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雲の海に深く潜む

澆季からひとつの大きな終焉へ

 砂塵舞う。
 熱砂の上も下も陽の焔を立ち上らせている。
 延々と続き広がる熱の海。ひと握りではとても足りたものではない水のみが命を救済し、わずかな植物とそこにできる影がひとときの安息をもたらす。
 風吹けば熱のかたまり。ないよりは良く、吹いても飢えと渇きに体が悲痛の声をあげる。
 かつてに想いを馳せる。
 熱と砂と容赦なき陽光。滲んで見える、永遠に届き得ない地平線。死を見るような蜃気楼。
 かつてに想いを馳せ、渇望する。時の蘇りを。
 陽の焔から肌を守る、白布に覆われた腕を伸ばす。手の甲を下へ。掌を天へ仰がせて。
 かつて、ここに在った文明。薄れゆくその記憶。進化し続けた末路か。それを行い続ける最中に誤った小さな選択が起因となった結果であったか。
 今となっては誰も知り得ず、誰も知ることはできないところまで来てしまった。
 今は昔。大昔。人は世界中に多くいた。記憶として留まっているのでは、八十億人あたりだったろうか。それだけの人口が、約束の日となったカタストロフィーを迎えた日を皮切りに恐ろしい数の生命を喪った。人が人を食らうような殺人。人肉に味をしめた獣が山を下り、生きる糧として標的を一本化に開始。ほか天災といった災禍が大きな問題として世の中を駆け巡り、対策が講じられ執行された。
 そうまでもしても効果はあれ、改善も成功も見られず、現状維持に終わった。その都度の対応、撃退。これのみですべてを終わらせて新案は発されず、暗黙のうちに問題は人の脳から伏された。
 愚かとしか言いようがない。
 人は逃げたのだ。増え続け、改善の見込みが得られないと答えを出すと、命を投げ捨てるに等しい黙殺と瞑目をした。
 その末の世界の姿がこれか──と、熱の海に冷たい涙が汚れ乾いた高頬へ流れ、白髭に覆われて判然と見えない顎を滑り落ちる。
 仕方がない。そう諦念の溜息がまたこぼれた。
 本当の世の終焉を目に焼き付け、一見では背の歪みや歩行の危うさも見られない男は、宛てのない旅の供である杖を右手に歩きだした。
 世の終わり。
 澆季を迎えて後に訪れる終焉の刹那を。それが無理であるなら、そのまた少し前を見てこの命を眠らせるために。






-完-

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