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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.02 竜になったはいいもののパートナーを選べと言われて悩む俺

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06 入寮イベント開始

 悩んだ末、イヴはお試しということで、一時的にデュオのチームに入れて貰うことにした。入寮の歓迎会後に、正式に加入するか返事することになっている。

 しかしこのままデュオのチームに入るかどうかは、正直迷っている。

 野外演習でのチームについては、リリーナの言う通り、悪くは無いと思っていた。呪術師の自分に、竜のカケル、獣人のオルタナ、希少な法術の使い手リリーナ。種族が偏っていないし、能力的にはバランスがいい。

 だがその反面、チームの纏まりが圧倒的に悪い。

 自分とオルタナは相性が悪い上にカケルはマイペース、リリーナはチームを主導するような性格ではない。ロンドがいなければチームとして成り立っていなかっただろう。
 カケル達と組んだ場合の未来がイメージできない。纏めるものがいないバラバラのチームで、一体誰とどう戦うのか。

 カケル達とのチームは最良にして、最悪のチームだった。あの野外演習での出来事が印象深過ぎて、他のチームが色褪せて見える。
 デュオ達のチームも優秀なメンバーが揃っているようだったが、イヴはどうにもしっくりこない自分に苛立っていた。

「入寮の歓迎会はね、俺達先輩チーム5班がそれぞれひとつづつ鍵を守って、新人のチームがそれを奪うゲームだよ」
「鍵?」
「まあ何でも良いんだけどね。毎年、入寮に合わせて部屋を掃除して鍵をつけ直すから、古い鍵が余るんだよ。有効利用してるだけさ」

 入寮歓迎会の前の日に、デュオは歓迎会の詳細について、イヴに教えてくれた。
 彼は口元を酷薄に歪める。どうもこの先輩は自信家らしいとイヴは思った。竜としての能力は平均以上だし、容姿もそれなりに整っている。だからだろうか、些か他人を見下す傾向があるようだ。

「一個も鍵を取れなかったチームは、半年掃除当番の班になる。逆に全ての鍵を集めたチームには特典がある」
「私は先輩のチーム…鍵を守る側ですよね。いいんですか?」

 先輩対後輩の図式で、イヴは先輩のチームに入るため、入寮の新人とは別になる。
 不公平ではないかしらと首を傾げると、デュオは笑った。

「この歓迎会の本当の目的は、今年の入寮者の実力を見ることさ。君は問題ない。過去にも学年の違うチームに所属した例はいくらでもある」
「そうですか」

 先輩がそう言うのなら、問題無いのだろう。
 イヴはひっかかるものを感じつつも、自分を無理矢理納得させた。

「3年生で竜になったのは16人、内、空戦科志望は12人。うちの夏寮に入った竜は、3人。3人とも魔力レベルCらしい。
 今年ははずれ年かな。鍵を取れるチームがあるかどうか、心配なくらいだ」

 デュオは口の端に嘲笑を浮かべた。
 聞いていたイヴは、表に出さなかったが、疑問を感じた。入寮した竜の3人の中に、カケルは入っているのだろうか。カケルはどう考えても、レベルCでは有り得ないのだが。

 イヴは知らなかったのだが、例の空戦科の説明会で、カケルだけ魔力レベルを計らなかったので、あいつは魔力レベル大したことないだろうという噂が一人歩きしていた。教師の手元の判定記録を見れば一目瞭然なのだが、一般の生徒には公開されていないのだ。




 そして、歓迎会当日。




 入寮の歓迎会は、休みの日の午後に開催された。
 学校側に許可を貰って、広い校庭と校舎裏の森を使用することになっている。イベント終了後は、寮の食堂で集まってノンアルコールの飲み会になる予定だ。

 夏寮の寮長のセファンは、今年入寮してきた新人17名を校舎前に集めて、陽気に声を張り上げた。

「へいっ、君達、チームは決まったかな?
 決めてない奴はイベント中に決めていいぜ!
 それじゃ、お楽しみのイベントの説明をするぜ!」

 暑苦しいノリに、新人の生徒達は若干白けている。
 寮長の隣で様子を見ていたイリアが、眼鏡を拭きつつ、淡々と突っ込みを入れた。

「……セファン、テンションが高すぎます。彼等はせっかくの休日を、寮のイベントに無理矢理参加させられているのです。
 せめて、参加することの意義と報酬を提示しなければ」
「そうだった!」

