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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.01 君に出会った時から俺の(昼寝)人生設計が崩れ始めた

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08 敵地への潜入

 作戦会議の後、獣人のオルタナとラウン青年は、水源を経由してキャンプ地に潜入しようとしていた。

 暗闇の中で川に潜るなど、通常は自殺行為だ。
 だが、夜目がきく2人は恐れることなく水に飛び込んだ。暗い闇の中、冷たい水を掻き分けてラウン青年が先行する。オルタナは目を凝らしてその後を追った。

 複雑な水路を右に、左に曲がり、10分程度泳ぎ続けた後、水面に浮上する。
 月明かりの下に白い帆布のテントが見えた。
 想定通りここはキャンプ地の裏手の川辺のようだ。

「案内ご苦労さん。お前は戻って弟君の傍にいてやれ」

 唇を動かしてなるべく音を出さず、吐息だけでオルタナは青年に伝える。聴覚が鋭い獣人の青年は吐息だけの声を漏らすことなく聞きとり、心配そうな顔をした。

「一人で、武器も持たずに、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、アテがある」

 顎をしゃくって行けと合図すると、ラウン青年は戸惑いつつも頷いて引き返していった。
 オルタナはなるべく音を立てないようにして、岸にはい上がる。中腰で木々の陰にしゃがみこむと、夜の空気を吸い込んだ。

「やっぱり、スルト先輩の匂いだ。ってことは先輩のことだから…」

 ロンドから、同じ4年生の陸戦科のスルトが引率に駆り出されて来ていると聞いて、オルタナは彼を利用しようと思い付いていた。スルトとオルタナは旧知の仲だ。
 スルトはオルタナと同じく獣人で、陸戦科の優等生だ。しかし、見た目が女顔の童顔のせいで、腕っ節が強いと思われない、損なのか得なのか分からない特徴を持っている。

 空中に混じる複数の匂いを判別しながら、オルタナは立ち並ぶテントに忍び込んだ。
 スルトの残り香を辿って、彼が荷物を置いたであろうテントを見つける。中に入って、スルトの荷物の底を探った。

「武器発見っと。スルト先輩、何の演習をするつもりだったんだか」

 先輩が荷物の底に隠したのであろう、肉厚のナイフを2本取りだし、オルタナは苦笑する。更にナイフの下に小型の銃まで見つけて顔を引き攣らせた。
 前から光り物が好きな危ない人だと思っていたが、予想以上の筋金入りだったらしい。
 とは言え、この状況では好都合だ。

 鼻歌交じりに武器を確かめると、テントの陰を伝って移動する。
 仲間からの合図を待って、作戦開始だ。




 獣人ほど夜目がきかない人間のイヴとカケルは、夜の森を暗視の術式をかけて進んでいた。
 明かりを出せば敵に気付かれる。呪術で視覚を強化しているが、月明かりの助けがなければ歩くことも難しい。

 2人はキャンプ地に設置型の術式を置いた敵の術者を探していた。
 イヴは、探知サーチの術式をなるべく広範囲に広げて精査する。敵の術者の索敵の方が広ければ、先に気付かれてしまう。これは一種の賭けだった。
 彼女の肩ではミカヅキが足踏みしていた。複数の術式を同時実行するのに張り切っているらしい。

 やがて、地図の端に光点を見つけて、イヴは足を止めた。
 その様子にカケルも敵を見つけたことを知る。

「じゃ、行ってくる」
「ええ」

 まるでピクニックに行くような気安さでカケルが笑って、イヴを残して一人で足を進めた。
 ここからは、敵の索敵範囲に入る。
 見つかるのを承知で、カケルは一直線に走った。

 木々の向こうに戸惑う敵の術者と、護衛らしき銃を構えた男の姿が浮かび上がる。
 男が撃った銃の弾はカケルを直撃するが、予めイヴが仕掛けた守護シールドの術式に当たって散った。守護シールドは永続的な効果はない。銃弾を防げるのは数分だけだ。

「ちっ!」

 護衛の男は、突っ込んでくるカケルの行動を疑問に思ったが、カケルにかけられた守護シールドの術式に、後方に呪術師が控えていると看破した。

 この小僧は囮だ。先に呪術師を倒さないと。
 男は銃を構えてカケルの後方へ発砲しながら走り出した。

 一方、敵の呪術師は、キャンプ地に張っている設置型の術式と、広範囲に渡る通信妨害の術式で、処理が手一杯の状態だった。新たに攻撃の術式を実行する余力はない。
 複数人からの襲撃だと気付いた時点で、敵の呪術師はキャンプ地にいる仲間と合流する行動を選択した。そこはキャンプ地に近い森の中で、いざとなればすぐ仲間と合流出来る。
 敵の呪術師は、 残り僅かな魔力を使って防御の術式を組むと、向かってくるカケルは無視してキャンプ地の方へ走り出した。

 敵の片方が逃げ出したのを確認したカケルは、Uターンして、護衛の男に体当たりしに行く。
 捨て身の戦法に、護衛の男は顔をしかめて、カケルを迎え撃つ。
 もみ合う二人の間に、闇夜を裂いて閃光が走った。

雷撃ライジング!」

 カケルに当たるすれすれで、イヴの攻撃は敵の男に命中した。敵の男も防御の術式を張っていたようだが、雷撃ライジングは防御の術式を破壊する。
 パリンと硝子の割れるような音と共に、防御の術式は砕け散った。

 イヴは攻撃の術式に重点を置く呪術師だ。
 呪術師は、それぞれ能力に個人差があり、得意分野が異なっている。
 攻撃の術式を得意とするイヴのような呪術師は、今回の敵の呪術師のように、設置型の術式を広範囲に展開するのは苦手だ。逆に、広範囲に設置型の術式を展開出来る呪術師は、大概は攻撃の術式が不得手である。
 呪術師としての、タイプの違いが術式の威力に表れていた。

 護衛の男はカケルを引きはがして地面にたたき付けると、イヴに向かって銃を構える。
 だが、イヴの攻撃の方が速い。

紅光弾ルビーショット!」

 連続して放たれた複数の紅い光の矢は、敵の男の胴体と腕にそれぞれ突き刺さる。
 敵の男はごぼりと血を吐きながらその場に崩れ落ちた。

「いってて」

 地面にたたき付けられていたカケルは、打ち身をさすりながら立ち上がった。

「痣になってるよー。この位置だと、横向きに寝たときに痛いじゃないか」
「無事そうで何よりだわ」

 周囲に敵がいないことを確認して、イヴは術式の展開を解いた。
 空中の光の弓が消える。

「さあ、次の場所まで移動するわよ」
「ちょ、ちょっと待って、足が痛いんだって」

 ぶつくさ言うカケルは、それでもイヴの後を追って歩き出す。
 二人は足早に崖を登っていった。


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