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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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03 枕投げがしたい

 夕食の後、カケルはいそいそと寮長セファンの部屋に向かった。
 枕を持って。

 学生が夜、部屋に集まって、やることと言ったら…。
 やっぱり枕投げで決まりでしょう!

「サーフェス……その枕は何だ」
「枕投げの枕です」

 大真面目に答えると寮長は頭を抱えた。
 なんで?ひょっとして枕の種類が違うの。
 ちゃんと投げても大丈夫なように、ペンギンさんの枕を持ってきたのになあ。ほら、ヒヨコさんとかイルカさんだと投げたり踏んだりしたら可哀相でしょ。

「カケル君、その枕は自作かい?」
「はい。可愛いでしょう」
「うむ、縫い目が美しい。良い仕事だね」
「ありがとうございます!」

 染みだらけの白衣を普段着の上から着込んだ上級生が、カケル自作の枕を興味深そうに眺めた。彼は変人揃いの研究科の4年生で、呪術学を専攻しているウィルヘルムだ。親しい友人達からはウィルと呼ばれている。自称「本のお尻かじり虫」で、本の末尾を先に読むのが好きという変わった趣味だ。
 ウィルは入寮以来、本に関するクイズで全問正解したカケルに興味を持って、積極的に話し掛けてきていた。

「おい、サーフェス。俺達が何のためにセファンの部屋に集まったか、分かってるのか」

 獣人には珍しく大人しい性格の陸戦科4年生、ルークが確認してくる。彼は獣人ばかりが集まるチームのリーダーだ。自室でシャワーを浴びてきたのか、長い鋼色の髪は湿っている。水も滴る良い男って奴か。

「分かってますよ。寮対抗戦の打ち合わせでしょう」
「分かってたら何で…」
「でも後で、枕投げもしますよね?」

 部屋の主であるセファン及び、夏寮の各チームのリーダーである男子生徒4人はカケルの言葉に遠い目をした。
 この狭い部屋に集まったのはセファンを除くと、先ほど枕について品評したウィルと、真面目な獣人のルーク、食堂でスルトと言い合いしていた火竜のデュオ、カケルと同級生のクリスの4人だ。

「先輩がた……カケルの奴はいつもこんな調子なんで、付き合ってたら話が進みませんよ」

 抹茶色の髪をしたクリスがおずおずと申し出る。クリスはカケルと同級生なので、カケルの破天荒具合はよく知っていた。ちなみにクリスのフルネームは、クリストファー・ハイライトと言う。名前は派手だが、彼自身は成績も平均点の地味な生徒だ。
 後輩の言葉に、寮長セファンは気を取り直したように咳払いする。

「ああー、ごほん。そうだな話を進めよう。まず、寮対抗戦は初めてのハイライトとサーフェスに、簡単に寮対抗戦について説明する。
 寮対抗戦は3日間の期間限定で、お互いの拠点に立てた旗を奪いあうゲームだ。4つの寮がそれぞれ自分の旗を一本、拠点に立てて防衛すると同時に、相手の拠点に進行して旗を奪う。全ての旗を取った寮が優勝だ」
「皆が旗を守ってしまったり、取った旗が同数だったらどうなるんですか?」
「その場合は、空戦および陸戦の獲得点数が高い方が勝つ。旗の争奪戦以外にも、教師の立ち会いの元、チーム戦や空戦の試合をして、勝った方に得点が加算されるルールなんだ」

 認められている試合の形式は3つ。
 竜と竜騎士が大空でインクの入ったボールをぶつけ合う空戦。
 鋼牙ファングを使える生徒が1対1で相手に参ったと言わせるまで戦う陸戦。
 そして、互いに合意できる条件を設定して集団でその条件をクリアするチーム戦。

「優勝するには、夏寮以外の3つの寮の旗を奪わなきゃいけないのか。大変ですね」
「いや…」

 クリスの呟きに寮長セファンが首を振る。

「ここ数年は同盟が流行してて、実質、冬寮と夏寮の対抗戦なんだ。春寮の寮長が冬寮のルルキスと仲良くてな。旗を冬寮に預けて共同戦線を張ってる。それで、俺達夏寮も秋寮と同盟して戦力を集中した。今年も同じ展開になるだろうな」

