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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.06 何気ない約束が俺達の運命を変える

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09 基地へ突入

 森の中で合流した後、カケルは竜に姿を変える。
 竜がいる以上、ちんたら森を歩く理由はない。
 イヴ、オルタナ、スルトの3人は竜の背によじ登った。3人が搭乗すると、竜は翼を広げる。イヴは竜の翼を見て顔をしかめた。

「カケル、本当に大丈夫なの?」
『平気だって。治りかけなだけだよ』

 コバルトブルーの翼のあちこちに塞がりきらない傷跡が見受けられる。
 やはり、すぐには治らない傷だったらしい。
 彼女の心配を余所に、竜は翼を上下させて森の上空に一気に上昇した。いつも通りの飛行に見えたが、何度かカケルと一緒に戦ったイヴには違いが分かる。竜の動きは精細さを欠いていた。本調子ではないようだ。

「で、俺達をどこに配達してくれるんだ?」

 スルトが竜の背から地上の様子を見回しながら聞く。
 気になることがあるから別行動したいと言いだしたのはカケルだ。
 まだ、何が気になるのか、何処へ行くのか、聞いていなかった。

『基地に入りたいんだけどな。基地の中央付近にある食堂が目的地』
「今、兄貴達が絶賛戦闘中だと思うぞ」
『ですよねー』

 森の向こうに基地が見えてくる。
 基地の上空には大きな飛行船が滞空していた。地上ではドンパチをしているらしく、呪術による爆発が起きている。エファランの陸軍が攻撃を掛けていて、基地でソルダートの兵士が交戦している構図のようだ。
 飛行船を遠巻きにするように、何体かの竜が空を飛んでいる。
 その内の一体、オレンジ色の竜が、こちらに気付いたようで寄ってきた。

『お前達!無事だったか』

 それは基地に帰投する直前で別れた、セファンとイリアだった。
 オレンジ色の竜は火の属性の魔力を放出するように、炎の鱗片を撒き散らしている。
 味方を援護するため魔力を使っているらしい。

「セファン先輩、イリア先輩、ご心配をお掛けしてすいません」

 礼儀や常識をどこかに置き忘れてきた野郎共の代わりに、イヴは頭を下げた。
 案の定カケルやスルトは平然としている。

『いや、無事なら良いんだ。すぐに迎えに来れなくて悪かったな』

 オレンジ色の竜はこちらの面々を確かめてほっとした様子だ。

『セファン先輩、ここで何してるんですか?』
『何って援護だが……』

 カケルの無邪気な問いに、セファンが困惑したように答える。
 イヴは蒼い竜の首筋を叩いた。

「分かってることを聞かないの!」
『ええ?だってあんまり効果無さそうだよ?』

 心外そうに声を上げるカケルに、イヴは戦場の様子を確かめた。
 竜達は炎を吐いて飛行船を攻撃している。しかし、飛行船を覆う光の膜が、竜の放つ炎を弾き返していた。セファンの属性強化の援護により、竜達は火力が上がっているようだが、飛行船の光の膜を打ち破るほどではない。
 確かに、セファンの援護は役に立ってはいないようだ。

『あの飛行船、呪術も竜の吐く炎も防いじまうんだよ』
『直接攻撃は?』
『近付くと呪術の攻撃が飛んでくる』

 なかなか厄介なようだ。
 オレンジ色の竜は首を振って困った様子だ。

『とりあえず、お前らはアクレスに戻れ。後は俺らで何とかする』
『いやー、すいませんセファン先輩。それは聞けません』
『サーフェス……?』

 指示を却下する後輩にセファンは訝しげな声を出した。
 あっけらかんとカケルは続ける。

『俺達、基地の中に入りたいんです。セファン先輩、一時的に敵の注意を引きつけて頂けませんか?』

 先輩に向かってなんてことを。イヴは頭を抱えた。
 聞いて貰える訳ないじゃない。

「カケル、セファン先輩にこれ以上迷惑掛けないで、もうアクレスに戻りましょうよ」
『嫌だ』
「陸軍の作戦の邪魔になるわよ」
『陸軍の人達は、制圧に呪術師を同行してますか?もし獣人ばっかりの部隊で地上を制圧しようとしてるなら、大変なことになるかもしれない』
「……制圧は人質の救出優先で、兄貴の部隊が先行してる。呪術師は今空にいる奴らと、後方支援部隊だけだろ」

