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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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06 空戦(vs.水竜ステファン)

 ロンドは、竜の姿になったステファンの背にひらりと跨がる。
 竜の背中に登るのは結構な運動だ。空戦科の呪術師は運動不足だと話にならない。竜騎士は竜に乗って長時間戦闘するため、それなりの体力と武力が求められる。眼鏡を掛けた温厚なお兄さんに見えるロンドも、実は結構な武闘派なのだ。

 カケルは内心この状況を結構楽しんでいた。

 兄貴分のロンドには大分お世話になったが、だからといって模擬戦で手を抜くなど考えられない。お昼寝大好きなカケルにもそれなりに、竜としてのプライドや闘争心がある。

「カケル」

 ストロベリーブロンドの髪を軽く紐で纏めながら、イヴが目で促してくる。
 周囲の人を踏み潰さないよう距離を測りながら、カケルは竜に変身した。
 軽く念じるだけで身体の感覚が切り替わる。何度体験しても不思議な、とても言葉で説明できない感覚だ。唐突に目線の高さが低い木々の天辺と同じになって、自分が竜の姿になった事を確認する。本能で風を操って、自分の周囲の空間を立体的に把握した。
 見下ろすの自分の手足の青色の鱗が見える。カケルは、傍らに立っているイヴの姿を認めて、自分の竜騎士が背中に乗りやすいよう束の間、腹這いになって首を下げる。
 前脚を階段にして彼女が背中に登って翼の間の窪みに座った。
 背中から彼女の温もりが伝わってくる。

 やっぱり違うな。
 この心臓に火がつくような感じ。

 他の人が背中に乗ってもこんな風には感じない。
 浮き立つ気持ちのままに背中の翼を広げて立ち上がり、数歩助走して風を掴むと一気に上昇する。
 カケルはこの飛び立つ瞬間が一番好きだ。重力から解き放たれて浮遊するとき、自分は竜になったのだと、あらゆる煩わしいものから自由になった事を実感できる。

「ロンド先輩の得意な爆破の術は設置型だから、普通は空戦で使えないわね。そもそも先輩は補助・防御のタイプだから、攻撃は水竜のステファン先輩に任せて、防御に専念するのかしら……」
『ロンド兄の防御は堅いよー。意表を突かなきゃ、一撃入れるのは難しいだろうね』

 こうやってイヴと作戦会議するのも楽しい。
 頭の良い彼女は、カケルの言葉から多くのことを瞬時に読み取って反応してくれる。

「意表を突く……」
『水竜の先輩は雲に入ると強そうだね。下で戦ってみる?それでもって、今日は俺が新技を披露してイヴは防御する』
「新技?面白そうね」
『よーし、枕投げするぞ~』
「枕投げ?」

 カケルはウキウキしながら低い位置を旋回し始めた。
 イヴが苦笑して竜の首筋を軽く叩く。彼女が怒っていないことは、伝わってくる感情から読み取れている。カケルは好きに飛ぶことにした。





 上空で旋回するステファンは蒼い竜の飛行を観察している。

『あの後輩、下を飛び始めたぞ。馬鹿じゃないのか』
「……カケルは阿呆だが、頭は悪くない。何か考えがあるんだろう」

 ロンドは油断せずに蒼い竜の行動を冷静に眺める。
 長い付き合いでカケルの事を多少なりとも知っている彼は、カケルを侮ってはいなかった。

『どうする?』
「いつも通りだ。攻撃を開始してくれ、ステファン」
『オーケーオーケー!』

 水竜は首を振ると、水滴が集まって彼の前の上空で球体になる。
 拳大の水の塊をそのまま斜め下を飛ぶ蒼い竜へ向かって叩きつけた。この攻撃は地味だが、実はあの氷の女王ルルキスよりも攻撃力が高い。同じ体積の氷と水では、水の方が重い分、威力が出るのだ。

 ステファンが本気で放つ水の弾丸は、当たれば竜の身体も貫通しかねない。
 空戦は危険極まりないが、竜に関してはどんな傷でも人間に戻りさえすればほぼ完治する。竜の上に乗っている人間の呪術師が、一番リスクを負っている。そのため竜騎士を目指す生徒には、致命傷でも完治する術式を込めたアイテムが配布されていた。便利なアイテムのように聞こえるが、扱いが難しく量産できない貴重なものだ。

 重力の援護も得てかなりのスピードで飛ぶ水の弾丸を、蒼い竜は軽やかに避けてみせる。続けて放つ水弾も、ひょいひょいと避けられる。

『くうっ、やっぱ風竜は伊達じゃねえってか!当たらねえぜ!』

 ステファンは悔しがる。
 当たったら一撃で戦闘不能になる攻撃だ。空戦ではインクの入ったボールを投げ合うが、怪我をして片方が戦闘不能になった場合は試合中断となる。致命傷だった場合は試合自体なかったことになるが、軽傷の場合は戦闘不能に追い込んだ方が勝ちだ。ステファンが学内ランキング上位の理由は、この強力な水弾によって相手を飛行不能にできる事による。

「接近しないと当たらないか……」
『高度を下げるぜ』
「誘い込まれてる気もするが、仕方ないな」

 水竜は、低空を飛ぶ蒼い竜を追って降下し始めた。





 カケルは大きく旋回しながら、それとなく高度を下げていく。
 時折降ってくる水の弾は避けるか、風で軌道を逸らした。
 水竜ステファンは攻撃が当たらないので、距離を詰めるため、カケルを追って低空飛行に移行している。しめしめ。

「下に設置型の術式を仕掛けたいから、もう少し低く飛んで」
『あんまり低く飛ぶと速度を出せなくなって攻撃当たっちゃうよー』
「根性で避けなさいよ」
『えー』

 イヴは罠を設置するつもりらしい。
 彼女の望み通りに出来るだけ低く飛ぶ。
 もう数十メートル下がると青々とした森の木々に翼が触れそうだ。

『おっと』

 ステファンの放った水の弾が近くをかすめる。速度を落としたので当たりやすくなっているのだ。危ない危ない。
 カケルは首を上げて水竜を見上げると、鼻先に風を集めて撃った。
 お返しだ!

 ぽよん。

 攻撃力の低い風竜が放った風の弾丸は、上空へ飛ぶ内に減速して力を失い、ほんわりとした空気の塊になった。それは水竜の翼に当たってぷわわんと弾けて消えた。

「今の何……?」
『新技。枕投げだよーん』

 当たっても痛くないように優しい気持ちをいっぱい込めました!
 んん……なんか微妙な雰囲気。やっぱり駄目?


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