 つまり、冬寮&春寮、夏寮&秋寮の対抗戦になるってことか。
 カケルはぎゅっと枕を抱き締めた。ペンギンさんの胴体が細くなる。

「説明は終わり。ここからが本題だ。去年の対抗戦は、スルトが言っていた通り戦力不足が否めなかった。俺が攻撃に出れば、夏寮の守りが手薄になってしまう。そこをステファンやロンドに突かれたら対抗出来る奴がいなかった。けど今回は違う。風竜のサーフェスがいれば防衛出来るかもしれんし、逆に俺が守ってサーフェスに特攻させる策も有りだ。皆はどう思う?」

 寮長の言葉に、各チームのリーダーは顔を見合わせた。

「別にいいんじゃないか。寮長とサーフェスに目立って貰えば、俺は堂々と裏でこそこそ動ける」

 火竜のデュオが不敵に微笑んだ。
 デュオ先輩、堂々と、裏でこそこそって、矛盾してるよ。

「うちのチームは血の気が多い奴が多いから、攻撃に参加させてくれ」

 鋼色の髪を束ねながらルークが淡々と言った。
 この人は本当に真面目だなあ。

「戦闘は得意ではないので、寮長に全てお任せします。我々は雑用係で」

 研究科の生徒達の代表、ウィルは戦わない気満々だ。
 きっと生産科の生徒逹も同じ意見なのだろう。

「えっと、初めてでよく分からないので、僕達は防衛を手伝わせて頂ければ」

 同級生のクリスがもじもじしながら言った。
 上級生達に気後れしている様子だ。普通はこんな感じなんだろうな。カケルは自分の生まれ育ちが少し特殊だと分かっている。皆が皆、すぐ戦える訳じゃないのだ。

「よし、お前らの希望は分かった。じゃあその希望に沿ってどんな作戦が出来るか、後日個別に打ち合わせよう。今日はこれにて解散」

 それぞれの立ち位置を確認すると、セファンはあっさり解散しようと言った。
 随分と呆気ない。
 枕投げは?

「あー、サーフェスは残れ」
「枕投げですね!」
「違う」

 きっぱり否定されてカケルはがっくりした。
 うなだれて枕を抱え込むカケルを残して、他のチームリーダー達は自分の部屋に帰って行った。
 向かいあって座るセファンは、先ほどよりリラックスした様子で後輩を見つめる。

「サーフェス、さっきの話だが、お前は攻撃と防衛、どっちが良い?」

 聞かれて、カケルはペンギンさん枕から顔を上げてセファンを見た。
 その瞳に鋭い光が宿る。

「俺はどっちでも。でも、先輩はルルキス先輩に雪辱を晴らしたいんじゃないですか?」
「そうだな……」
「けど、先輩だけじゃルルキス先輩に勝てない」

 断言されて、セファンは苦い顔をした。
 悔しいがこの後輩の指摘は当たっている。

「俺と先輩が組めば、相手がルルキス先輩とステファン先輩でも、勝てますよ」
「!……サーフェス、それはタッグで空戦するということか?!」

 思わぬ強気な発言もそうだが、その言葉が意味しているところを悟ってセファンは驚いた。二体の竜と竜騎士がタッグを組んで戦うやり方は、最近、空軍で研究が始まったところだ。

「俺か先輩、それぞれで攻撃か防衛をすると、結局戦力が手薄になる。俺だけじゃルルキス先輩に突っ込んでも攪乱が関の山です」
「……」
「どうします、勝負に出てみますか?」

 カケルはペンギンさん枕の上で頬杖を付いて、笑った。


セファン「……枕、ちょっと触ってもいいか?」
カケル「どうぞ~」
セファン「……ふわふわだな」
カケル「ふわふわです!」

和む二人。
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