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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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15 次の世代へ

 寮対抗戦の2日目は夏寮の大勝で終わった。
 こうなると冬寮には逆転の隙がない。
 同じ対戦相手と試合できるのは1回までという規則なので、再び寮長同士の一騎打ちはできないのだった。また、空戦は体力を使うため、全力で試合をした冬寮のルルキスとクリストルは疲れきっていた。

 試合中に被弾してダメージを受けたカケルも疲労が無い訳ではない。
 ロンドにはああ言ったが、いつもより身体が重い感じだ。

 寮対抗戦の最後の三日目は、細かい試合が各所で行われ、冬寮はいくつか勝ち星を稼いだ。カケルとイヴのペアにも試合申し込みがあったが、疲労もあるので断れる試合は断る。1つだけ試合を受けて、当然のように勝った。
 冬寮は点数を稼いだが、結局夏寮の総合得点には及ばなかった。

 こうして、今回の寮対抗戦は夏寮の優勝で幕を閉じた。

 三日目が終わり、寮に戻ったカケルはイヴと共に寮長に呼ばれた。
 夕食が終わって学生達が去った食堂の隅に、寮長セファンと4年生の研究科のウィルが待っていた。カケルとイヴは彼等に対面する椅子に座る。
 寮長セファンは話を切り出した。

「もうすぐ俺達は学年が上がる。俺とイリアは6年生になって、夏になるとほとんど学校にいなくなる。だから、この春に寮長の引継ぎをしとく必要がある」
「!」

 カケルとイヴは自分達が呼ばれた理由を察して「まさか」と思った。

「次の寮長はウィルに頼む。副寮長はアリエルだ。ちょっと先の話になるが、その次の寮長はサーフェスに引き継いでくれ」

 え? 俺? カケルは驚いて目をパチパチさせた。
 リーダーとか面倒くさいのに。イヴの方が絶対いい。彼女なら皆ついてくると思うけど。

「……何故こんなことを言うかというと、4年生は戦える奴が少ないからだ。ウィルは研究科、アリエルは生産科。ルークは陸戦科だが、自分とこの血の気の多い連中を制御するので手一杯で、寮長なんて無理と断られた。
 寮対抗戦になった時に中心になって作戦を立てられる奴がいない。
 そこで表向きの寮の管理はウィルとアリエルに任せるが、戦いが必要な場面ではサーフェスと一緒にやってほしい。ウィル、サーフェス、頼めるか?」

 既に話を聞いていたらしいウィルは、驚いた様子はない。

「はい。僕が寮長の仕事を全部行うのは荷が重い。サーフェスやアリエルと一緒にします」
「……」

 カケルは寮のメンバーを頭に思い浮かべて、確かにそれが最適な解だと思った。
 しかしすぐには了承できない。
 俺は昼寝がしたいんだ。

「……寮長とか忙しそうで嫌です。お昼寝したいです」
「カケル!」
「お昼寝を取り上げないで~、俺の生きがいなんだよ~」

 訴えると、イヴは怒ったように声を上げたが、セファンは怒らなかった。

「ああ、別に昼寝するなとは言ってない。自分のペースでできる範囲でやってくれ。お前が大変な事情を抱えてエファランにいることは知ってる」
「セファン先輩……?」
「独りで頑張らなくてもいいんだ。アラクサラと一緒に頑張れ。どうせアラクサラが表に立った方がうまくいくだろうし、お前は保険だ」
「イヴが頑張ってくれるなら、俺はお昼寝できそう。うん、それならちょっとだけ頑張ります!」
「あ、あなたね……」

 男子のプライドとかないの? とイヴが文句を言っているが、カケルはさらっと無視した。
 一生懸命頑張るとかしたくない。
 サボれる時はとことんサボる。
 それがカケルの信条だ。

「よし! 決まったな。アラクサラ、後はよろしく頼んだぞ」
「えっ?! 今のはそういう話だったんですか?」
「アラクサラ、お前なら大丈夫だ。夏寮の連中は個性的だが、お前ならきっと連中を調教できる」

 自分が一番調教されてる事実は棚にあげて、カケルはうんうんと同意した。
 イヴは困惑した顔をしている。
 彼女が疑問を口に出さないうちに、カケルは話を終わらせることにした。

