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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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05 寮対抗戦の初日

 寮対抗戦が行われる3日間は、学校は休校になる。

「お昼寝出来ていいよねー」

 カケルは眉を下げてウフフと笑った。
 どこまでも能天気な彼の後ろ頭を、パートナーの竜騎士であるイヴがバサッと叩く。

「ちょっとっ、あんた優勝目指すとかって言ってたのはどうなったの?!」
「それはそれ、これはこれ……ところでイヴ、そのハリセンどしたの」
「これはあんた専用に用意したの。阿呆な事言ったらビシバシいくわよ!」
「えー勘弁して~」

 ストロベリーブロンドの美少女は、厚紙を折って作られた武器を手に凄む。対するカケルは緊張感が全くない。
 このコントはいつまで続くんだ。

「カケル君チームが護衛で本当に大丈夫なのだろうか……」

 白衣を着た研究科4年生のウィルは心配そうに呟いた。
 ご心配もっとも。
 同行してるスルトも、後輩達の平和なじゃれあいの光景にうっかり和んでしまいそうになっている。そろそろ、任務を思い出さないと。

 スルトはカケルのチーム及び、ウィルのチーム、夏寮の担当の教師と一緒に学校の裏の森の中にいた。
 寮対抗戦の旗の設置のためだ。
 学校の裏に広がる広大な森に、それぞれ寮ごとに東西南北の決められた地点に旗を立てる。寮対抗戦の間の休憩所も兼ねて、小さな小屋が設置地点のすぐ側に用意されていた。3日間、状況によっては休憩所を拠点に交代で見張りしながら旗を守るのだ。
 初日に旗を設置し、設置した時点でゲームスタート。
 旗の設置直後に敵襲がある場合もあって気を抜けない。
 夏寮は旗の設置をウィルのチームに任せた。カケル達は護衛の役割を負っている。
 その他のチームは、戦闘が出来るチームはセファンと冬寮の攻撃に向かい、生産科の生徒が集まっているようなチームは食料の買い出しや情報収集をしている。カケルのチームの女子、リリーナも今回は後方支援でここにはいない。

 ここにいる生徒は、呪術師か獣人か竜のいずれかだ。それと、引率と審判のためくっ付いてきている夏寮の教師。
 夏寮の教師は背が低い小太りの男性だ。
 妙にふさふさした頭髪が頭の上に乗っているが、それがかつらだと言うことは生徒の間では周知の事実である。彼は生徒から親しみを込めて「ヅラ先生」と呼ばれている。本名は確か、フォルテ先生だっけか。

「ハア…まだかね」

 運動不足のヅラ先生は早くも汗をかいてヒイヒイ言っている。
 森の小道を歩いて小一時間。カケル達はピクニックに来たような様子だったが、ウィル達のチームは非戦闘科の生徒らしく、疲れた表情の者もいた。

「とうちゃーく」

 先頭でカケルがふわふわ笑う。
 前方は森の木々が途切れて広場になっていて、古びた小屋があった。

「ウィル先輩。旗を設置しながら光盾イージスをお願いします」
「任せておけ。光盾イージスだけは自信があるんだ」

 神妙に頼むイヴに、ウィルは胸を叩いて請け合う。
 彼は手に持った旗を広場の中心に設置しに向かった。
 ぞろぞろ続く研究科の生徒達を眺めながら、スルトは密かにいつでも動けるように体勢を整える。
 同じ獣人のオルタナも気配を感じているようだ。険しい表情で腰の鋼牙ファングを確かめながら、リーダーに声を掛ける。

「おい、カケル」
「分かってるよ。ひいふう……結構な数の待ち伏せだよ」

 風竜のカケルは風を使って状況を読んでいるらしい。
 囲まれていると悟りながらも、その表情に緊張の色はない。
 広場の中心でウィルは仲間と共に、旗を設置している。
 台座に突き立てながら彼は呪文コマンドを唱えた。

光盾イージス

 ウィルを中心に卵のように膨らんだ光の殻が現れる。
 彼が味方だと設定したチームの仲間と、旗を取り囲む形だ。
 旗を立てた途端に、小規模な爆発が起こる。
 地面が抉れて内側からはじけ、台座が傾く。
 しかし、光盾イージスに守られてウィル達に怪我はなく、旗本体に損傷はない。

「ふう。呪術を使っていなければ旗を折られていたな…」

 ウィルが汗を拭う。
 旗が使用不可の状態まで破損した場合は、破壊したチームの寮に得点が入る。奪った方が得点が大きいのだが、持ち歩くにも台座を壊して旗を引き出さなければならない。今回は爆発の位置から推測するに、台座から旗を外すのが目的だったようだ。

「……設置型の攻撃はロンド兄の得意技だよね~」

 森を見回してカケルがのんびり言った。
 木々の影から背の高い男子生徒が進み出て肯定する。

「正解だ」

 答えたのは、理知的な面差しの眼鏡を掛けた青年だ。
 彼は空戦科の4年生、ロンド・イーニーク。カケルとはご近所さんで顔見知りらしく、普段は面倒見の良いお兄さんに見える。しかし、敵に回せば侮ることのできない呪術師の1人だ。

「カケル、ここはお前達だけなのか」
「そうだよ。そっちは大人数だね」

 敵は気配を数えると15名以上いるようだ。
 3つ以上のチームで来ているらしい。

「昼寝大好きなお前には荷が重いんじゃないか。旗を渡してくれたら、ゆっくり休めるぞ」

 ロンドは無表情に眼鏡のフレームを指で引き上げる。
 淡々とした挑発に、カケルはふわふわと笑った。

「大丈夫だよ~、これ終わった後で寝るから。心配してくれてありがとう、ロンド兄」

 動じない切り返しにスルトは内心、カケルの評価を上方に修正した。
 知人友人が敵に回ると普通は遠慮してしまうものだが、ロンドもカケルもそう言った気配は微塵も感じられない。

「先生、俺とロンド兄は空戦します。地上はオルトとスルト先輩に任せますね。ウィル先輩のチームは交代で守護シールドを張ってて下さい」

 おっとりとしたカケルの指示には妙な力があった。
 まるで命令や指示を出し慣れているような。
 小太りの教師は重々しく頷いて「気を付けるんだぞ」と言った。ウィルも自分達のチームは防御しか出来ないと分かっているので「分かった」と了承の意を返す。

 一方のロンドもカケルの言った通り、空戦をするつもりのだようだ。
 彼は背後に声を掛ける。

「……いくぞ、ステファン」

 ロンドの後ろの木陰から、濃い水色の髪をした青年が姿を現した。

「後輩君が相手かあ。っても魔力レベルAの風竜だよね。俺、負けちゃうかも?」
「戦う前からフラグを立てるなよ…」
「じょーだんだよ!頑張るからそんな怒るなよロンド」

 カラカラと笑った青年の輪郭が歪む。
 光と共に藍色の鱗の竜が姿を現す。
 水竜らしく独特の光沢を持つ鱗に、長めの胴体。鋭い鈎爪の付いた手足には、うっすら水掻きの皮膜がある。特徴的なのは額の角だ。普通は二本あるところが、ステファンの場合は一本しか無く、長く鋭く尖っている。
 水晶のように透明な刺が付いた翼が左右に開かれる。
 天気は快晴なのに、雨粒が周辺に散った。
 ルルキス程ではないが、強い水属性の魔力が竜の身体から放出されている。

 水竜を背にロンドが宣言する。

「さあ、始めようか。カケル、お前が相手でも手加減は無しだ」


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