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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.08 まだ途切れない。だから君は絆を手繰り寄せる

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10 空戦その2(vs.水竜ルルキス)

 こちら、空戦中のカケルです。
 状況?なかなかに苦戦しておりますがな。
 っと、ふざけてる場合じゃない。

「サーフェス…寮長は本気だぞ。どうする?」

 背中のヘンドリックが聞いてくる。
 彼はカケルより年上の男子生徒で、がっしりした体格に濃い灰色の髪と緑の瞳をした青年だ。今日は制服の下にセーターを着込んで膨れている。水竜ルルキスが冷気を操るのは周知の事実なので、予め対策してきたのだ。しかし、それでもなお寒いのか、彼は鼻水を垂らしてガタガタ震えていた。

 鼻水汚い。
 イヴより重い…。
 テンション上がらないよ。

 正直、カケルはこの空戦を少し甘く見ていたと認めざるえない。
 独りでも戦えると思っていた。パートナーの竜騎士によって自分は左右されないと、そう思っていたのに。現実はどうだ。めちゃくちゃ左右されてるじゃないか。

 彼女と一緒に飛ぶ時は心臓に火が灯ったように気持ちよく、軽やかに動ける。
 竜騎士の戦意は竜を奮い立たせる。

 しかし今カケルが感じているのは不安と落胆だ。
 ヘンドリックとはうまく同調できない。どうやら親しい相手でないと、駄目らしい。
 イヴと一緒ならこの雪空も吹き飛ばせただろうなあ。

 上空では銀の竜がまるで空中を泳ぐように旋回していて、彼女を中心に雲が発生し、雪が降っている。冷気の破片が光を反射して七色に輝いており大変美しい光景だ。寒いけど。

『……先輩。何とか雲の上まで昇ってみるから、攻撃の準備をお願いします』
「あれを使うか?」
『はい、お願いします』

 蒼い竜は上空へ鼻先を向けて、吠えた。






 校舎の屋上では冬寮と夏寮の生徒達が空戦の見学をしている。
 肉眼で見ると森の上空を旋回する二頭の竜は豆粒より小さく、戦況が分からない。呪術師の生徒は、呪術を使って遠くの映像を自分の視界に投影して観戦している。呪術を使えない竜や獣人は双眼鏡を覗いている。レトロな双眼鏡を使ってはいるが、人間と違って視力が高く、勘が鋭いので下手な呪術師よりも戦況を把握できる。

「カケルの奴、苦戦してるな…」

 呪術で戦場近くに視点を固定し、三次元の映像を視界に展開しながら、ロンドが思わず呟く。いつもより動きが鈍い。相手が格上のルルキスだからだろうか、それとも初めて組むヘンドリックとだからだろうか。

「あいつうまく同調できてねえな」

 気付けば夏寮の寮長セファンが隣で腕組みしながら空を眺めている。
 彼は双眼鏡を手にしていないが戦況が見えているらしい。

「勝てるとは…」
「思わねえな」

 問いかけに即座に返る答。
 カケルは阿呆だが、自分の力を弁えている。それくらい分かっているはずだ。しかし、魔力レベルの高さを誇示してまでルルキスに戦いを挑んでいる。一体何故。

「……でも、あいつがここで終わるとは思えません」

 セファンの横で、ストロベリーブロンドの少女が緊張した面持ちで呟いた。
 それを聞いてロンドは苦笑する。
 女子に期待されてるぞ、カケル。ここで男を見せないと、評価がだだ下がりになるけど、いいのか。

「あ、風が…!」

 同じ冬寮の女子生徒シリカが声を上げる。
 戦場に視線を戻すと、蒼い竜の周囲で魔力を帯びた風が湧き上がったところだった。
 雪空を貫く蒼い風が吹き始める。





 竜の背でヘンドリックは戦慄する。
 肌で感じる程の濃密な魔力が竜の身体から吹き出している。

『しっかり捕まってて!』

 蒼い竜は翼を一打ちすると、真っ直ぐ上昇する軌道を取った。
 竜を取り囲む蒼い風が行くての冷気を切り裂いていく。
 オーロラを切り裂いて竜は飛翔する。

 これが魔力レベルAの風竜か。

 マリアにはこんな力業は不可能だ。
 そして痛感する。
 自分はこの竜の素晴らしい力を生かしきれていない。
 背中にくっついて震えているだけで、戦略さえ後輩任せだ。
 こんなんじゃ、マリアを取り戻すことはできない。こんな不甲斐ない自分では、マリアの元には到底たどり着けないだろう。
 悔しいな。
 だがまだ間に合う。
 せめてこの戦いの間だけでも、彼女に胸を張れる自分でいたい。

「っつ」

 銀の竜が呆気にとられたようにこちらを見上げている。
 雪を撒き散らす雲を抜けて、蒼い竜は雲の上で翼を広げる。
 竜の魔力で酸素の薄さや寒さをカバーしているが、生身の人間にはきつい高度だ。
 ヘンドリックは予めカケルと打ち合わせた通り、とっておきの呪術を展開する。

雷弾炸裂プラズマブレイク!」

 蒼い竜の周囲に5個の拳大の光球が現れる。
 光球は電気を帯びてバチバチと光の糸を吐き出していた。雷は重力に従って、ジグザグの軌道を描きながら銀の竜へ落下する。
 それは光の速さだった。

光盾イージス!」

 クリストルが銀の竜の背で腕を振る。
 瞬時に形成された呪術の盾が、雷の攻撃を防ぐ。
 しかし、物理的な攻撃は防いでも、それ以外は防ぎきれない。
 銀の竜の間近で白い光が爆発する。
 目を焼くような眩い光。

「目くらましかっ?!」

 動揺する銀の竜とクリストル。
 その一瞬で充分だった。
 雷を追って急降下した蒼い竜が肉薄する。

 二頭の竜と二人の竜騎士はオーロラの下で激突した。


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