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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.05 エスケープ!だけど、いつもの枕じゃないと眠れない

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03 偵察任務

 冬の朝4時ともなると、まだ辺りは真っ暗闇だ。
 偵察に参加させて貰うため、ロンドとカケルは朝早くに起きて、準備をして集合場所に訪れた。

 睡眠時間が短いとカケルが不平を言うかもしれないと思っていたロンドだが、予想に反してカケルは何も言わない。
 それなりに長い付き合いだが、こういう時にこいつは分からないなと思う。
 いつもふわふわ阿呆なことばかり言っているが、カケルはいざとなったら口をつぐんで自分のすべき事を淡々とこなす。時折、年齢に見合わぬ落ち着きを見せたり、空気を読んでうまく立ち回ったりする。

 集合場所にステラの姿を見つけて、無言のカケルと一緒に彼女に近寄っていく。集合場所には他に数人の竜や竜騎士がいた。

「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたかしら?」
「それなりに…」

 昨夜は緊張して若干眠りが浅かった。カケルも何か思うところがあるのか、夜半まで寝返りを打って余り寝ていない様子だった。
 しかしそれを教師のステラに報告する必要はない。
 ステラも社交辞令で聞いただけのようだ。
 すぐに話を進める。

「実習生の貴方達に、偵察の仕事をして貰うことはないわ。今日は私の後ろをついて飛んで、偵察の仕方を学んで頂戴」
「はい」

 後ろで見学するように言われて、ロンドはほっとして頷いた。何かしろと言われても、まだ学生の自分達には荷が重い。
 続けてステラは藤色の視線をカケルの方に向ける。

「カケル・サーフェス。貴方は気配を殺して飛ぶ方法を知っているかしら」
「いえ…」
「私が見本を見せるから、やってみなさい。風竜なら、こつさえ分かればすぐにできるようになるはずよ」

 実地で教えるというステラに、ロンドはぎょっとした。
 だいぶ荒っぽい、スパルタな指導だ。
 カケルが失敗したらどうするつもりなのだろう。

「分かりました、やってみます」

 ロンドの困惑を余所に、カケルは平然と答える。
 その顔はいつも通り、何を考えているか分からないふわふわとした表情だ。

 ステラの話はそれで終わりらしく、彼女は他の教官と話を始める。
 偵察をどのように行うか、事前に打ち合わせがあったものらしく、話は長い時間はかからなかった。集まった竜と竜騎士達は簡単にお互いの調子を確認した後、すぐに変身して飛び立っていく。
 教官たちに続いて、カケルも竜に姿を変える。
 夜の闇の中でサファイア色の鱗が僅かな光を反射して煌めいた。カケルは小柄でスマートな体型の竜だ。コバルトブルーの翼は他の竜より大きい。飛行能力が売りの風竜ならではの姿である。
 蒼い竜はロンドを乗せて暗い空に舞い上がった。

 先の見えない暗闇の中で、頼りになるのは竜の鋭敏な感覚だけだ。主役は竜で、しんどいのは竜で、乗っている呪術師は暇になってしまう。

 ロンドは集中して飛んでいるだろうカケルを邪魔しないように気を使いながら、通信の呪術を実行した。
 通信の相手は、この暗闇のどこかを一緒に飛んでいる、偵察部隊の教官のひとりだ。
 事前に、空に上がったら通信の呪術で連絡を取るように言われていた。

「…お疲れ様です。こちらは実習生のロンド・イーニークです」
「おお、お疲れ様。レグルス航空師団所属のパルコだ。君の竜は大丈夫かい?」
「今のところは問題ありません」

 暗闇で様子は分からないのだが、カケルは特に慌てたり不安がったりしている様子はない。黒竜のステラの姿は闇に紛れて見えないが、きっと無事に追尾できているのだろう。
 パルコは学校のOBで現役の空軍の竜騎士だ。
 今回の実習には教官として参加している。

「そうか。訓練の時の飛び方を見ていたが、君の竜は優秀だ。ノクターンにくっついて飛ぶだけなら何とかなるだろう。
 さて…竜達に頑張って飛んで貰っている間に、今回の虫の駆除作戦について説明しよう」
「お願いします」

 通信相手のパルコは目の前にいないのだが、ロンドは無意識に軽く頭を下げた。

「我々が葦原国アウトバウンド の未開の大地を開拓するとき、障害になるのは言わずとしれた、虫とひとくくりに呼んでいるモンスター群だ。
 奴らは地域ごとにボスがいて、独自の生態系を築いている。
 虫を駆逐するには、まずボスを倒し、ボスの周囲の強い虫を倒す。最後に弱い羽虫共を散らして、神樹の枝をその土地に挿し木して育てれば、開拓完了。人が住めるようになる」

