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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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09 その進路を選んだ理由

 空を舞う竜達の戦いにも区切りが付いたらしい。
 冬寮の生徒達は悔しそうな顔をして撤退を始めた。
 撤退を始める生徒達の中、ハノイとスルトだけは動かない。
 臨戦態勢で睨み合う二人。
 後ろからおずおずと冬寮の生徒がハノイに声を掛ける。

「おいハノイ、撤退しろってさ」
「ちょっと待ておかしいだろ!」
「ハノイ?」
「アーウィンは怪我を負ったんだぞ。なんで皆無視するんだ」

 ハノイの指摘に周囲の生徒達が困った顔をする。
 冬寮の生徒達の視線の先には、素知らぬ顔で剣に付いた血を拭うオルタナの姿があった。怪我を負ったアーウィンという5年生は立ち上がって、自分で止血をしている。

「ハノイ、お前は人間だから分からないかもしれないけど、獣人の傷はすぐ塞がるんだ。アーウィンさんは大丈夫だから、早く撤退しよう」

 そう仲間に説得されたハノイは納得できない顔をした。
 その瞳に宿る暗く澱んだ何かを見て、スルトは眉をしかめる。
 こいつは何がそんなに気に入らないんだ。

「皆そいつが悪いんだ。先生に言って、そのソレルとかいう奴を退場させて……」
「ハノイ!」

 続く言葉を遮ったのは話題の張本人であるアーウィンだった。
 彼は脇腹に血を滲ませていたが、足取りも口調もしっかりしている。

「それ以上言うな。こんな傷くらいで騒ぎ立てたら俺の恥だ。……ソレル、覚えていろよ」
「ああ」

 面倒くさそうに頷くオルタナを悔しそうに睨むと、冬寮の5年生はくるりと身を翻した。他の生徒達も後に続く。
 ハノイは納得していない表情だったが、ここでごねても仕方ないと悟ったらしい。彼等に続いて歩き去った。
 去っていく冬寮の生徒達と入れ替わりに、空から降りて竜から人間の姿に戻ったカケルが近寄ってくる。

「お疲れ様ー」
「そっちもな」

 剣を収めたオルタナはカケルと軽くねぎらいあう。
 それを眺めながらスルトも自分の武器を畳んで腰の後ろに戻した。
 和気あいあいとオルタナと話していたカケルがこちらを振り返って言う。

「スルト先輩、なんか絡まれてましたね」
「ん、ああ」

 話を振られたスルトは戸惑った。

「先輩は、ハノイ先輩が陸戦科を選んだ理由を知ってますか?」
「は?」
「お節介だとは思うんですが、あの先輩の報われなさが何となく気になるので。あ、心当たり無かったら、今俺の言ったことは忘れて下さい」

 いきなり訳の分からないことを言うカケル。
 眉根を寄せていると、脇からオルタナが口を出す。

「おいカケル、お前どこまで知ってるんだ」
「えーまあ色々と……」

 視線を逸らして気まずそうに頬をかく後輩を見て、スルトは何の話か理解した。自分とハノイの話だ。どうやら後輩達は自分のことを心配してくれているらしい。

「余計なことすんなよ」
「ですよね~」

 言外にそれ以上首を突っ込むなと言うと、カケルはふわふわ笑った。
 彼はスルトを通り過ぎると、後ろで防御用の結界を張り続けていた研究科4年生のウィルに声を掛ける。

「先輩~、終わりましたよ~」
「何だと?!そういうことは早く言ってくれ。ふう……」

 ウィルは白衣の裾で汗を拭う。
 ずっと結界を張っていた彼のチームの面々も緊張を解いて地面に座り込んだ。

「さーて、セファン先輩達が帰ってくるまでお昼寝をば…」
「却下よ。食糧や雑貨の運び込みを手伝わなきゃ」
「働きたくなーい!」

 ぶうぶう文句を言うカケルはイヴに耳を引っ張られて仕方なく動き始める。
 やがてセファン達が旗を持って帰ってきた。
 春寮と秋寮の、2本の旗が夏寮の陣地に集まる。
 セファン達は春寮の旗を奪った帰りに、秋寮の旗も持って帰ってきたのだ。
 防衛しやすいように夏寮の陣地一ヶ所に集中して旗を置く。
 警戒したのか、先ほどの一連の戦いで消耗したのか、もうその日は冬寮の生徒達は攻撃をかけてこなかった。





 夕暮れになると夏寮の生徒達は薪を集めて、その場で簡単なキャンプファイヤーを催した。野菜や肉を焼いてバーベキューのような雰囲気になる。
 焼き肉を頬張りながら、スルトは食事に集中していなかった。昼間のカケルの言葉が気になる。
 陸戦科を選んだ理由?
 それが、ハノイが俺にやたら絡んでくるのと何か関係あるのか。

「……なあ、ソレル」
「何っすか」

 ちょうど側にオルタナが来たので、聞いてみる。

「お前なんで陸戦科を志望してんだ?」

 焼き肉を積み上げた紙の皿を持ったオルタナは、突然の問いに訝しそうな顔をした。
 後輩はスルトの隣で切り株に腰掛けて確保した肉をつつき始める。

「そりゃ、俺は陸戦科以外、他の科目には興味ないからですよ」
「ふーん。まあ俺も同じだけどな」

 獣人は空戦科には入れない。
 残るは研究科か生産科だが、どちらも大人しく机に向かって勉強する学科だ。常に身体を動かしたい獣人には向いていない。
 結果、陸戦科は9割がた獣人が占めている。

「あいつ……人間だよな」

 今更ながらハノイが人間だということに気付く。
 人間なら他の学科も選び放題なのに、何故あいつは陸戦科を選んだのだろう。





 誰かが追加した謎の胡瓜のような野菜の輪切りを、カケルは火にくべた。
 一口食べてまずかったからだ。

「野菜も食べなさいよ」

 こっそり捨てたのに、イヴに見つかって怒られる。
 そんな事を言われても竜は肉食なんだよ。
 獣人と一緒で野菜より肉が食べたい。
 エヘヘと笑って誤魔化そうとしていると、イヴは野菜を盛った皿を片手にカケルの隣に座った。しまったこれは野菜を食べさせられる流れか。

「さっきの話だけど」
「何の話?」
「ハノイ先輩とスルトのことで、貴方が言ったのはどういう意味なの」

 イヴの話は野菜ではなく、昼間のやり取りについてだった。
 彼女は食糧を手にその場に踏ん張る構えだ。
 どうやら答えを聞くまで動かないつもりらしい。
 カケルは苦笑いした。

「んー。ハノイ先輩と俺は似てるんだよね」
「似てる?どこが」
「俺は呪術師になりたくても、なれなかったから」

 核心を避けてそれだけを告げる。
 イヴが目を見開いてカケルを見つめた。

「それって」
「まあ、詳しいことはまたおいおい……」

 カケルは彼女から視線を逸らして夜空を見上げる。
 エファランの空は故郷のアオイデの空より広く、星が多いように感じられた。

イヴ「それはそれとして……野菜食べなさい」
カケル「ギクッ」
イヴ「ほら、特別大サービスで食べさせてあげるわよ(暗黒の笑み)」
カケル「(野菜が乗ったフォークを差し出されて震える)ううう……パク。たいへんおいしゅうございます……」
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