 副寮長の指摘に、セファンは大袈裟に自分の頭を叩く。

「これからやんのはチーム戦で、先輩チームから鍵を奪って全部集めると、なんと、寮の食堂の一年タダ券が貰えます!」

 新人の生徒達の反応は芳しくない。
 だって、基本的に食堂は決められた時間帯なら無料なのだ。深夜や午後3時におやつを食べたい奴でない限り、特に嬉しくない報酬である。
 白けたままの生徒の顔を見渡して、セファンは慌てて付け加えた。

「あと、4年生の飛行理論基礎の講義の単位もサービスするぜ! 先生に了解は貰ってる。空戦科の奴は必須単位で、他の科の奴も補完の単位に使えるぜ!」

 これには、多少の反応があった。
 授業を受けなくても一つの講義の単位がもらえるのだ。成績に影響がある報酬に、何人かの生徒はやる気が起きたようだ。

「けど、今言った特典は、全部鍵を集めたチームだけな。逆に一つも集められなかったチームは、掃除当番をしてもらうから」

 上級生に都合の良い罰ゲームに、新人の生徒達からブーイングが上がる。

「大丈夫だって! 毎年だいたいどのチームも鍵をゲットしてるから。
 校庭に3つ、校舎裏の森の中に2つ、先輩のチームが陣取ってるから、まずは校庭から行ってくれ。
 先輩のチーム一つにつき鍵一つ。普通に模擬戦してもいいし、口で交渉してもいい。お前らで勝負の方法を決めろ」

 ブーイングをものともせず、セファンは早口で説明する。
 副寮長のイリアが後を引き取った。

「チームを決めたら、校庭に向かって下さい。時間は夕刻の鐘が鳴るまでです。夕刻の鐘までに、鍵が全て入寮者のチームに渡ったら、終了とします」
「それじゃあ、スタートだ!」

 行動開始の合図がされ、入寮の生徒達は、ばらばらとチームごとに集まって話し始める。夏寮の3年生18名の内、4~5人ずつ固まって、既に3つチームが出来ているらしい。イヴの姿は彼等の間に無く、リリーナは戸惑ってキョロキョロと辺りを見回している。オルタナは群れる生徒を一瞥して呟いた。

「くだらねえ。俺は行くぜ」

 彼は一人さっさと校庭に向かっている。
 その後ろ姿を見送りつつ、リリーナはぽけっとしているカケルに近寄った。

「ちょっと、何してるの?皆バラバラじゃない!」
「そうだねえ。あはは……」
「笑ってる場合!?」

 ふわふわした表情で笑うカケルに、リリーナは絶望して髪を掻き回す。彼女はカケル達を信じて、他のチームに入らずにいたのだ。しかし、案の定というべきか、どうしようもないチームメンバーのバラバラっぷりに、さすがに諦めて他のチームに入れて貰おうかと考え始めた。

「もういいわ。私、他のチームに……」
「ちょっと待った」

 リリーナの言葉をカケルが途中で遮る。

「リリーナは先に校舎裏の森の方に行っててよ。俺達、後で合流するから」
「カケル……?」
「まあ、うまくいかなくても、リリーナの分の鍵は用意するよ」

 何か思惑がありそうな事を言うカケルに、リリーナは驚いて見返した。探るように見つめるリリーナに、カケルはただふわふわ笑って何も説明しようとしない。
 リリーナは溜息をついた。

「…いいわよ。私、自分の分くらいは何とかなるし。こうなったら、とことんやってやるんだから」

 やけくそのように拳を握るリリーナ。
 カケルはマイペースに言った。

「うん、頑張って。俺は校庭でちょっと寝てから行くから」
「は?」
「だって今日良い天気じゃん。さっき昼ご飯食べたばっかだし、超眠いよー」
「……」

 やっぱり他のチームに入れて貰った方が良かったのでは、と今更ながらに迷うリリーナだった。


川の神様「お前が欲しいのは、この黒いカケルか、それともこっちの白いカケルか…」
作者「両方?」
川の神様「この欲張り者め!」
+注意+
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