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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.05 エスケープ!だけど、いつもの枕じゃないと眠れない

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04 俺達昼寝仲間です

 出発地点まで戻ったロンドは、ステラとパルコに、探査の呪術で見つけた未知の敵について報告した。

「場所は平原の北辺りでしたね…。私もあの付近で強い虫の気配を感じました」

 ロンドの報告を聞いたステラは、顔を曇らせた。

「群れのボスが戻って来ているのかもしれません。今回の実習では、北の近辺には行かないようにすべきでしょう」

 聞いていたパルコは、ステラの懸念を笑い飛ばした。

「ボスが戻って来てるなら、そんな不安定な反応じゃない筈だ。それなら俺も気付いてる。
 だいたい北の方に羽虫フライが多くて、南の方で大地虫ワームが多いんだぞ。実習生に相手をさせるなら、弱い羽虫だろう」
「しかし……」
「考え過ぎだ。ノクターン、君は前線を退いて長いから知らないだろうが、ボス級の虫は最近減ってるんだ。こんな人里近辺に出る筈がない」

 他の竜騎士達も同意見のようだ。
 まだ実習生のロンドや、学校の教師に過ぎないステラの意見は無視される格好になった。

「いいんですか?」
「仕方がないわ…」

 偵察の後でこっそり聞くと、ステラは諦め顔で呟いた。

「もしボスかそれに近い虫がいても、この平原は見通しも良いし、すぐに逃げられるでしょう」

 そう言うステラは憂鬱そうだった。
 苦労していそうだなとロンドは思う。何か自分にできる事はないのだろうか。
 考えながらステラに何か言おうとした時、後ろで黙っていたカケルがぐずりだした。

「ロンド兄、早く帰って寝ようよー」

 お前は子供か。
 偵察中は真面目にやっていたかと思えばこうだ。
 溜息をつくロンドに、ステラはくすっと笑った。

「苦労しますね、ロンド・イーニーク」

 滅多に見ない笑顔にどきっとしている間に、ステラは「午後の講義でまた会いましょう」と言って去って行ってしまった。







 奇岩平原の入口に建てられた、プレハブのような宿泊施設に戻ったロンドとカケルは午前に少し仮眠を取った。
 実質2~3時間ほどの睡眠だったが、辺りが妙に騒がしくなって、目が覚める。
 寝ぼけ眼を擦りながら眼鏡を片手に部屋の外に出ると、騒がしい筋肉質の野郎共がうろうろしていた。

「よう、ロンド。まだ寝てたのか?」

 手を振って近付いて来たのは、同じ4年生の獣人ルークだった。獣人は血の気の多い連中が多いのだが、彼は獣人の割に冷静で真面目なので、ロンドと比較的仲が良い。
 ルークは鋼色の長い髪をうなじでくくって背中に垂らしている。彼の動作に合わせて髪が尻尾のように左右に揺れた。

「ああそうか。今日から合流だったっけ…」

 眼鏡を軽く拭って着用する。
 ロンドは友人の姿を改めて眺めた。

 この虫駆除の実習は、途中から陸戦科の生徒達と合流する。
 今日がその日だったらしい。

「どうだ、今回の実習は一緒に組むか?」
「いいな」

 この後、作戦行動を共にするチームを決める事になっている。例によって、竜は各チームにつき一匹のみ。必ず獣人を入れてチームを組まなければならない。
 喧しくて短気な獣人は苦手なロンドは、ルークなら安心だと頷いた。

「あー、スルト先輩だ!」

 何?
 トラブルメーカーとして有名な、同学年の獣人の生徒の名前を聞いて、ロンドは顔をしかめた。
 気がつくと横に寝癖を爆発させたカケルが立って、手を振っている。

「スルト先輩ー!」
「…なんだあ?ってか、お前誰だ?」

 通りすぎようとしていた、少女と見間違う容貌の、白銀の髪の男性生徒がカケルの声に立ち止まる。
 特徴的な容姿の彼はスルト・クラスタという名前だ。彼は非常に腕の立つ陸戦科の獣人であるのだが、個性が強すぎてチーム戦で問題を起こした過去がある。そのため、成績優秀にも関わらず一学年留年して、ロンドと同じ4年生になっていた。
 スルトはカケルを見て不思議そうにした。

「同じ寮の3年生のカケル・サーフェスです」
「知らねえな。基本、俺様は弱い奴には興味ない」

 傍から聞いていて、先輩としてそれはどうなの?と思うことをスルトは平然と言い切った。
 しかしカケルはめげない。

「やだなあ先輩。学校の時計台の屋根の上で、日当たりの良い場所を譲ってあげたじゃないですか」
「ん……。そういえば…ああ、お前、あの時の奴か」
「知り合いなのか?」

 会話に参加せずにいたルークが、誰に質問しているのかよく分からない問いを投げた。
 質問を勝手にキャッチしてカケルが説明する。

「俺達、昼寝場所を探して校内をうろうろしてると、よくすれ違うんです」
「…そういえば、君達は似たような生態をしていたな」

 ルークが呆れた顔をした。
 同じ夏寮なので、寝食を共にする以上、ある程度の行動パターンは把握している。
 スルトは野生の獣じみた行動が多く、カケルも昼寝重視のあまり変な事ばかり仕出かすので、ルークはこの二人のことを動物か手のかかるペットのように思っていた。
 ちなみに他の夏寮の寮生の感想も同じだ。

「先輩!俺達、同じ昼寝同盟の仲間ですよね!」
「昼寝同盟?なんだか分からんけど、いいな、それ」

 いいのか?

「是非これからも一緒に頑張りましょう!」
「そうだな、とりあえずまずはこの実習からだな」
「はい!昼寝の良さを奴らに知らしめてやるんです!」
「おおよ!」

 意味が分からない。
 しかし、いつの間にか同じチームを組む流れになっている。
 カケルがスルトと組むとなると、必然的にロンドやルークとも同じチームになるのだ。
 いいのか、これで。ロンドはルークと無言で目線のやり取りをしたが、お互いの瞳には諦念が漂っていた。

「そういやお前、今日はあの女と一緒じゃないのか?」

 スルトは、カケルの事は知らないと言った割に、妙に鋭いことを聞く。ロンドはその問い掛けに一瞬カケルの顔が引き攣ったところを目撃した。

「スルト先輩、俺だって一人になりたい時はありますよ。先輩だってそうでしょ」
「ああ、そうだな…」
「昼寝だって基本、一人でするものですし…」
「…カケル、お前この実習に昼寝にきたのか?」
「や、違うよロンド兄。俺はただ考えごとを…」
「ふーん。どんな考えごと?」
「ほら、契約とかいろいろ…」
「ロンド先輩との契約について?」
「そうそう!」
「それで、ロンド先輩と契約した後、私達のチームをどうするのか、考えは纏まったのかしら」

 青ざめたカケルは、冷や汗をだらだらと滝のように流しながら、背後を振り返った。

「イヴ……」

 そこには腕組みして仁王立ちする、ストロベリーブロンドの髪を腰まで伸ばした女子生徒の姿があった。

「ロンド先輩、ちょっとカケルをお借りしてもいいですか」
「どうぞ」

 空色の瞳で睨まれて、ロンドは一も二もなくカケルを差し出した。

「ロンド兄…」
「とにかく、一度話し合ってこい」

 恨めしそうにするカケルの背を押す。
 そうして、宿舎から少し離れた人気のない場所に移動するイヴとカケルの姿をルーク達と共に見送った。



ルーク「修羅場かな?」
ロンド「修羅場だな…」
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