、こんな事になってるんだろ?」

「ど、どうかしましたか?」

「なんでもありません」

質問にそう返す。王子の護衛として呼ばれた筈なのに何故かその様な仕事をまったくしていないのだ。

庭で何故か茶を一緒に飲んでおり、顔を見れば背けられ、目をキョロキョロさせている。自分の顔が醜いのだから仕方ないが、だったら関わらなければいいのに。

しかし王子は何故かよく私に話しかけて、こうやって怯えながらもお茶に誘う。こんな醜い私にも優しくしてくれるなんて、素晴らしい王子だ。...しかしながら

「あ!お、お茶ですか?おかわりします?」

「いえ結構です。お構い無く」

手を震わせながらガチャガチャと茶を注ごうとする王子を止める。

王子は綺麗で美しい人であった。綺麗でサラサラな髪に聡明な頭脳をもち、王様になるのはこの人だと誰もが言っている。

この人ならばきっとより良い世界を造るだろう。

「あ!お菓子食べますか?」

「甘いものは嫌いなので結構です」

そう言うと何故かこの世の終わりの様な顔をされた。半ば泣きそうだ。確かに私みたいなのが王子に断りを入れるなんて、失礼だったかもしれない。

沈黙が流れる、私はこの焼きただれた顔のせいで人とのコミュニケーションがあまり上手くないのだ。
そんな気まずさが嫌になった私は言い訳の様に帰ろうとした。

「あの、私勤務があるので」

「え、もう少し...とか...あ、ううん!何でもない!頑張ってね!」

立ち上がってそう言い、少しションボリとした顔の後、手をグーにして頑張ってと言った。

...王子、表情がよく変わるな。

それを見送ってから私は職場へと戻った。職場と言ってもやることは基本的に王宮の門でポー...とする位である。正直暇なのだが、それを思ってるのは私だけでは無いらしい。

「なぁ聞いたかあの噂?」「聞いたぜ、なんでも王子が恋したらしいな」

休憩の入った兵士たちがそう噂話をする。へーあの王子、恋したんだ。

「自分より年下らしいぜ」「きっと可愛くて令嬢なんだろうな...」

それにヒットする令嬢を頭の中で思い浮かべる。シャルテット様やユルラ王国の姫様とかだろうか?わ~可愛いー...

私なんかに優しくしてくれる人だ。きっと綺麗な奥さんを貰って幸せになるんだろう。
優しくしてくれたせいか少しだけ悲しく思えてしまう。

私はそんな思想を蹴散らし、今日の仕事に励んだ。





「あ、あの!!い、いい天気ですね!?」

外は雨がじゃじゃぶりであった。

「...雨には雨の風情がありますね」

「え?...あ!す、すみません変なこと言ってしまって」

今日も私は話しかけられた。自分なりに気の効いたセリフを言ったつもりであったのだが、逆効果だったみたいだ。

仕方ないじゃないか、私は人と話すのが得意な方じゃない。話す前にみんな私の顔を見てどこかへ行ってしまうのだ。

そのせいで変な雰囲気になる。なんだろ、何も喋らないシーンとした雰囲気が嫌いだ。

「そういえば最近好きな人ができたみたいですね」

何か話題をと喋ったら、王子は目を点にした。しまった、いきなり不失礼だった。失態だ。

「は、はい!好きです!」

その瞬間、何故か胸が凄く痛くなってしまった。まるで心臓を抉り取られたような気分で、涙がでそうだ。何でこのような気分になるのだろう?

