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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.05 エスケープ!だけど、いつもの枕じゃないと眠れない

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09 空と陸の戦い

 早朝にロンドはカケル達を集めて話をした。

「本日の正午、大規模な虫の掃討作戦が開始される。発案はセファンだそうだ。僕達は攻撃に参加できたら協力して、無理ならセファン達と合流して基地へ逃げる」

 ひゅうとスルトが口笛を吹く。

「へえ、大胆だな」

 説明をしているロンドも、昨日の今日で随分思いきったなと感心したものだ。考えていた以上にセファンの発言力が大きかったらしい。

「そんじゃあ、俺とルークは下で長鱗虫ロングヘッドの足を切るか」
「そうだな」

 獣人二人は頷きあう。
 反対する気はないが、一応気になってロンドは口を挟んだ。

「大丈夫か?上からの竜の攻撃に巻き込まれないように注意してくれ。セファンは遠慮せずに炎のブレスを吐くつもりだぞ」
「そんなヘマしねえよ」

 フレンドリーファイアに気をつけるように言うと、スルトは手を振って気にするなと返す。
 本気になった獣人が虫より素早く動けて、呪術や竜の攻撃に耐性があるのは知っているが、万が一という事もある。

「正午のちょい前に現場の近くに降ろしてくれ。適当に攻撃して、近付くのが無理そうなら逃げるさ」

 スルトはフリーダムに暴れるつもりらしい。
 ロンドは呆れ半分で好きにしてくれと了解した。

「分かった。カケル、二人を乗せて飛んでくれ」
「ロンド兄はどうすんの?」
「僕は…」

 ロンドは一同の後ろで黙って話を聞いていたステラに向き直った。

「ノクターン先生。この戦いだけで良い。貴方と組ませて下さい」
「!」

 驚いて目を見開くステラ。
 彼女の様子を横目で見ながら、頭の後ろで手を組んだカケルがのんびり聞いてくる。

「ロンド兄、俺と組んでくんないのー?」
「僕とお前が組むと非効率なんだ。お互い防御、補助を得意とするタイプだからな。お前は自分の身は自分で守れるし、むしろ上に人が乗っていない方が身軽に動けるだろう」
「まあね」
「僕は守護シールドの上位の、光盾イージスの呪術が使えます。僕が先生を守れば、先生は攻撃に集中できる。先生は攻撃タイプの竜でしょう」

 真剣に説得しようと見つめると、ステラは複雑な表情で答えた。

「確かに、貴方の提案は理に叶っています」

 彼女の受諾の言葉を聞いて、パートナー解消宣言を受けたにも関わらず、気にした様子もないカケルがふっと嬉しそうに笑った。
 その気配を感じてロンドは苦笑する。
 やっぱりお前とは契約する関係にはなれそうにないな。お互いに…。

「ロンド・イーニーク、この私の背に乗るからには、半端は許しませんよ」
「分かっています」

 ステラは厳しい顔で釘を刺す。ロンドは緊張して答えた。
 ロンド達は正午の作戦開始に間に合うよう移動を始めた。






 作戦開始は正午ちょうどの予定となっている。
 正午近くになり、教官達とセファン、実習生の中から選抜された実戦で戦える生徒達は、部隊を組んで基地の空へ上がっていく。

 オレンジ色の竜の背中でイヴは緊張していた。
 夏寮の寮長セファンは火竜だ。
 力強さを感じさせる筋肉が付いた肢体は、赤みがかったオレンジ色の鱗に覆われている。首筋まで伸びる鋭い角は鋼鉄のような硬い輝きを放っていた。尻尾の先には炎が灯っている。強い竜の魔力で、翼を羽ばたかせる度に火の粉が空中に舞った。
 セファンはイリアとパートナーを組んでいる。
 イヴは邪魔にならないようにイリアの後ろにちゃっかり乗せて貰っていた。
 竜は最低でも、大人が6~7人乗れる程度の大きさがあるが、セファンは竜としては小柄な部類だ。カケルも小さ目の竜だったなとイヴは何となく見比べた。

 竜達は編隊を組んで北上する。

 予め作戦で打ち合わせた地点にたどり着くと、一部の竜はさっと降下して獣人を降ろした。獣人達は地上に降りると、虫を避けながら陸路で目標地点に進む。
 獣人達と別れて、彼等とは別行動で竜は進軍を開始する。

 攻撃の第一段階として、まずセファンを主とした火竜や、竜の背に乗る攻撃タイプの呪術師が、中距離から攻撃を入れる。
 広範囲に影響する火力の強い攻撃は、陸にいる獣人達を巻き込む恐れがある。そのため、獣人達とはタイミングをずらし、獣人達が虫に攻撃する前、戦闘の最初の段階に最大火力の攻撃を撃ち込み、敵の出鼻をくじく狙いだ。

 火力の高い殲滅攻撃を放った後に、地上の獣人達が接近して近距離戦を展開する。
 獣人達は陸から。竜達は空から。
 陸と空から挟み込むように虫の群れと戦う。

「さあ、始めましょうか」

 イリアが宣言する。
 邪魔にならないように三つ編みを頭の後ろに纏めた彼女は、竜の背で戦意に満ちた眼差しを前方に向ける。

『久しぶりに全力の炎をぶち込んでやるぜ!』
「遠慮する必要はありません」

 彼女の戦意に同調して、オレンジ色の竜が力強く羽ばたく。
 竜と竜騎士、二つの意思が一致するとき、竜の魔法が発動する。魔力レベルAの火竜である、セファンの特殊な同調技が戦場に広がっていく。


