挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.08 まだ途切れない。だから君は絆を手繰り寄せる

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

78/160

09 空戦(vs.水竜ルルキス)

 空戦科の授業ではパートナーを決めていないフリーの竜と竜騎士は、授業の内容に応じてランダムにパートナーを組む。ヘンドリックは4年生になって最初の1ヶ月ぐらいで、正式にマリアをパートナーに決めた。
 マリアとは元々友達だった。
 成人の選択で竜を選んだ彼女に誘われ、空戦科に進学を決め、パートナーを組んだ。

 竜と竜騎士は異性の方が色々と都合が良い。
 しかし、空戦科に進学する女性は少数派だ。体力の少ない女性は、空戦科の授業はついていくのが難しい。それに竜になる女性は少なかった。
 理想的な異性のパートナーと組める竜や竜騎士は実は珍しい。
 ヘンドリックはとても幸運だったのだ。

 彼はマリア以外の竜に乗ったことは少ない。
 だから他の竜と比較しようにも経験が少ないのだが、その彼から見ても、カケルは特別な竜だと分かる。

「早く終わらせてお昼寝したいなあ」

 よっこらしょっと面倒くさそうに頭をかいて、年下の青年は蒼い竜に姿を変える。
 空を彷彿とさせる鱗の色の竜だ。胴体から翼の先にかけてラピスラズリの色からコバルトブルーにグラデーションしていく。すんなりとした胴体と頭部に、鋭い二本の角は真珠の光沢がある。
 翼は他の竜より大きめで尻尾もやや長めだ。
 飛ぶことに長けるという理想の風竜の体型だった。
 蒼い竜から流れる風は魔力を帯びて澄んでいる。その風に頬を撫でられてヘンドリックはぞくりとした。

『先輩はやく乗って下さい』

 屈み込む蒼い竜の背に、ヘンドリックは飛び乗る。
 向かいでは冬寮の女王ルルキスが姿を変えるところだった。

 屋上に、銀の鱗を持つ流麗な竜が姿を現す。
 独特の潤んだような光沢を持つ鱗に覆われた身体は、胴体が蛇のように長い。手足には水掻きのような皮膜がある。頭部の角は水晶のように澄んで大小様々な大きさで何本も生えている。まるで彼女の額を彩るティアラのように。
 繊細なガラス細工のような翼を広げると、銀の竜は黒い衣服を身にまとったクリストルを乗せ、一気に上昇した。

 カケル達も同時に天に翔け上る。

『ヘンドリック先輩。先手を取ろう』

 蒼い竜が念話で語りかけてくる。

「出来るのか?」
『やってみる』

 銀の竜と対峙して旋回しながら、蒼い竜は急速に高度を上げる。
 竜の魔力で軽減されているとは言え重力と風圧が一気に襲い掛かる。
 マリアより速い。風竜だから当然なのだが、ヘンドリックは少し悔しく思った。

 蒼い竜は数分で銀の竜の斜め上に達すると、一気に急降下する。
 ヘンドリックは敵と交差する瞬間に備え模擬戦のルールで使う矢を準備する。矢尻にはインクの入った小さなボールが付いていて、インクを敵の竜騎士に当てれば勝利だ。
 呪術で矢を空中に浮かべる。

 急降下した蒼い竜の背から矢を放つが、矢は銀の竜の直前で光の壁に阻まれた。
 やはりそう簡単にはいかないか。

『お尻が丸見えよ!』

 すれ違った銀の竜は、身体を捻って蒼い竜の後ろを飛び始める。
 やばい。
 空戦では後ろを飛ぶ竜が有利なのだ。

「おいっ、追い付かれてるぞ!」
『振り払ってやる!』

 蒼い竜はジグザグの複雑な軌道を描いて飛び始める。
 普通の竜なら目を回す動きだ。
 しかし。

『ふふっ。いくら速くてもまだまだ経験不足のようね』

 銀の竜は追い付いてくる。
 ルルキスは真面目に風竜の後を追わずに、カケルの向かう先を読んで斜めに真っ直ぐ飛んでいた。ショートカットされている。

氷雨アイスレイン
守護シールドっ!」

 後ろから降ってくる氷柱の雨を、ヘンドリックは必死に呪術の壁で弾いた。
 これ生身で当たったら痛いぞ。いくら学校の保健室がすぐ下で回復して貰えるとはいえ。副寮長の奴、本気で攻撃してきてやがる。

「サーフェス、このままじゃジリ貧だ!」
『分かってる』

 蒼い竜は弧を描くように飛んで敵の攻撃を避けた後、急に速度を落とした。
 頭を下げて垂直降下の姿勢を取る。
 一瞬、墜落に似た浮遊感と重力の井戸から伸びる魔手を感じた。

 降下はほんの一時で、すぐに蒼い竜は身体を水平に戻す。
 銀の竜との距離はだいぶ開いたようだ。ひとまず振り切ることには成功したらしい。
 しかし、ヘンドリックは斜め上を飛んでいる銀の竜と目が合ってギクリとする。
 海の色の瞳は愉悦を孕んで輝いている。

『さあ私にひれ伏しなさいっ!』

 銀の竜は空中でホバリングして吠えた。
 冷たい空気が重圧のように上からのしかかる。

「マジかよ…」

 ヘンドリックは呻いた。
 蒼い竜は上昇しようとしているのだが、冷気に阻まれて速度を落としている。
 晴れ渡っていた空が急速に陰り、銀の竜の上空に雲が現れた。
 冷たい白い欠片が空から降ってくる。
 細かい氷の欠片が空中を浮遊する。
 それらは雲の切れ間の光を反射して七色のスペクトルを描き出した。


 魔力レベルAの水竜が放つ特殊同調技。
 氷原北極光オーロラヴェール


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