 神樹とは、このモンスターだらけの世界で、人間が生きていくのに不可欠な環境を整えるための樹木だ。神樹の植わっている半径数キロメートルは透明な結界が敷かれ、虫は入ってこれなくなり、神樹を中心に土地が安定して木々が生え、豊かな森が生まれる。
 ただ、植えたばかりの神樹は虫にかじられやすく、ある程度虫を駆除した地域にしか神樹は植えられない。

「この奇岩平原は、ボスと手強い虫を倒した後は、弱い虫はそのままにして放ってある。毎年実習で使うからな。
 偵察とはいうものの、毎年の事だから虫の種類や生息地もおおよそ検討がついているのだよ。それでも万が一があってはいけないから、こうやって事前に見て回っている」

 パルコは壮年の男性で、落ち着いた渋い声をしている。
 彼は少し笑っているようだった。
 毎年の事なので、気を楽にしているのだろう。

「僕に何か手伝えることはありますか?」

 正直手持ちぶさただ。
 一生懸命飛んでいるカケルには悪いが、ロンドは暇だった。

「探査の呪術を使って、辺りにどんな虫がいるか確認しておいてくれ。あと、余裕があるなら、辺りの地形もマッピングしておくんだ」
「分かりました」

 教官の言葉に従って、ロンドは探査の呪術を展開した。
 辺りの地図や地形を調べ始める。
 探査すると、呪術で作った地図が視界に表示され、その上に虫の所在を示す赤い光点が描き出される。赤い光点はだいたい複数纏まって表示されていた。虫達は群れを作って行動しているらしい。
 それらを注視していると、纏まって動く光点からやや外れたところに、一匹だけ離れて虫がいる事に気付いた。

「こいつは……種類は未知アンノウン?」

 虫の種類を調べるが、知らない種類の虫らしく、種別等が表示されない。もっと詳しく調べようとしたが、その光点はふっと瞬きすると、消えてしまった。

『どうしたの、ロンド兄』

 カケルが声をかけてくる。
 突然消えた反応を訝しく思っていたロンドだが、カケルの声に気持ちを切り替えた。後でパルコかステラに聞いてみればいい。

「なんでもない。お前の方は順調か?」
『ステラ先生、マジで気配消して飛ぶから、追いかけるだけで精一杯だよ。真似して飛ぶとか、そんな余裕ないよー』

 相変わらずボケボケした口調だが、カケルなりに頑張ってはいるらしい。詳しい状況は分からないのだが…。
 お互いの状況がよく分からない状態に、ロンドは微かに苛立ちを覚えた。

「…契約していれば、お互いの状況がすぐ分かるんだがな」

 先ほどロンドがしていた探査についても、契約した竜との間であれば、視界を共有してロンドが見ているものをカケルに見せる事もできる。逆に、暗闇でロンドには辺りの様子は分からないが、カケルの感覚を共有できれば飛行状況が分かるようになる。
 契約について考えて、ロンドはこの際、実習が始まってから気になっている事を聞いてみようという気持ちになった。

「カケル、こんな時になんだが、お前は本気で僕と契約するつもりなのか?」
『……』

 ロンドにとってはカケルは可愛い弟分で、それ以上でもそれ以下でもない。カケルにとっても同じなのではないだろうかと、ロンドは思っている。
 こうして一緒に作戦行動をしても、違和感が付き纏うのだ。
 真剣な問いに、カケルは少し沈黙してから答えた。

『正直、迷ってる…』
「カケル…」
『あーあ、どこかに殺しても死ななさそうな頑丈で、俺が昼寝しようが何しようがノープロブレムで、どこの派閥にも属してない呪術師いないかなー』
「昼寝はともかく、なんで頑丈さと無所属が条件なんだ?」
『……』

 聞くとカケルは黙り込んでしまった。
 理由を聞きたいとロンドは思ったが、ステラの声がして、二人は会話を中断した。

『ここから引き返します。遅れずに付いてきなさい』

 竜は旋回して、基地に引き返す軌道をとった。




 
ロンド「しかし、お前がマッチョ好きだったとは」
カケル「は?マッチョ?」
ロンド「頑丈な奴と契約したいんだろう」
カケル「頑丈イコール、マッチョじゃないと思うけど……もしかしてロンド兄、マッチョ好きなの?筋肉憧れあったりする?」
ロンド「ぎくっ……」
獣人の父親がマッチョ系だったので、頑丈と言うとマッチョを想像してしまう(ついでに筋肉にコンプレックスがある)ロンドだった…
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