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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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13 空戦その2(vs.水竜ルルキス&ステファン)

 灰色に曇っていた空が青く晴れ始める。
 蒼い竜から放射される風が天空に吹き渡った。
 雪やミゾレは跡形もなく消し飛んで、もうここは風竜の領域だ。

『あの子、もう同調技を使えるの?! しかも私の氷の領域を奪うなんて』

 氷の女王ルルキスは動揺している。
 こうも真正面からフィールドを塗り替えられたのだから、無理はない。
 魔力レベルAの竜が使う支援技には、一定の領域を支配し、天候を変える技が含まれる。ルルキスの支配する水の属性の領域では、水属性の竜の力が増す。
 領域の支配は先に行ったもの勝ちである。
 後から奪うのは難しい。

「それだけ、アラクサラとの絆が強いということか……」

 ロンドは風を巻き起こしながら上昇する蒼い竜を眺めた。
 同調技は竜騎士との関係が非常に重要だ。
 竜と竜騎士が強い感情を持って、一つの目的に向かって心を合わせる時に魔法が発動する。前提として最低でも友人以上、仲が良い関係でなければならない。
 そしてもう一つ重要な条件がある。

 同調技を起こす感覚を知っている必要がある。
 それは、目に見えないトリガーを引く、独特の感覚だ。

 普通は竜になって一年未満では、その感覚を知らないので同調技を起こしようがないのだ。同調技の使い方は空戦科の上級の授業で習う。竜騎士か竜のどちらかが、同調技の独特の感覚について知っていて、初めて同調技を使用できる。

「もしかしなくても、カケルに同調技を教えたのは、僕か」

 正月明けの実習で、仮のパートナーを組んだことを思い出す。
 窮地でロンドはうっかりカケルに同調技を使わせてしまったのだ。学習能力が高いカケルは、その一回で同調技を使う感覚についてマスターしてしまったらしい。

「なら、責任を取って僕が何とかしなきゃな」

 別に同調技は魔力レベルAの竜の専売特許ではない。
 魔力が低い竜でも、竜騎士と相性が良ければ、契約していなくても同調技を使える。

『よーし、やるか!』
「行くぞステファン。今度は僕らの番だ」

 ロンドは頭の中で作戦を固めながらステファンに呼びかける。
 日頃から空戦科でパートナーを組んでいるステファンは、ロンドの思考や性格を理解している。すぐに彼はロンドの意志を汲み取って、藍色の翼を広げた。

「クリストル先輩! 攻撃を仕掛けます。援護をお願いできますか?」
「……! 了解した」

 雨雲を吹き飛ばされて戸惑っていたルルキスとクリストルだが、ロンドの呼び掛けに頷いた。二頭の竜は螺旋を描きながら降下し、上昇するセファンとカケルに正面から相対する。
 火竜のセファンは雨が止んで持ち直したらしい。オレンジ色の鱗から火の粉を撒き散らしながら身軽に飛翔している。彼は伊達に魔力レベルAの火竜ではない。こちらが有利な水属性と言っても、その強力な火力は油断できない。
 セファンを立ち直らせたのは蒼い風竜。
 戦いの鍵を握るのは風竜のカケルの方だ。
 風竜は単体では攻撃力が低く、大して脅威ではない。しかし団体戦になるとその真髄を発揮する。支援に向いた特性を持つ風竜が味方にいるのといないのとでは、結果が変わってくる。

「……だから狙うなら、風竜だ。先に落とさないと」

 身軽な風竜に攻撃を当てられるかという問題はあるが、今回はタッグ戦だ。
 カケル、お前はセファン先輩の支援が出来ると踏んだんだろうが、タッグを組んで有利になるのはこちらも同じなんだ。
 水竜が二頭で連携して戦えば、同じ属性なので相乗効果を期待できる。

 ロンドは竜に伝わるように強い感情を保ちながら意識的に同調のトリガーを引く。竜騎士の戦意を感じ取った水竜ステファンは吠えた。
 藍色の竜は風竜に向かって降下しながら水属性の魔力を集中させる。


 攻撃用の特殊同調技、五月驟雨サミダレ


 細かい無数の水滴が針のように尖り、水竜の周囲でダイヤモンドのような煌めきを放つ。降下しながらステファンは水の針を発射するタイミングを計っている。

『させるかっ!』

 こちらの意図に気付いた火竜セファンは、ロンド逹に向かって炎を吐こうとする。

『君の相手は私よ!』

 銀色の竜が長い尾を鞭のようにしならせて火竜に襲い掛かる。
 セファンは仕方なくルルキスの相手をする。
 絡み合う火竜と水竜。
 援護をしようとしているのか、風竜は近い距離を旋回している。

光盾イージス!!」

 ロンドはタイミングを計って防御用の結界を張る。
 自分を守るためではない。
 設置型の呪術を併用して、遠く離れた場所を飛行する蒼い竜を囲むように結界を張った。結界はこちらの攻撃を通すように天井の一部をあえて解放している。

『……しまったっ』

 結界に囲まれた数瞬、判断に迷って蒼い竜は立ち往生した。

「今だ、ステファンっ!」
『くらえ!』

 水滴の針が蒼い竜へと降り注ぐ。
 逃げ場を失った蒼い竜はまともに被弾する。
 いくらかは風で防がれたようだが、結界の内部で跳ね返った攻撃に被弾したらしく、翼に傷が付いている。これで動きは鈍るので、風竜といえど攻撃を当てやすくなった。
 模擬戦のルールに従ってインクの入ったボールを投げようとする。
 ロンドは防御を解いて、蒼い竜に注意を集中していた。

『ロンド!』
流星炎メテオ!!」

 その一瞬の隙を、経験豊富な上級生は見逃さなかったらしい。
 火竜の背に膝立ちになったイリアが両腕を広げて、呪術による攻撃を投下する。
 防御が間に合わず、頭上に光の球が降り注ぐ。
 その中には当然インクの入ったボールも含まれていた。
 インクを被った学生服を見下ろしてロンドはうんざりした。空戦の度に汚れる服を洗濯するのは面倒だ。

『あーあ、一番最初に退場か。かっちょ悪い』
『ステファン先輩、痛いですよ~。俺もう飛べません』

 傷付いた翼で緩やかに蒼い竜が上昇してくる。
 カケルはぶちぶち文句を言いながら、ステファンの隣に並んだ。
 どうやらもう戦闘は諦めたようだ。

『……後は俺達の戦いだ、ルルキス!』
『そこで見てなさい、ロンド』

 上空で火竜セファンと水竜ルルキスが激しくぶつかり合う。
 ロンドは溜め息を吐くと、上級生達の戦いを見届けるため、手をかざして陽光に目を細めながら上空を見上げた。


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