挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.03 パートナー契約?それって食べれるの(と惚けたい)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

28/160

03 レグルスタワーの観光

「あー、もうなんなの!? あの昼寝野郎、腹が立つ!」
「落ち着いて、イヴ」

 手にしたフォークを机に突き刺しそうな勢いのイヴを、リリーナはどうどう宥めた。
 美少女が台無しだわ…。眩いストロベリーブロンドの髪に、明るい空色の瞳をしたイヴは、同学年ではちょっとした有名人である。家柄も成績も良く、美人で気の強い性格の彼女は密かに一部の男子生徒に人気がある。
 私?私は一般人代表だよ。リリーナは自分を不細工だとは思っていないが、イヴのような華やかな美人とは違うと思っている。すぐにカールしたがる緑色の髪を肩口で切り揃え、たまに飾りで纏めたりいじっているが、無骨な友人達はなかなか気づいてくれない。

 最近、イヴは入寮歓迎会以来、契約する気がないと言い放ったカケルに腹の虫が収まらず、ことあるごとに愚痴っている。

 ちょうどカケルでも良いかな、と思いかけたところだったらしい。それがカケルの無責任な発言でお釈迦になった。
 これから別の竜を探すのもやりにくいだろう。第三者から見たら、同じチームに仲が良くて高スペックの竜がいるのになんで?と思われてしまう。

 昼食のスパゲティーをぐるぐる掻き回しながら、向かいでイヴは憤懣やる方ない様子で嘆息する。
 リリーナは人差し指を立てて提案した。

「ねえ、気分転換に行かない?」
「気分転換……」

 皿を睨みつけていたイヴは、リリーナの言葉に顔を上げた。

「ちょうど明日は休みだし、最近出来たっていう展望台を見に行こうよ。帰りに甘いものでも食べて、気晴らししよう」
「そうね、そうしようかな」

 王都レグルスに最近オープンしたという展望台の話題を出すと、イヴは頷く。この世界では竜に乗れば空から見下ろせるとはいえ、羽ばたかなければ飛べないので、一箇所に留まって風景を楽しむのは難しい。やはり、高台に登って見下ろした方がゆっくり風景を堪能出来る。
 イヴも展望台からの眺めに興味があるようだ。ゆっくり瞬きして同意した。

「……そういう訳で、私達、明日は展望台に行くから付いて来ないでね」
「なんで俺達に念押しするんだよ。心配しなくても興味ねーよ」

 たまたま食堂に入ってきたオルタナとカケルに、リリーナはついでのように声を掛けた。
 唐突に声を掛けられてオルタナが顔をしかめる。
 隣のカケルはきょとんとした様子だ。

 イヴは彼等、特にカケルから思い切り視線を外して嫌な顔をした。
 あからさまに視線を逸らされたことに気付いたカケルはショックを受ける。

「イヴに無視された…」
「自業自得だろ」

 オルタナは同情する様子もなく、にべもない返事をした。興味が無いことはスルーするオルタナなので、返事をしたのは彼にしては親切な反応だ。
 聞いていたイヴがそっぽを向いたままで言った。

「ソレル、あんたにしては道理が分かってるじゃない」
「お前に味方する訳じゃねーよ。だいたい、お高くとまってるお前に合うような竜がいるかどうか、謎だよな」
「なんですって?」

 聞き捨てならないと、イヴは視線を戻してオルタナを睨んだ。二人の間でバチバチと火花が散る。背景ではカケルがまだショックを受けて石像のように固まったままだ。
 混沌としてきたその場の雰囲気に、偶然食堂にいた寮長のセファンが割って入る。
 彼は空戦科の5年生で、魔力レベルが非常に高く注目されている強い竜だ。その実力に加え、気さくな性格が人気で、夏寮の寮長をしている。

「お前ら、また喧嘩してるのか。いつ見ても喧嘩ばっかりしてるチームだって、噂になってんぞ」
「セファン先輩」

 腰に手をあてて言うセファンに、イヴは気まずく視線を逸らした。

「仲が良いのか、悪いのか、どっちなんだ?」
「……」

 聞かれてオルタナは、いまだ石像となっているカケルを軽く蹴る。放心していたカケルはようやく現実世界に復帰した。

「な、何?」
「お前が答えろよ。リーダーだろ」

 いきなり無茶ぶりされて、カケルは目を白黒させる。

「え、えーと。セファン先輩、俺達は大丈夫です……たぶん」
「たぶん?」

 セファンは胡乱な視線でカケル達を見回す。
 オルタナとイヴはしれっと明後日の方向を向き、カケルは虚ろな瞳でふわふわ笑った。
 リリーナが慌てて抗弁する。

「セファン先輩、カケルの言う通り、大丈夫です! イヴとオルタナのは、ちょっとした挨拶のようなものだし、チーム内で親交を深めるためには時にはぶつかり合いも必要って言うか……」
「まあ、大丈夫ならいいが」

