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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.09 仲間と共に挑む昇級をかけた寮対抗戦!

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02 仲裁します

 学年がバラバラな寮生が一同に会するのは、寮の食堂の夕食の時間だ。
 朝食や昼食はともかく、夕食は外食できないので必然的に寮生の全員が食堂に集まる。
 スルトは食堂の扉を開けて、空いている席が少ないのを確認すると、寮長セファンの近くの席へ向かった。寮長の近くは下級生は遠慮して座らないので空いている。
 トレーに載せて持ってきたパンをかじっていると、寮長のセファンが後ろを振り向いて話し掛けてきた。

「おいスルト、ちょっといいか」
「何だよ」

 セファンは明るいオレンジ色の髪をした青年で、空戦科5年生の火竜だ。戦務騎竜の学内ランキングでは2位だが、それを鼻に掛けない気さくで親切な性格をしている。
 何の用だと見返すと、彼は何故か心配そうな顔をしていた。

「冬寮に……」

 彼が喋りかけた時、ちょうど食堂の扉が開いて騒がしい下級生の一団が入って来た。

「カケル、あんたレポートくらい期日に提出しなさいよ。何故この私があんたのレポートを先生に持っていってあげなきゃいけないの!」
「ごめんよー」
「……飼い主の責任じゃねえの?」
「ソレル!私はこの馬鹿の飼い主になった覚えはないわよ」
「落ち着いて、イヴ。声が大きいわ。注目されてるわよ」

 最近、話題に事欠かない奴らの登場だ。
 3年生の首席を維持する、成績優秀な金髪の美少女イヴ・アラクサラ。その暫定パートナーとなっている風竜のカケル・サーフェス。魔力レベルAの竜だと認知されつつあり、間抜けな落第生だと見ていた周囲の目が変わってきている。
 イヴとカケルの後ろで、仏頂面で面倒臭そうにしている紅眼の青年はオルタナ・ソレル。由緒正しい陸軍の軍人の家の生まれで、学内の乱闘ランキングがあるなら上位に食い込む獣人の生徒だ。ソレルの隣でアラクサラを窘めている、大人しそうな緑の髪の女子生徒はリリーナ・アルフェ。情報通で様々な人脈を持っており、敵に回してはいけない女子の1人である。

「サーフェス、夏寮に戻ってきたのか。冬寮はどうだった?冷や飯食って来たか」
「お前、魔力レベルAだったんだって、マジかよ」

 夏寮の生徒達はカケルに声を掛けている。
 以前には見られなかった光景だ。
 数ヶ月前のキャンプの事件でのカケル達の活躍は、他の生徒達が知ることは少なかった。しかし、年明けのソルダートによる基地占領事件は有名で、その中でカケル達が重要な役割を果たしたことは耳聡い生徒なら感づいている。
 極めつけは先日のルルキスとの戦闘だ。勝ちはしなかったものの、学内ランキング1位の竜と善戦したことは、噂として広まっている。

「冬寮のご飯ですかあ。別に普通に美味しかったですよ」
「この裏切り者めっ」
「うがうが…先輩、首絞めないでえ」

 上級生の1人がカケルに絡んでいる。それを見て他の生徒が笑う。
 カケルはふわふわしているものの基本的に礼儀正しく、腰が低いので、セファンを含めて上級生は男女問わず彼を悪く思っていないようだった。

「サーフェスも魔力レベルAの竜なのか。夏寮には寮長のセファン先輩も含めて、魔力レベルAの竜が二人。今回の寮対抗戦は夏寮が優勝出来そうだな!」

 寮生の誰かがそう言って笑う。
 上級生に首を絞められていたカケルが目をパチパチして言った。

「あれ?なんで前回は負けちゃったんですか」

 しーん。
 途端に食堂が静まり返った。
 前回の寮対抗戦を知らない3年生の生徒は、上級生の様子に戸惑っている。
 後ろで様子を見ていた寮長セファンが沈黙を破って話し出した。

「……俺とルルキスは属性の相性が悪いんだ」
「火は水に弱いってことですか。倍以上の火で水を蒸発させちゃえば……」
「俺とルルキスの出力は互角なんだよ。互角なら火の方が不利だ」

