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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.08 まだ途切れない。だから君は絆を手繰り寄せる

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08 そろそろ始めようか

 スルト・クラスタは陸戦科の4年生だ。
 美少女のような繊細な容姿に細い手足で、一見強そうに見えないのだが、実際は性の悪い狂犬の類である。非常にひねくれた性格で、天使のような笑顔を振りまいたかと思えば、突然ガラ悪く凄んだりする。
 天の邪鬼なスルトを、夏寮の寮長セファンは密かに心配していた。
 スルトは本来ならセファンと同じ5年生なのだ。
 しかし、昨年のチーム戦で問題を起こし、必須単位を取りこぼして留年してしまった。
 戦闘能力が高く頭も良いスルトは、そもそも留年するような成績では無い。

「おい、スルト…」

 夏寮の廊下ですれ違ったスルトに声を掛ける。

「なんだよ寮長」

 不機嫌そうな顔をしてスルトが振り返った。
 こいつは強い弱いで人を判断して、弱ければ無視する。
 魔力レベルAの戦務騎竜であり、元同級生のセファンは彼のお眼鏡に適っているらしく、無視されたことはない。

「この春の寮対抗戦はどうするつもりだ?寮対抗戦は昇級の評価にも関わる。そろそろチームを選ばないとまた留年するぞ」

 春の寮対抗戦は、団体行動で協調性があるかどうか評価される。軍人を育てる空戦科と陸戦科では、いくら戦闘能力が高くても団体行動が出来ない者は昇級できない。
 評価と言っても普通はそんなにハードルが高くないのだ。最低限どこかのチームに入っていて問題を起こさなければ昇級できる。

「あー、その件か。お前の薦めてくれた通り、サーフェスのチームに入るわ」
「何?」

 セファンは眉をしかめた。

「おい、サーフェスは冬寮に移ったぞ。あいつのチームは解散状態だ。それともお前がサーフェスの代わりに纏めるのか?」
「まさか」

 白銀の髪の獣人は、ひょいと小さな肩をすくめてみせる。

「知らないのか、セファン。サーフェスの奴、面白いことやってんぞ。あいつ、冬寮の寮長ルルキスと空戦の勝負して、勝ったら夏寮に戻ると宣言しやがった」
「な、なんだと?!」

 巷で自分のライバルと噂される、氷の女王ルルキスの美貌を思いだしつつ、セファンは絶句する。
 何をやってるんだサーフェス!俺でもなかなかルルキスには勝てないのに、パートナーがいないお前が勝てる訳ないだろう!





「レディースゥ、アーンド、ジェントルメーンッ!いよいよこの時がやって参りました!皆様、空戦のお時間ですよっ?!」
「シリカ……興奮し過ぎだ。それに一体何を賭けたんだ」

 ハイテンションについていけないと、ロンドは頭を抱える。
 拡声器に向かって叫んでいるのは同じチームの女子のシリカだ。
 彼女は生産科の4年生なのだが、ロンドと同じチームのステファンという竜とパートナーを組んでいる。明るい性格を表すような巻き毛は栗色。時折、竜のステファンを巻き込んで暴走し、それを止めるのがロンドの役目になっている。

「ふふっ、ちょうどチョコレートの季節だから、賭けに勝ったら絶対にチョコを貰える権利を作ったの!」
「それは……女子は納得したのか?」
「何言ってるのよ。敗者が勝者にチョコを渡すのよ?女子かどうかは関係ないわ!」

 この時期は何故か、チョコレートのセールが行われ、主に女性から男性にチョコレートを渡すイベントがある。
 もしかしたら賭けに参加していない場合、チョコレートを貰えないのだろうか。義理チョコでも貰えれば貰いたいのだが。
 苦悩するロンドの肩にポンと手が置かれた。

「流れに身を任せるんだロンド。掛けに参加しろよ。今なら間に合う」
「お前は状況に流されすぎだ……」

 妙に真面目な顔をして、独特の水色の髪をした大人しそうな男子生徒がロンドを説得しにかかる。彼は竜のステファンだ。ステファンは空戦科に所属している。
 ステファンもカケル程では無いが強い魔力を持つ竜のため、空戦科に所属させられていた。本人いわく「流される主義」だそうで、何かと突っ走るシリカの防波堤にならずに一緒に流されている。
 ちなみに、彼が決めたパートナーのシリカは生産科のため、空戦科の授業ではロンドとステファンが組んで戦っていた。

「さーて、今日は良い天気ですねー。絶好の空戦日和です」

 シリカの言う通り、空は晴れ渡っていた。
 空戦の舞台になるのは、校舎裏の森なのだが、勝負を見物しに冬寮の生徒達は学校の屋上に集まっている。屋上には広いスペースがあって、竜の発着場となっていた。

「本日の対戦について簡単にご説明を。まず赤コーナーは我等が女王様、ルルキス・イエーロ!学内ランキング一位の水竜です。竜騎士はクリストル・ラマダン。二級戦務呪術師の資格を持つエリートです。そして、自ら女王様の下僕だと言って憚らないマゾです!」

 銀の滝のような髪を払いのけて仁王立ちするルルキスと、彼女の前に跪くクリストル。

「我が君……今日も勝利を約束しよう」
「当然よ」

 跪いて白い手に恭しく口づけるクリストル。

「普通逆でしょ?っと突っ込んでる場合じゃない。ちゃっちゃと進めます。青コーナーは挑戦者、風竜のカケル・サーフェス!魔力レベルAらしいけど本当でしょうか。竜騎士はヘンドリック・ブラウン。彼等は今回初めてパートナーを組みます。氷の女王ルルキス相手にどこまで善戦できるのか?!」

 仏頂面のヘンドリックの隣でカケルは欠伸した。

「こんな天気の良い午後はお昼寝したいなあ」

 相変わらずの調子にロンドはげんなりした。
 真面目に戦う気はあるのだろうか。

「そして、青コーナーの応援に夏寮から見学者が来ています!皆仲良くしてね!」

 見学者だと。
 屋上を見渡すと見覚えのあるストロベリーブロンドの長髪が目に入った。
 金髪を翻した活動的で凛々しい雰囲気の女子生徒はイヴ・アラクサラだ。カケルの本当のパートナーであり、三級戦務呪術師の資格を持つ才女である。
 隣に並んで立っている優しい雰囲気の緑の髪の少女は、彼女の友人のリリーナだろう。二人の後ろに、オレンジ色の髪の背の高い青年が困った顔をして立っている。彼は夏寮の寮長のセファンだ。様子を見に来たらしい。

「カケルっ!」
「うげ…イヴ?!」

 見学者の中にイヴがいることに気付いたカケルが動揺する。

「ちゃんと勝って、夏寮に戻って来なさいよ!」
「う……うん」

 何故かカケルは彼女から不自然に視線を逸らす。
 目が泳いでるぞ。一体どうしたんだ。
 二人の様子を不審に思ったロンドだったが、シリカが拡声器を手に話し始めたので思考を中断する。

「対戦ルールは規定通り、インクの入ったボールを竜騎士に着弾させれば勝ちとします!それでは空戦スタートです!!」

 さあ空戦の始まりだ。

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