 支援用の特殊同調技、火竜戦鼓舞ブレイブファイア


 先頭で羽ばたくセファンの身体から、炎の鱗片がゆらゆら舞い散って、戦場に拡散する。
 戦場の空気が変わった。
 周囲の竜達は火竜から拡散される熱気に身震いする。
 彼等は身体が軽くなり、力が湧いてくるのを感じた。

「これが魔力レベルAの火竜の能力…」

 味方の意気を鼓舞し、魔力を底上げする力。
 イヴは感嘆の吐息を漏らした。
 彼女の目前で、竜と竜騎士達はそれぞれ自身の最大火力の攻撃を放つ準備を始める。

 進軍する竜達の前には虫の群れの中心があった。
 空に届く柱のような三頭虫ケルベロスの頭部の周囲に、長鱗虫ロングヘッド大地虫ワームがうごめいている。空には羽虫フライが集合して、こちらに向かって来ていた。
 ボス級の虫がいると、周囲の虫も勢いづく。
 実習でいくらか倒しているはずなのに、虫は増えているようだった。

 進軍する竜達は、渦を巻く虫の群れに近付いていく。
 虫の群れとの距離を計って、教官のパルコが全軍への合図と共に呪術を放つ。

「攻撃開始!炎雨矢ファイレイン

 向かってきていた羽虫フライは、パルコの放った炎に飲み込まれて呆気なく空に散る。
 障害物が無くなった空を、セファンは先頭を切って飛翔する。

流星炎メテオ!!」

 イリアの呪術によって、竜の周囲に数個の光球が現れる。
 光球はバスケットボールより大きいサイズで表面に炎が走っている。以前、カケルとイヴと空戦をした時はピンポンサイズだった。どうやらあの時は手加減していたらしい。

「行け!」

 光球は螺旋を描いて、首を伸ばしてきていた長鱗虫ロングヘッドに着弾する。

 きしゃああああ--

 長鱗虫ロングヘッドは悶えて首を捩る。
 セファンは長鱗虫の囲いを突破すると、間近に迫った三頭虫ケルベロスに向かって、豪快に炎を吐いた。

 小柄な竜の口元から、途切れぬ黄金の炎が吐き出され、長大な曲線を描いて虫の群れを横断する。
 炎はすぐに消えず、虫の外皮を養分に燃え広がった。
 辺り一面が火の海になる。

「すごい…」

 数キロに渡って群がっていた虫達は、今やセファンの放った炎の海に溺れている。
 弱い羽虫フライ大地虫ワームは、次々と火だるまになって燃え尽きていった。
 このままの勢いで焼き尽くせればと思った矢先…

 ヴヴヴゥゥ…

 炎の海の中から低い唸り声が聞こえてくる。

『…ちっ。やっぱりボス級は簡単にはいかねえか』
「一時的に離脱しましょう」

 セファンとイリアの決断は早かった。
 一頭だけ三頭虫ケルベロスに近付いて炎を撒いていた竜のセファンだが、途中で攻撃を切り上げると旋回して全力で三頭虫ケルベロスから離れる。

 直後にぶんと音を立てて、先ほどまでセファンが滞空していた場所を三頭虫ケルベロスの首がなぎ払った。
 あのまま調子に乗って炎を吐き続けていれば命は無かっただろう。

「セファン先輩の炎が効いていない!?」

 三頭虫ケルベロスは炎の中から無傷で姿を現す。
 イヴは驚いて息を飲んだ。

「ボス級の虫の外殻は硬く、攻撃タイプの火竜でも有効打を与えることはできません。しかし、ボス級の虫には必ず弱点があります」

 イリアが淡々と述べる。
 竜が放った炎は下火となり、生き残った虫達が首をもたげてくる。攻撃の第一段階は完了。虫の群れの三分の一を焼くことには成功したが、まだ半数近くの虫が生きている。

 地上では獣人の戦士達が突撃を始めていた。
 味方を巻き込むので、もう大規模な攻撃は不可能だ。

 三頭虫ケルベロスは怒ったように首を振り回してくる。
 今度は虫達の攻撃ターンだ。
 先ほどとはうってかわって、竜達は攻撃をかわすので精一杯の状況になった。

 首を伸ばしてくる長鱗虫を避けながら、セファンがぼやく。

『半端に攻撃しても意味ないぜ』
「やはり、弱点をついて隙を作り、一気に攻撃を叩きこまないといけませんね」

 イヴは二人の会話を聞きながら、戦場を俯瞰した。
 三頭虫ケルベロスは元気に暴れている。
 こいつを倒さない限り、他の虫も集まってきてきりがない。
 攻撃を集中して、三頭虫を叩きたいところだが、取り巻きの長鱗虫が邪魔だ。

 見回す彼女の視界の隅に、ちかりと蒼い光が瞬く。
 雲を割って現れた蒼い竜は、三頭虫へと斜めに降下する。

「カケル!!」



 
カケル「主人公はピンチに登場するんだぜ!」
イヴ「まだピンチじゃないけど」
カケル「…」
+注意+
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