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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.02 竜になったはいいもののパートナーを選べと言われて悩む俺

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05 チーム分けどうするの

 リリーナは野外演習と同じチームを組みたいらしい。
 オルタナとイヴが去った後、リリーナはカケルの向かいに座って食後のデザートを食べながら話を続けていた。

「だって私達、最後は息合ってたじゃない。それに普通は、野外演習のチームで組むんだよ」
「うーん」
「あとお節介かもしれないけど、イヴはともかく、カケルとオルタナは入れるチームあるの? オルタナは一人でも良いとか言ってるけど。カケルはどうなの?」

 聞かれてカケルは腕を組んで唸った。
 リリーナの指摘は少々耳に痛い。自分が集団行動から外れている自覚はあるカケルだ。マイペースなカケルと組んでくれる生徒は少ないだろう。

「特にカケル、空戦科じゃない。チーム戦を何とかしないと、卒業出来ないよ」
「それって必須なの?」
「空戦科と陸戦科は、授業でチーム戦があるんだけど、寮で決めたチーム推奨らしいよ。基本的にはチーム決めは任意なんだけど、単独だったりチームメンバーが揃ってないと、成績の評価は辛くなるんだってさ」
「へえー」
「カケル、落第はまずいんじゃない」
「……」

 適当に授業をサボっているカケルだが、最低限進級に必要な点数は取るようにしていた。家出しているカケルは学校の授業料を叔父に払って貰っている。流石に叔父に迷惑をかけるのはマズイと思っているのだ。
 リリーナがどこまでカケルの事情を知っているかは分からないが、彼女の情報が正しければ確かにカケルには分が悪い。

「むむむ……寝てても単位が取れる科目は無いものか」
「そんなのあるわけないでしょ」

 バッサリ切って捨てると、リリーナは食器を片付けて立ち上がった。

「とにかく、何とかしなさいよ! でないと後どうなっても知らないからね」

 足音も高くリリーナが歩み去ると、後には若干途方に暮れたカケルが取り残された。







 リリーナにああ言われたものの、ある意味自分以上に自由なイヴとオルタナを御せるとは、カケルは考えていなかった。
 空戦科の講義について行けなけくなったら、それはその時考えればいい。先の事をあれこれ考えるのは無駄、と言えば格好良いが、カケルの場合は考えるのが面倒臭くて、途中で思考を放棄しているだけである。

 彼の思考は、いかに寝心地の良い場所を確保するかに全力が向けられていた。

 学校の校舎は軍事訓練を行う競技場や、隣接する寮の施設を含めると相当に広い。エファランの国が作った学校で王都にあるだけあって、この世界全体で見ても上から数えた方が良い規模の学校だ。
 その広い校舎を、カケルは塀の上や屋根の上に登ったりして、猫のように睡眠場所を探して徘徊していた。

 寝てばっかりの割に、カケルが太っておらず、むしろしなやかな筋肉が付いているのは、睡眠のために常人では考えられない場所を歩いているせいだ。崖から落ちた時に「意外と筋肉が付いている」と思ったイヴが、筋肉の付いた理由を知ったら呆れるだろう。

 睡眠場所について、カケルの最近のお気に入りは、学校の東校舎の片隅の大木の木の枝だ。東校舎は研究科の中でも、芸術や音楽を専攻する生徒のための教室があるエリアで、時たま心地好いメロディーが校舎から聞こえてくる。
 ソルダートの侵攻やモンスターの脅威に晒されているエファランでは、芸術や音楽は暇人か変人の嗜みだった。貴族でも戦えるかどうかが重要な世界で、生活に直接関係しない芸術を愛でる者は少ない。

