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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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08 信頼

 空の上で戦っていたロンドは地上の異変に気付いた。
 優勢だったはずの自軍への風向きが変わりかけている。
 依然、低空飛行を続けるカケルが夏寮の旗の上空を旋回すると、芳しくない状況は明白になった。カケルが風を操って地上の冬寮の面々を吹き飛ばしたのだ。

「途中で外から割り込み攻撃するのは減点の対象だぞ…」
『下のあいつらが試合形式で戦ってると思うか?』
「試合にしなかったのか」
『決闘に応じるより、乱戦に持ち込んで旗を奪った方が高得点だろ』

 ステファンの指摘にロンドは顔をしかめた。
 教師に審判をしてもらっての試合形式にしない場合、例えば乱戦や不意打ちは、採点の対象にならず、重傷者が出ない場合は単なる喧嘩として片付けられる。
 寮対抗戦で旗が絡むのだから、きちんとルールを決めないと死傷者が出るのだが、厳密なルールや罰則は定められておらず毎年怪我人が出ている。
 だが、戦いに参加するのは陸戦科や空戦科の生徒ばかりだ。
 彼等は軍人の卵で、将来的には命を掛けた戦いに身を投じる。
 そのため陸戦科や空戦科では、多少の怪我は無視される文化があった。

『5年生のアーウィンは夏寮のソレルにやられたみたいだぜ』
「そうか」

 アーウィンには地上の戦いの指揮を依頼していたのだ。
 その彼が倒されたということは。
 ロンドは斜め下を飛ぶ蒼い竜の姿を見た。

「まさかここまで、計算の上だったのか」

 低空を飛び始めた時は何を考えているのかと思った。空戦では、上を飛ぶ竜が優位なのだ。あえて下を飛ぶのだから罠を仕掛けているのかと思ったが。
 カケルの目的は地上の戦いを援護することだったのだ。
 地上に残してきた冬寮の人数が多いので、よもや負けることはないだろうと油断してしまっていた。相手も同じように空戦に集中しているだろうと、思い込んでいたのだ。
 しかし、相手は自分より大局を見て勝負を掛けてきている。
 ロンドは胸の高揚を感じて密かに口角を上げた。
 ……たまらないな。

「ステファン、この空戦は中断しよう」
『おい、このままじゃボロ負けだろう?!』
「悔しいがカケルの奴が一枚上だ。おそらくこのまま低空で戦うと、アラクサラの用意した罠に突っ込むことになる」
『……』
「ステファン、お前の攻撃はさっきから一回も相手にかすってさえいない。相手は速度の落ちる低空を飛んでいるにも関わらず。この意味が分かるか」

 蒼い竜の飛行には余裕がある。
 いくらでも攻撃を避けて時間を稼げるという余裕が。

『くそうっ!』

 水竜は、下降する蒼い竜を追うのを止めて、その場でホバリングした。
 折しもちょうどその時、ロンドに呪術による通信で連絡が入る。

「イーニーク、こちらクリストルだ。春寮の旗が奪われそうになってる。急いで援護に向かってくれ」

 冬寮の副寮長、クリストルの声は切迫していた。
 すぐに了承の意志を伝えて通信を切る。

「行くぞステファン!下の連中には撤退を指示してくれ」
『了解だぜ』

 竜は広範囲に念話を飛ばせる。
 その能力を使って指示を転送するようにステファンに頼みながら、ロンドは竜に回頭を促した。
 やってくれたなカケル。この借りはいつか返すぞ。





 空戦を切り上げて去っていく水竜を、カケルは低空で旋回しながら見送った。

『枕投げしたかったのにー』
「あの役に立たない新技を続けるつもりだった訳?」
『イヴも罠を使いたかったでしょ』
「あんたと違ってこだわってないわよ」

 ロンドが推測していた通り、カケルの目論見には地上のオルタナ達を援護する目的も入っていた。いくら彼等が強いと言っても、多勢に無勢だったのだ。気にならないと言ったら嘘になる。
 ただあからさまに地上に近付くとロンドに気付かれてしまうので、援護をするのはタイミングを見計らわなければならなかった。
 空戦に集中していると見せ掛けながら地上の様子を観察し、地上の冬寮の生徒達も敵はオルタナとスルトだけだと油断した瞬間を狙って、突風を吹かせたのだ。
 狙い通りの展開となったが、いちはやく不利を悟ったロンドは素早く撤退してくれた。惜しいな。もう少し戦いを引っ張れたらイヴの罠が炸裂して、空戦も勝利できていたのに。さすがロンド兄。そうそう俺の思惑に嵌まってくれないか。

 カケルは空戦は終わったとみて地上に降りようと滑空を始めた。

「……アステル先輩?春寮の旗を奪ったんですか。おめでとうございます」

 背中でイヴが通信の呪術で会話している。
 どうやら向こうも上手くいったようだ。

 今回、カケルも口出しして立てた夏寮の作戦はこうだ。

 自軍の旗の防衛はカケルのチームに任せ、寮長のセファンや火竜デュオのチームは動ける夏寮の生徒全員で春寮の旗を奪いにいく。
 厄介な敵であるルルキスとクリストル、ステファンとロンドの注意はなるべく逸らせてその隙に春寮の旗を奪取する。
 夏寮の旗は囮として立てた。わざと何時頃に旗を立てるか、敵に分かりやすく動いてアピールする。そうすれば好機と見た冬寮は、ステファンとロンドを差し向けて来るだろう。そして、自軍を守るためにルルキスとクリストルは冬寮の陣地に留まる。
 秋寮には、夕暮れぎりぎりの時間に旗を立てるようにお願いした。旗を立てた瞬間から攻撃可能になるルールなので、逆を言えば旗を立てなければ攻撃できない。

 この作戦の要はカケル達だ。
 自軍の夏寮の旗を防衛出来なければ、春寮と旗を取り替えるだけで終わる。また、春寮の旗の奪取が叶わなければ一気に夏寮は敗北に近くなるのだ。

 少人数で大人数を迎え撃つこの作戦、普通は3年生のチームに任せるような役目ではない。だが、寮長のセファンは笑って一言。

「任せたぞ、サーフェス」

 信頼される、ということが心地よいものだと初めて知った気がした。
 何となく浮かれた気分で羽ばたいていると、イヴが水を差すようなことを言う。

「……妙にやる気で上機嫌ね。言っとくけど優勝したって、あんたと夜二人きりになるつもりは無いわよ」

 えっ。最近何だか良い雰囲気だから、ちょっと踏み込んでも良いかなあと思ってたのに。

「駄目……?」

 カケルは首を回して金色の瞳をウルウルさせてイヴを見つめる。
 蒼い竜の丸い瞳に見つめられた背中のイヴは動揺した。魔力レベルの高い竜は乗っている人間の考えていることが読み取れる。彼女は「男の癖に竜の姿でそういう目をすると可愛いって何なの!あざといわね!」と思っている。
 これは押してみたらいけるかも?

「だっ、駄目よ!」
「ほんとに駄目ー?」
「本当に本気よ!」

 くだらないことを言い合いながらカケル達は地上に降りていった。



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