「分かりました、セファン先輩。よろしくご指導をお願いします!」
「おう」

 そういうことになった。






 寮対抗戦が終わった次の日の朝、4つの寮の生徒を集めてグラウンドで朝礼が行われた。
 優勝した寮や、特に活躍した生徒が表彰される。
 生徒達の前の壇上で教師が今回の寮対抗戦についてコメントを発表していた。
 カケルは欠伸を噛み殺しながら教師の話を右から左へ聞き流す。

「それでは、星翼協会エクセラードの代表、リチャード・アラクサラさんから、今回の寮対抗戦の特別賞を表彰していただきます……」

 ぼんやりしていたカケルは聞き覚えのある苗字だな、とぼんやり思った。
 礼装を着た貫録のある茶色の髪の男性が壇上に上がる。
 明るい空色の瞳が生徒達を見下ろした。
 ん? アラクサラって、もしかしてイヴのお父さん?

「特別賞授与、カケル・サーフェス!」

 は?

「……」
「おい、カケル。呼ばれてるぞ」
「……ななななんで?! 聞き間違いだよね?」
「残念ながら聞き間違いじゃねえよ」

 驚きに固まってしまったカケルを、後ろに並んでいたオルタナが突く。
 一方、壇上に上がった父親を見上げてイヴは「お父さん、なんで?」と惚けていた。
 彼女にとってもこれはサプライズの演出らしい。

「サーフェス君」
「は、はいぃ」

 呼ばれて仕方なく、カケルはざわめく生徒達の間をすり抜けて、壇上を目指した。
 特別賞? 何の冗談だろう。

「今回の寮対抗戦では学内でも珍しいタッグを組んだ空戦が実施されました。これはサーフェス君の提案だそうです。また彼は、夏寮の寮長を補佐して、見事夏寮を優勝に導きました。その功績を称え、ここに特別賞を授与します」

 司会担当の教師が表彰をしながら、カケルをリチャードの前に押し出す。

「おめでとう」

 言葉ではカケルを褒めるリチャードだが、その空色の瞳は全く笑っていなかった。

「うちの娘と付き合っているそうだね」
「!」

 ここでそれ言う?!
 カケルは口から魂が出そうになった。

「交際は認めよう……だが、私の許しなしに、契約や駆け落ちは絶対認めん!」

 思いっきり私情を挟んだ宣言に、聞いていた教師や生徒達は騒然となった。
 イヴは顔を真っ赤にして叫ぶ。

「お父さん!」
「まずは手順を踏みたまえ。きちんと挨拶に来なさい。そこからだ!」

 気に入らないことをしたら文句を言っていびってやる。
 それが嫌ならイヴと別れなさい。
 いや今すぐ別れろ!

 言葉より雄弁にリチャードの姿勢がそう物語っている。
 この父親は娘が言うことを聞かないので、カケルに圧力をかけることにしたらしい。

 こ、困ったなあ。
 どうしよう。
 うーん。

「分かったかい?!」
「えーと」
「返事は?!」
「はっ、はい!!」

 圧力に負けてカケルはつい良い返事をしてしまった。
 しまった……。

「おおお、公認カップル誕生か?!」
「サーフェス、持てる男はつらいねえ」
「爆発しろ」

 背後の生徒達から野次が飛ぶ。
 彼等は事の成り行きを理解して面白がっていた。
 他人事だからって皆、ひどいよ。

 司会担当の教師がにやにやしながら、リチャードとカケルに握手を促した。
 礼儀にのっとって、カケルはイヴの父親と握手した。
 握りつぶされそうだった。

 俺、この先うまくやっていけるのかなあ。
 ああ、お昼寝したいよぉ。








 Act.09 仲間と共に挑む、昇級をかけた寮対抗戦!  完

 Act.10 学年が上がって4年生になりました へ続く



9章(Act.09)、長くなってしまってすいません!
戦闘シーンが続いたので、そういうの興味ないという方は退屈だったかもしれません。
次の章は学生生活が中心になります。
少しずつ成長していくカケル達。第一章(Act.01)の頃より逞しくなって仲間も増えたし、赤の他人だったイヴとカケルは公認のカップルになってます。
この先も変化していくカケル達をゆっくり愛でてやってください。

Act.10もお楽しみに!
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