 オルタナが淡々と言った。
 陸軍を率いるのは、彼の兄だ。ソレルの家はエファランの軍事に強い影響力を持っている。そんな彼の言う情報なので、間違いはないだろう。
 懸念を訴えるカケルの声ははっきりしていて、いつものふわふわした感じではない。
 何かあるのかもしれない。聞いていたイヴはなんとなく嫌な予感がして眉を潜める。ただの命令無視とは違う気配に、セファンも迷っている様子だ。

『サーフェス、呪術師が何だ。何を言っている?』
『……俺の予想があたってしまったら、基地は吹き飛んで大勢の死者が出ます』
「何か大規模な設置型の呪術が仕掛けられているのかしら」
『近いけど、もっと原始的ですね』

 イリアが口を挟む。設置型の呪術と聞いて、イヴはそういう可能性もあるかもしれないと思った。ソルダートは設置型の呪術について、エファランより先進している。
 突然、腕を組んで唸っていたスルトが閃いたという風に声をあげた。

「もしかして、あれか!」
『そう、あれ』
「そうかそりゃやべえな……」
「ちょっと、あんた達2人で納得しないで頂戴!」

 スルトとカケルは何だか通じたようだが、他の面々はさっぱり意味不明である。
 オレンジ色の竜はヴヴと唸って尻尾を振った。

『ああ、お前らは本当にしょうがない奴らだな!これでサーフェスの言う通りとんでもないことになったら、俺は滅茶苦茶後悔するじゃねえか!』
「仕方ありませんね……」

 イリアも竜の背で諦めたように頭を振っている。

「行きなさい」
『先輩……』
『サーフェス、寮に戻ったら覚えてろよ!お前は1カ月便所掃除だ』
『勘弁してくださいー』

 オレンジ色の竜は飛行船の方に向き直った。
 その身体の輪郭から金色の炎が放射される。

『……援護はやっぱり性に合わんな。このたぎる炎をぶつけてやるぜ!』

 セファンは飛行船に向かって突っ込んで行く。
 蒼い竜も斜め後ろをついて飛ぶ。

 特攻するオレンジ色の竜に、飛行船を取り巻いていた空軍の竜がぎょっとしたように後退する。
 彼等より前に出た途端、飛行船から呪術の攻撃が飛んでくる。

『うおらああぁ!』

 セファンは炎を広範囲に吐き出して、呪術の攻撃を迎撃する。
 飛行船の周囲に派手な炎が爆発した。

『今の内に突っ込むよ!』

 皆の注意は派手に炎を撒き散らすセファンに向いている。
 蒼い竜は交戦する彼等の間を縫うように基地へ接近する。気付いた敵軍の兵士が呪術を撃ってくるが、蒼い竜は風を操って攻撃を跳ね返した。
 敵の攻撃圏内を抜けて、蒼い竜は基地の中庭に着地する。狭いスペースのため、イヴ達はすぐに竜の背から飛び降りた。カケルも竜の姿のままでは建物に挟まって身動きが取れないため、変身を解く。

「兄貴達は基地の北と南から同時に攻撃してるはずだ。もうそろそろ、北側の会議室で人質になってる奴らを解放してるんじゃねえか。それで、俺達は基地中心の食堂を目指す、と」
「うん、急ごう。さっき突っ込む時に確認したけど、エファラン側が優勢みたいだね。陸軍の人達が基地の内部に駆け込んでるのが見えた。ソルダートは屋上から飛行船に乗って撤退しようとしてるみたい」

 遠く近くから爆撃や剣戟の音が聞こえてくる。
 敵はイヴ達の侵入に気付いているだろうが、エファラン陸軍と交戦していることもあって、こちらに兵士を差し向ける余裕は無いようだった。
 辺りを伺いつつ、状況を整理するオルタナとカケル。
 イヴは彼らの会話に口を挟んだ。

「私達が余計なことしなくても、軍がうまくやってくれるんじゃない?」
「そうだったら良いんだけどね」

 カケルは僅かに憂いを帯びた眼差しをすると、食堂の方向へ歩き出す。
 ここまで来たのだから、毒食らわば皿までだろう。
 イヴ達も敵の気配に警戒しつつ歩き出した。


作者「今回の話は短めのつもりだったのに……あれ?なんか長くなってないか」
カケル「素敵な言葉があるよ。予定は未定」
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