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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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14 空戦決着(vs.水竜ルルキス&ステファン)

 陽光の下で金にも見える明るい橙色の鱗を持つ竜と、真冬の空に浮かぶ月のような銀の鱗の竜が蒼天でぶつかり合う。彼等が交錯する度に、空中に火の粉と雪片が散った。

 寮対抗戦の2日目。
 夏寮の寮長セファンと、冬寮の寮長ルルキスの対戦は山場を迎えていた。
 この勝負で寮対抗戦の勝者が決まると言ってもいい。寮対抗戦は3日間であと1日あるが、残り1日で劣勢を逆転するのは現実問題難しい。
 火竜セファンはこの勝負に賭けている。

「もう6年生……あっという間に卒業ですね、セファン」
『ああ』

 パートナーの竜騎士イリアの言葉に、セファンは短く同意する。
 学業に専念できるのは5年生まで。
 6年からは就職活動をして寮から出て行く。
 セファン達5年生はこの春に6年生になり、秋には寮を出て就職先に通ったり実家に戻って家業を継いだりする予定となっている。
 つまりこれが最後の寮対抗戦。

『良い風だ』

 火竜は蒼天から大きく息を吸い込んだ。
 追い風が吹いている。
 後輩が起こしてくれた風がセファンの背を押す。
 飛べ、そして翔け昇れと。

 火竜を包む紅蓮の炎が一際明るく輝き、朱は黄金へと昇華する。

「私達は勝ちます。絶対に」

 イリアが冷たい灰青色の瞳に熱い意思を宿して力強く宣言する。
 少女の足元にも炎が燃え盛っていたが、炎は彼女を傷付ける様子はない。
 強い意志と言葉をトリガーに竜と竜騎士は同調する。空中に張り巡らされた目に見えない回路、ダイアルネットワークは人の意識を繋げてその想いを伝達する。


 攻撃用の特殊同調技、黄金炎飛翔フレアドライブ


 燃え盛る炎をまとって飛び込んでくる火竜を目前に、銀の竜の背でクリストルは笑んだ。
 彼は冷静だった。

「最後なのは僕達も一緒さ。ルルキス、愛してる」
『いっ、いきなり……』

 唐突の告白に銀の竜は驚愕する。
 クリストルは剽軽な変わった性格の男だが、それでも戦闘中に戦い以外の話題について話したことはなかった。いや、戦闘以外の日常生活でも彼は節度を保って、女王と執事という態度を崩さなかった。竜と竜騎士は異性であればお互いを意識するものだが、ルルキスと彼は意外に健全な関係だったのだ。

「卒業しても僕と一緒に飛んでくれるかい?」
『当たり前じゃない!』
「良かった。これからもずっと、僕は君と共にいよう」

 その言葉は誓いであると同時に同調のトリガーとなった。
 ルルキスは身震いして喜びを噛み締める。

『ええ……勿論よ!』

 銀の竜の周囲の空気が澄んでいく。
 冷気に陽光が複雑に反射し、小規模な虹が浮かんだ。
 純白のウェディングドレスをまとった花嫁のように、白い冷気の裾を軌跡にしながら銀の竜は優雅に下降する。


 攻撃用の特殊同調技、白銀雪祝福ホワイトブレス


 二体の竜がぶつかる瞬間、双方の竜騎士もそれぞれ呪術を発動させた。
 それが勝負の分かれ目となった。

流星炎メテオ!」
光盾イージス!」

 火竜の竜騎士イリアは攻撃の呪術を発動する。
 対して水竜の竜騎士クリストルは防御の呪術を使用した。
 竜と竜騎士は攻撃と防御を分担するのが基本の戦術だ。クリストルの選択はその基本にのっとったものだった。対してイリアは防御を捨てて攻撃を重ねる選択に出る。空戦科の授業では悪手とされる、攻撃に特化する戦術。しかし、全力でぶつかり合う数舜において、攻撃に集中したイリアの選択は功を奏した。
 クリストルは本来攻撃タイプの呪術師で、ルルキスは補助タイプの竜だ。水属性の竜は通常、攻撃タイプなのだが、彼女は天候を利用する補助の技を得意としていた。
 攻撃タイプの呪術師は防御が弱く、補助タイプの竜は攻撃力に欠ける。

 シャラン……

 透明な硝子が儚く砕け散る音がして、クリストルの張った光盾イージスは霧散する。
 純粋な攻撃タイプであるイリアの呪術は、防御を突破した。
 同時に火竜がまとう黄金色の炎が、雪片を溶かして宙に散らす。
 追い風を受けた火竜の攻撃は通常の倍の火力となっていた。
 炎は氷のベールを剥がす。
 その次の瞬間、光の球が数個、銀の竜の背に着弾した。
 ボールに入っていたインクが竜の背に飛び散る。

「くそっ」
「やった……!」

 勝負は決した。
 二体の竜はにらみ合ったまま動きを止める。

 いつの間にやってきていたのか、教師の乗った審判の竜が近くにいた。
 竜の背から審判役の教師が宣言する。

「勝者は、夏寮のマクセランとアラクサラのペアとする!」

 竜と竜騎士は、公式には竜騎士の方が主となるので、試合で呼ばれるのは竜騎士の名前となる。
 教師の宣言と共に戦闘の緊張感は去った。
 肩の力を抜いた竜と竜騎士は、距離をおいて緩やかに下降を始める。

『負けてしまったわね……』
『たまには俺に勝ちをゆずってくれてもいいんじゃねえか』
『いやよ』

 セファンとルルキスは軽口を叩き合う。
 竜の背でイリアとクリストルも試合後の挨拶を交わしていた。

「ありがとうございました」
「こちらこそ。どうせお互い空軍に入るんだ。長い付き合いになるだろう。これからもよろしく頼むよ」

 和やかな雰囲気で一行は地上に降り立った。
 地上に降りて竜騎士を降ろすと、セファンとカケルは竜の姿を解いて人間の姿をとる。
 セファンは後輩に言葉を掛けようとしたが、その前に冬寮のロンドがカケルに近寄って、がばっと抱擁した。

「カケル! すまん! 思い切り攻撃をあてたが、ダメージはないか? ああ、元から緩いお前がさらに緩くなったらと思うと、心配で心配で……」
「ぐえっ。ロンド兄、落ち着いてくれよー。俺は大丈夫だよ。心配すると見せかけてさり気に酷いこと言ってるし」
「すまん」

 ロンドはカケルの身体をあちこち撫でまわして、すっかり行き過ぎた心配性の兄になってしまっている。抱きしめられて撫でまわされるカケルはされるがままだ。
 パートナーに置いてけぼりにされたステファンは苦笑しているし、ブラコンを見せつけられたイヴは引きつった顔をしている。
 実に微笑ましい光景だ。

『……セファン。夏寮の次の寮長は、まさか、あの子?』

 滝のような銀色の髪を翻して颯爽と歩いて来たルルキスが、セファンに問いかける。
 その声は他に聞こえないように念話となっていた。
 セファンも関係者以外に聞こえないように念話で応じる。

『この春で4年生だから、まだ無理だけどな。いずれは』
『そう。冬寮の次の寮長はロンドを指定するつもりだけど、仲が良すぎるのも困ったものね』
『別にいいんじゃねえか。試合中は割り切ってるようだし』

 次の春には、セファンもルルキスもここにはいない。
 新しい世代が寮長として立っていることだろう。
 寂しくはない。頼もしい後輩が育っているのだから、安心して後を託せる。明るい未来を思い描いて、セファンはルルキスとこっそり目線を交わして笑った。

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