 本気で咎めるつもりは無いらしく、セファンはあっさり追求を切り上げた。

「ほどほどにしろよー」

 軽く手を振ってセファンは去る。
 リリーナは溜息をついた。

「……ねえ、私達もたまには集まって話した方が良くない?」
「集まって何話すんだよ。仲良しごっこはゴメンだぜ」

 そっけなくオルタナが言って、カケルの襟首を掴むと、二人で食堂の注文窓口へ歩いていく。
 彼等が離れてから、イヴが口を開いた。

「気を遣わせて悪いわね、リリーナ。けど、ソレルの言う通り、集まってすることが無ければ、集まっても仕方ないかもしれない。
 何も私達、他のチームと同じ事をしなくても良いんじゃないかしら。結果を出せれば、だけど」
「うん、分かってるけど……もう少し和やかな雰囲気にならないかな」
「善処するわ」

 悲しそうな瞳で見つめるリリーナに、イヴは罪悪感を覚えたようだった。
 空戦科を目指している彼女は勇ましく、男勝りで少しばかり気遣いにかけるところがある。オルタナとよく角を突き合わすのは同族嫌悪の部分もあるのだろうとリリーナは思っている。
 それにしても、このチームのばらばらっぷりはどうにかならないものなのだろうか。







 さて、学校が休みの週末になり、イヴとリリーナは約束通り展望台に来ていた。
 王都に半年前にオープンしたレグルスタワーなる展望台は、十数階建ての高さの建築物で、1階と2階が土産物店や飲食店、2階から展望台までエレベータで上がる造りになっている。エレベータは四方の柱の中で、人が数人乗れる四角い箱を設置型の呪術で上に引き上げる仕組みになっていた。
 他の建物より圧倒的に高いタワーを真下から見上げて、イヴは言った。

「なんか、ロンド先輩の火粉クラックで簡単に壊れそうなタワーね」
「それは言っちゃ駄目」

 注意して見ると、レグルスタワーを構成する鉄骨は細く、派手な赤色の外殻は薄い。呪術師で一学年上の先輩であるロンドを思い出して、リリーナは内心同意した。ロンドの得意技である爆破の呪術で容易く吹き飛ばせそうだ。イヴの言う通り、張りぼて感がある。
 女子二人は土産物店を冷やかした後、チケットを買って展望台に上がった。
 展望台からは王都レグルスの街並みを360度見渡せる。

「晴れてて良かったね」

 リリーナのコメントに、イヴは頷いた。
 ちょうど天気が良く、雲が少ないので、街の背景に山脈や、高天原インバウンドの結界で覆われた半透明のドームがうっすら見える。
 言葉もなく見入っていると、リリーナが申し訳なさそうな声で言う。

「ごめん、私お手洗いに行きたくなっちゃった。先に2階に降りるね」

 トイレは2階にしかない。降りてしまうと、チケットを買い直さないと展望台に上がれないため、もう少し景色を見ていたいイヴは展望台に残った。

 リリーナはエレベータに乗り込んで2階に降り、トイレを探す。案内図によると目的地は2階の隅のようだった。飲食店の間にある通路を曲がってトイレに入り、無事用を済ませる。

 世の男性は女性が用を足しに行くと、待ち時間が長いことにお悩みかもしれない。時間がかかる理由は様々だが、洗面台の鏡の前で身嗜みを整えるのも主な理由の一つに挙げられる。
 勿論リリーナも簡単な化粧用品は持ち歩いていたし、鏡に映った自分の顔を確認する事を忘れなかった。

「……気分転換になったかなぁ」

 鏡の前に立って、リリーナは思いを巡らせる。イヴと、不機嫌の元凶となったカケルの行動について。
 入寮歓迎会ではリーダーシップを発揮したカケルだが、またやる気のない状態に戻ってしまっている。昼寝以外の目的でやる気を出させることは出来ないのだろうか。
 考えながら髪の毛をいじっていると、突然地面が大きく揺れた。

「わっ、何?!」

 リリーナは咄嗟に洗面台に捕まって揺れをやり過ごす。
 壁の向こうで爆発音が響き、焦げ臭い臭いが漂い始めた。
 不穏な気配がする。
 揺れが収まるのを待った後、慎重に辺りの様子を伺いながら、トイレの外に出る。
 廊下には白っぽい煙が漂っていた。

「……火事だー!」

 何処かで叫んでいる声が聞こえる。
 どうやら火災が発生しているらしい。

「もう、イヴがあんな事を言うから…」

 火粉クラックで壊れそうなタワーだと言った友人の言葉を思い出しながら、リリーナはハンカチを取り出して口元にあてると、煙を吸い込まないようにしながら、安全な場所を目指して歩き始めた。


セファン「寮の3階の廊下にでかい盥があるんだけど、なんなんだ?」
クリス「あー、それはカケルの奴が…」
セファン「またあいつらか……」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