挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.03 パートナー契約?それって食べれるの(と惚けたい)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

27/160

02 普通に昼寝しろよ

 授業は退屈だ。いっそカケルの奴をからかえたら、暇潰しになるだろうと考えるが、カケルは別のクラスである。
 オルタナ達3年生は3つのクラスに分かれていて、カケルとリリーナは同じクラス、イヴは別のクラスで、チームメイトは見事にクラスがバラけていた。

 生徒達の前の壇上では、でっぷり太った中年男性が教鞭をとっている。先ほどから前の席の女子達が、男性の髪の生え際を指してひそひそ声で話している。

「あいつの髪、実は無いんだって」
「うっそお。きっもー」
「授業中にセクハラ発言するし、最悪だよね」

 煩いなと思いながら、オルタナはサバイバルナイフを取り出して、暇つぶしに消しゴムの加工を始める。
 隣の男子生徒は、ぶっといナイフで消しゴムを切り刻んでいる同級生に気付いてぎょっとした。触らぬ神に祟りなし。オルタナの手元に気付いた周囲の生徒は、賢明にも注意したりすることなく沈黙を選んだ。

「……ええー、そろそろ皆さんの中には、種族を選んで成人した人が多くなってきていると思います。
 成人して竜や獣人になった者は、契約して付き合う相手を決めなければいけません。契約は結婚とイコールではありませんが、無関係ではありません。異性同士で契約すれば、ほぼ間違いなく結婚するからです」

 この授業は契約についてらしい。
 教師は契約について書かれた小冊子を生徒に配布する。

「契約は違う種族同士、人間と竜、人間と獣人の間で結びます。獣人は契約は必須ではありませんが、竜は必須です。
 何故かというと、竜は呪術との親和性が高いので、呪術で操られる可能性があるからです」

 小冊子には、呪術との親和性は、竜の魔力と関係するという説明が細かく書かれていたが、オルタナは関係ないので無視した。
 獣人のオルタナは契約しなくても生きていける。

「具体的な契約の仕方ですが、契約をすると決めた相手とお互いに契約紋を刻みます。竜や獣人は本能で契約紋の付け方を知っています。その方法は此処ではお話できませんが…」

 男性教師は一瞬やらしい顔をしたので、前の席の女子生徒が嫌な顔をした。

「お互いに契約紋を付けるのですが、人間側は呪術で契約紋を付ける必要があります。呪術の契約紋については、呪術の講義で教えて貰えますよ。これは悪用すると、竜を支配して操ることも出来ます」

 操られると聞いて、クラスの中に何人かいる竜の生徒は不安そうにする。

「と、言っても抵抗する竜に無理矢理、契約紋を付けるのは難しいので安心してください。逆に、竜の方から人間の方に契約紋を付けるのは簡単ですが、それで人間を操ったりは出来ません。
 結局のところ、契約は双方の合意があって初めて意味があるのです。正しい契約は互いの能力を増幅、向上させます。
 竜騎士と竜、呪術師と獣人はパワーアップのために契約する者もいますね」

 竜といえば……カケルの奴は契約の問題をどうするつもりだろうか。この間はイヴに派手に蹴られていたが。
 入寮の歓迎会でチーム結成となったオルタナ達だが、相変わらず集まって仲良くするということもなく、バラバラである。他のチームは定期的に集まって遊んだり勉強したりしているようだ。

「契約は竜の話が多いですが、獣人には代々決まった血族と契約を結ぶ一族もいます。……そうだな。ソレル!」
「……んあ?」

 消しゴムを加工するのに夢中になっていたオルタナは、突然指名されて、不機嫌そうに眉を上げた。
 周囲の生徒は、馬鹿教師の奴、空気を読めよ!と思っている。彼等は、同級生が手にしている肉厚のナイフの切っ先がこちらに向かないか、冷や冷やしていた。

「ソレル……何しとるんだ」

 教師はやっとオルタナの手元に気付いたようだ。

「はあ、別になんでもいいじゃないっすか」
「良い訳があるか。刃物は教室に持ち込み禁止だ。しまって真面目に授業を聞きなさい。
 まったく、陸のソレルと名高い家の名前が泣くぞ」
「……」