「ど、どう思いますか?お、俺は幸せにするつもりです!!」

年上なのに、何故か可愛く思えてしまう王子が私の顔を見ながら言った。こんな私に優しくしてくれる人なのだ、その人は幸せ者だろう。それに王子の恋が実るのは国民として祝福するべきなのだ。

「とても...いいと思います。」

「あ、ありがとう!!幸せに!幸せにします!」

すごく嬉しそうにする王子を見れた。もう充分だ、充分過ぎる。優しくしてくれて、喋りかけられて、充分過ぎるほど幸せだ。

「じゃ、じゃあ俺は明後日の華皇祭の時に発表します!それでいいでしょうか?」

「はい、素晴らしいと思います」

花が咲いたような笑みを浮かべ、王子は顔を赤くして走り去っていった。私はそれを何とも言えない気持ちで見送った。




「こんにちは~悪魔でーす☆」

次の日、何故か悪魔と名乗る少年が現れた。背中の黒い羽をパタパタさせ飛んでいる。悪魔という種族は実は結構存在が確認出来ているため、驚かない。

「なんなんだ」

「いや~その醜い顔をなんとかしてあげようと思ってね」

軽い調子で悪魔は続ける。

「その醜い顔はね、ちょっとした呪いでその昔カルラという侍女が王子に見初められたとかなんとかで、呪いかけたんだ」

「なんでそれが呪いになる?」

「詳しくは知らないんだけど、どうやら侍女を無理矢理幽閉してて、キレた侍女は自分の子孫に呪いをかけたとさ。んでもって望むなら顔を綺麗にしてあげてもいいよ」

意味の分からない説明のあと、悪い顔でいった。

「どうする?きみの好きな王子と結婚できるかもよ?」

「いらん」

即答で答えれば、悪魔は驚愕の顔をした。

「なんで!?なんで!?キレイになったら得なことが...」

「王子の幸せな顔を見れた、それだけで充分なんだよ..分かったらさっさと帰れ」

「え!?まってまって!実は他にも...」

半ば強引に悪魔を追い出した。この取引に魅力を感じなかったと言えば嘘だが、王子が幸せになって欲しいのは本当だ。悲しいが...その思いには蓋をした。



華皇祭当日、私は壁のとこにヒッソリといる。
警備員として来るはずだったのだが、何故かドレスアップされた。醜い顔を見せたくないので、壁で静にしよう。

『えー、お集まりの皆様本日は来てくださりありがとうございます。これより、王子からのお言葉です』

声を大きくする道具が王子に渡った。他の令嬢はそわそわしている。恋する王子の噂が広まっているのだ。

「実は、大きな発表があります。私、アレン・ランドローバーの婚約者を紹介します」

その声に皆が驚いた。...あぁ、きっともう告白したのだろう。私が王子を見ると、目があった気がする。きっときのせいだな。

「今から紹介します」

そうして、舞台から降りた王子は私の方向へ近寄った。...何故私のもとへ来るのだ?
そんな疑問をよそに、王子は私の手を握り宣言する。

「この人が、私の婚約者です!!」

...え?

「まってくれ!え?どういうことだ?」

「え?あの時告白したじゃないですか!?」

泣きそうになった王子が説明するには、私はあの時告白されていたのだという。...今まで気付けなかった。バカか!?わたしは!?

「では、もう一度いいます!結婚してください、幸せにします!」

そう高らかに宣言された。私は恥やら自分の鈍感さに呆れてほうけていたが、その言葉はしっかりと耳に届き。

「よろこんで」

そう答えた。もしこれがドッキリであったら私は泣きまくる自信がある。しかし王子は私を抱きしめ、キスをした。

「なんと、顔が...」「綺麗...」「まるであの王妃だ...」

いきなりキスをしたこととは違う、言葉が周りから聞こえる。キスしたあと、王子はヘタリこんでしまった。

「どうしたのですか!?」

側にかけよるカルラ。

「よかった...呪いを解くには、愛する人のキスって悪魔から聞いて...その愛する人が僕でよかった...」

つまりは、愛する人のキスは自分なのか心配だったらしい。そして、それは王子で間違いなかったらしく少女は綺麗な顔になっていた。

中性的な顔に切れ長の目、焼きただれた左側は艶々しい肌になっており、まるでこの王宮に伝わる一人の王妃の様に、燐とした綺麗さであった。

少女はクスリと笑い、今度は自分から抱きしめる。

「私の愛する人は王子です」

その言葉を聞いた王子は顔を真っ赤にして、抱きしめ返した。


醜かった少女と恋した王子は末永く幸せに暮らしましたとさ。

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