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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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04 宣戦布告

 昨夜、寮長のセファンは夏寮の各チームのリーダーを集めて、簡単な会議をしていたようだ。リーダーのカケルは、何故か枕を抱えてウキウキ出掛けていった。
 会議に枕が必要なのか。いや、絶対必要ない。
 いちいち突っ込むのも面倒くさいオルタナは、無言で枕を抱えて出て行くカケルを見送った。どうせ誰かが突っ込んでくれるだろう。

 カケルは愛すべき阿呆である。
 阿呆だからと言ってチームメイトの誰も「阿呆なカケルに任せられないから自分が代わりに会議に出る」と言わないのだから、愛すべきを付けて然るべきだ。
 どこまで計算でどこまで天然か分からないが、カケルはやるべき事はきちんとやる。その辺は自分もアラクサラも、カケルを信頼している。

 だから、次の夕食時にチームメイト全員が集まった時に、カケルが寮対抗戦の話を始めた時も、やっぱりこいつは根が真面目だなと思った。

「昨日、セファン先輩と話をしたよー。頑張って枕投げで優勝を狙うのだ!」
「枕投げ?」
「あ、間違えた。空戦だった」

 大丈夫かよ。
 食堂は混雑していて、誰もカケル達の話に注意を払っていない。
 並んで座るオルタナとカケルの後ろに、イヴとリリーナが座っていた。彼女達は椅子に斜めに座ってカケルを振り返る。
 若草色の髪をした優しげな容貌の女子生徒、リリーナが不思議そうな顔をした。

「カケル……どうしたの?貴方にしてはえらくやる気ね。いつも昼寝したいとか言ってるのに」

 その通りだ。こいつは昼寝を最優先にして授業をさぼるような性格である。
 優勝を狙うとか熱血な行為はらしくない。

「優勝したらセファン先輩に色々教えて貰うんだ!」

 カケルはやたら浮かれた様子で楽しそうに言った。

「色々?」

 何の話だ。怪訝に思っていると、険しい顔をしたイヴが席から腰を上げる。
 彼女は食事をのけたトレーを持ち上げて振り上げる。

 スパアーンッ!!

 小気味良い音を立ててトレーがカケルの頭にヒットした。

「痛い……」
「カケル、それ以上言ったら殴るわよ」

 もうトレーで殴ってんじゃねーか。

「うう、そんな恥ずかしがらなくても…嘘ですスイマセンもう言いません!」

 真顔でトレーをスイングしようとするイヴに、カケルは慌てて謝り倒している。
 ほんのり赤く染まった彼女の横顔を眺めて、オルタナはカケルの言う色々の内容が分かった気がした。これは突っ込まないのが吉だな。

「オルタナ」

 リリーナが囁いて身を寄せてくる。柔らかいボブの髪から芳香が漂ってきて、オルタナはドキリとした。

「…何だ?」
「スルト先輩の様子はどう?」
「なんでそんな事を聞くんだ」

 無意識に、他の男の事を聞かれたことにイラっとしたオルタナだが、すぐにリリーナがスルトに気がある訳がないと邪念を追い払う。

 オルタナはこの国エファランでは有名な軍人の家の生まれだ。代々猫系に変身する獣人が多い家系で、オルタナ自身は黄金の獅子の姿を持っている。
 獣人は竜と違い人間とパートナー契約をする事は少ないが、オルタナの生まれたソレルの家は例外だ。エファランの古くから続く獣人の家系のいくつかは、人間の貴族と主従契約を結んで専属の護衛の任に就く。
 リリーナは、ソレル家が代々契約を結んで護衛をしてきた一族の娘だ。立場的に、オルタナは彼女を守らなければならない。だが、彼女を守りたいと思う気持ちは、別に親に命令されたからとか、そういう理由とは関係ない。
 俺は、自分に正直に生きているつもりだ。

「スルト先輩と因縁のある先輩が、冬寮に帰ってきてるらしいの」

 情報通のリリーナの言葉に、オルタナは顔をしかめた。
 スルトが留年している理由について、全く知らない訳ではないが。

「……余計なお世話だろ」
「え?」
「あの人は自分で何とかするさ」

 不思議そうに小首を傾げるリリーナ。
 オルタナはぎゃいぎゃい騒ぐチームメイトの二人を放って、黙々と食事に戻った。
 女子には分からないだろうな。男にはプライドってものがあるんだよ。
 あの人は触れられたくないと思ってる筈だ。






 街灯の明かりに蛾が集まっている。
 もうそろそろ風がぬるんで、春が来ているせいだろうか。
 虫の行動が活発になっているようだ。

 早めに夕食を食べたスルトは寮の周辺をぶらぶら散歩していた。
 夜道は暗いが、獣人であるスルトにははっきり木々や建物の輪郭が見えている。

「……久しぶり」

 声を掛けられて立ち止まる。
 街灯の下に黒に近い焦げ茶色の髪をした青年が現れる。

「ハノイ……」

 約一年振りにあった旧友は、少し痩せたように見えた。
 あの頃と同じく困ったような笑みを口元に浮かべている。

「相変わらず独りなんだね」

 そう言ってくるハノイは嬉しがっているように見えた。
 だから、こいつは嫌いなんだ。
 答えずに無言を通すと、ハノイは勝手に話を続ける。

「君に会いたくて戻って来たんだ。夏寮に移ったんだって?一緒に戦えなくて残念だよ」

 俺は全然、残念じゃない。

「でもちょうど良いかもしれない。今回も冬寮は勝つだろうから。そしたら君も、皆で協力して戦う方が強いって分かるよ」
「……」
「またね」

 言いたい事だけ一方的に言って、ハノイは身を翻す。
 スルトはその後ろ姿を黙って見送った。



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