 ソレル家は、優秀な陸軍の軍人を多く輩出してきた家だ。また、エファランの貴い血筋を守るため、代々王侯貴族と契約して専属の護衛をしてきた一族でもある。
 有名な一族出身だと自慢出来る立場だが、母親の死の遠因となった一族に良い感情を抱いていないオルタナにとっては、教師の言葉はうざったいを通り越して腹立たしい。

「すんません」

 口だけ謝りながら、ナイフを鞄にほうり込んで、消しゴムの欠片をこっそり掌に握り混む。
 素直に言うことを聞いたオルタナを訝しく思いつつも、教師は教室の前の黒板に向き直って説明を続けた。

「ともかく、契約は他人事ではありません。エファラン国民の3割が竜、3割が獣人、残り4割程度が人間です……」

 背中を向けた教師の頭に向かって、オルタナは消しゴムの欠片を爪先で弾く。
 消しゴムの欠片は教室の空中を横断して、黒板の前に立つ教師の頭を背後から直撃した。
 教師の頭から異様にふさふさした毛髪が弾き飛ばされ、黒板にバウンドして床に落ちた。中年教師のピカピカした後頭部があらわになる。

「きゃっ!」

 妙に可愛らしい悲鳴をあげ(中年男性の野太い声で)、教師は禿げ上がった頭部を両手で覆いながら振り返った。

「ソ~レ~ル~!!」
「先生の頭が邪魔で黒板が見えなかったので」

 睨む教師に、しれっと答えるオルタナ。
 他の生徒達は心の中だけで、今の方が見にくいよ!と突っ込む。ピカピカ光る教師の頭が気になって授業に集中出来ない。
 前の席の女子生徒達は爆笑するのを必死で堪えている。

「オルタナ・ソレル! 廊下で立っとれ!」
「へーい」

 もとより授業の内容に興味がないオルタナは、大人しく廊下に出た。授業終了と同時に、お説教をくらう前に逃げようと思いながら。






 鬘を飛ばされて怒った男性教師に捕まる前に、オルタナは校庭に出た。ぶらぶらと花壇に沿って校舎裏の森の方向へ歩く。
 今の季節は秋で、空気は肌寒く、日光が暖かく感じる。エファランの四季は夏の暑さが厳しく、冬は雪が降るほど冷え込まないが冷たく乾いた風が吹き渡る。春と秋はとても短い。

 人気の無い道を歩いていると、見覚えのある後ろ姿を見つけた。チームメイトかつルールメイトの同級生カケルが、何故か巨大な盥を前にごそごそやっている。

「何してんだ……」
「あ、オルト、良いところに!」

 こちらの気配に気付いたカケルが振り返って顔を輝かせる。その頬にはペンキかと思われる緑色の液体が跳ねた跡があった。

「俺、これから竜の姿になるから、このペンキを鱗に塗ってくれない?」
「は?」

 謎の要求に、オルタナは顔をしかめた。

「なんで…」
「俺、気付いたんだよ」

 真面目な顔をしたカケルは滔々と語り出した。

「竜の姿になって昼寝しようとしたら、人が寄ってきて眠れない……それは何故か。俺の鱗の色が派手過ぎるんだよ!」

 拳を握って力説するカケルに、オルタナは若干引きつつ「そ、そうか」と相槌を打つ。

「問題は鱗の色なんだ! だから、ペンキで迷彩色に塗ってしまえば、森に溶け込んで誰も気付かない筈!」

 いや、無理だろ。もしそうだとしても、竜の巨体のペンキ塗りなんて面倒臭いことを手伝わされるのは真っ平御免だ。
 オルタナは半眼になって、冷たく言った。

「というか、普通に人間の姿で昼寝すればいいだろ」
「え」

 指摘されてカケルは首を傾げて、考え込んだ。

「そう……かも?」

 男子二人の間を、冷たい風がひゅるるーと吹き抜けた。





カケル「良い案だと思ったんだけどなー」
オルタナ「ちゃんと片付けろよ…」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