 納得出来ない顔をしているカケル。
 スルトは横から口を出すことにした。

「前回の夏寮と冬寮の戦いは、セファンとルルキスの相性差もあったが、それよりも総合戦力的に夏寮が不利だったんだよ」

 そう言うと、寮生達の視線がこちらに集中する。
 カケルは首を絞める上級生をやんわり押しのけながら、先を促してきた。

「どういうことですか?」
「……夏寮はな、確かに魔力レベルAのセファンがいたけど、他はパッとする戦力がいなかったんだ。一方の冬寮は水竜ルルキスの他にも、結構できる奴らがいる。戦務騎竜の学内ランキング9位の水竜ステファン、補助タイプの癖に攻撃もこなして頭も良い三級戦務呪術師のロンド・イーニーク……」
「……」
「夏寮もデュオとか言う火竜がいたけど、こすい手はともかく正直に空戦したらステファンの下の下だからな…」
「何だと?!」

 ガタッと赤銅色の髪をした青年が立ち上がる。
 今、話題に上がった火竜のデュオだ。

「お前、自分は冬寮にいたからって好き放題に言いやがって!」
「ハッ、事実だろうが。図星を指されたからって怒るなよ、ナンパ竜」

 火花を散らすように睨み合うデュオとスルト。

「スルト、お前は一匹狼を気取って格好付けてるのがウザいんだよ。夏寮に協力する気がないなら出ていけ!」
「…言い過ぎだぞ、デュオ」

 寮長セファンが鋭くデュオを制する。
 しかしデュオの言葉で和やかだった食堂の均衡は崩れていた。
 あまり好意的でない視線が、スルトをちらちら掠める。

 ああ、やっぱりか。

 スルトは冷めた思考で食堂を見回した。
 どうせここでも俺は爪弾き者だ。なら言いたいことは言ってやる。
 決別の言葉を告げようと口を開き掛けたが、その前にほわほわした声が割り込んだ。

「俺も先日まで冬寮にいましたよー。ご飯美味しかったし、また遊びに行きたいなあ」
「サーフェス」
「デュオ先輩、スルト先輩は貴重な情報を提供してくれてるんですよ。夏寮に協力しないなら、わざわざ客観的な意見を言ったりしないんじゃないかなあ。だいたいスルト先輩は陸の戦力になります。出ていって貰っては困りますよ」

 ふわふわ笑うカケルに、デュオが剣呑な視線を向ける。

「スルトの味方をするのか」
「え、そう見えます?俺は結構デュオ先輩も尊敬してるんですけど。デュオ先輩って頭脳派ですよね。別に真正面から当たって砕けるだけが戦術じゃないと思います、俺も」

 持ち上げられてデュオは怒りを削がれたらしい。
 困惑した表情になった。
 寮長のセファンもデュオに向かって言う。

「デュオ、お前は別に実力が低い訳じゃない。同じ夏寮の仲間として、お前のことは信頼してる。派手に女の子の尻を追っかけ回すのを止めてくれたら、言うことなしだ」
「セファン、前半はともかく後半は…」
「ん?俺は何か不味いことを言ったか」

 聞いていた寮生達は苦笑した。
 デュオは今度こそ黙って席に座る。心なしかその横顔が和らいで口角が上がっている。セファンに「信頼してる」と言われて嬉しかったようだ。
 ちょろい奴だな。だが、人のことは言えない。
 横目でトレーを持って席に座るカケルの後ろ姿を眺める。先ほどの後輩のお節介は、余計な事をとも思ったが、一方で悪くないと思う気持ちもあった。

 食堂の雰囲気が元に戻ったのを見届けて、セファンが締めに寮生に向かって声掛けをする。

「ちょうど寮対抗戦の話になったことだし、寮対抗戦について後で打ち合わせよう。各チームのリーダーは男子なら俺の部屋、女子なら副寮長のイリアの部屋に集まってくれ」

 寮生達は「はい」や「了解です」などと返事して、それぞれ食事に戻っていった。
 スルトも食事に戻ろうとしたが、セファンの強い視線を受けて動作を止める。
 そう言えば、セファンとの話の途中だった。
 用件を言えと無言で訴える。セファンは声を潜めて低く呟いた。

「……スルト。冬寮にハノイが戻って来ている」

 それはまた、あいつと顔を合わせるってことか。
 何だって、今更。


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