 カケルは高天原インバウンド生まれで、実家が実家なので多少の芸術に関する教養はあったが、今彼にとって重要なのは子守唄になる音楽かどうかだ。

 晴れていて風が気持ち良い午後、東校舎から聞こえてくる音楽は、ちょうど眠気を誘う緩やかな弦楽器の低音だった。
 カケルはこの午後は東校舎の2階と隣接する木の枝の上で、惰眠を貪ることに決めた。
 しばらく弦楽器の協奏曲を楽しみながらうたた寝していたカケルだが、覚えのあるソプラノの話し声が響いてきて目が覚めた。

「……デュオ先輩のチームですか?」
「そうだよ。君なら足手まといにはならない、どころか、十分戦力になるだろう」

 それはイヴの声だった。
 彼女は人気の少ない東校舎の2階の廊下で、5年生の男子生徒と話していた。カケルは無視しようと思ったが、つい聞き耳を立ててしまう。

「まさか、問題児のソレルやサーフェスと組むなんて考えてないだろう? キャンプで彼等と組まされたらしいが。学校側は何を考えているんだろうね」
「バランスを考えて、らしいですが」
「バランス? それは一体何のバランスなんだか。僕は、君の成績を羨んだ誰かの陰謀だと思うね」

 デュオという先輩は、野外演習の最初の方でイヴが言ったようなことを言う。オルタナが聞いていたら、頭がおめでたい先輩だと皮肉を言っただろう。

「彼等と組んだら、君の品性が下がりそうで恐ろしいよ」

 悪かったな、下品で。
 流石のカケルもちょっと眉をしかめつつ、昼寝を諦めて身を起こした。枝葉の間から東校舎を覗き見る。
 遠目から、派手なストロベリーブロンドの女子生徒と、赤銅色の髪の男子生徒が向き合って話しているところが見て取れた。

「考えさせてください」
「何か迷うような事があるかい?」
「これから卒業まで同じチームを組むなら、慎重に考えたくて。それに、先輩と同じチームの皆さんがどう思うか……」
「君の加入を反対する奴なんかいないよ」

 どうやらイヴは、デュオ先輩のチームに誘われて、判断を保留にしようとしているようだ。思ったような同意が得られなくて、デュオは少し苛立っている。

「だが……そうだな。真剣に、前向きに検討してくれると嬉しい。俺のことも」

 デュオは腕を伸ばしてイヴを壁際に追い込んだ。
 俗に言う壁ドンの態勢だ。

「俺は魔力レベルBの火竜。君に相応しい能力を持っている筈だ。契約を考えて欲しい」
「デュオ先輩……?」

 二人の距離が急激に近付く。
 その様子をカケルははらはらしながら見守った。

「止めて下さい!」

 二人の影が重なる直前で、イヴが声を上げてデュオを押しのけ、距離を取った。カケルは何故かほっとした。

「先輩の申し出はとても嬉しいです。ですが、今はもう少し、考えさせてください」

 離れたイヴが訴えるように言うと、デュオはそれ以上迫るつもりを無くしたようだ。

「良い返事を期待してるよ」

 そう言って階段を降りて去っていく。
 後に残ったイヴは少し考え込んでいる様子を見せたが、やがて顔を上げると、東校舎から去っていった。
 一部始終を目撃したカケルは、何故か胸の奥で不快感を覚えてしゃがみこむ。

 なんだろう、モヤモヤする。

 イヴがモテるのは今に始まったことじゃない。彼女は容姿端麗で成績優秀、多少気が強いが卑怯な事を嫌い、性格も良い。
 だからこんな事は当然あって然るべき事なのに。

 野外演習のチームを馬鹿にされたからだろうか。そうか、今日の昼ご飯で賞味期限切れの食材を食べてしまったからだろうか。
 カケルは途中から、真面目に自身の健康面について考え始めた。昼食に入っていたキノコにあたったんだろうか。あれは絶妙な風味だった。

 うんうん唸っていると、足場にしている大木が突然大きく揺れた。

「おらっ!!」
「わっ」

 聞き覚えのある掛け声と共に、足場が不安定に揺れて、カケルは木の枝を踏み外して数メートルを落下した。
 突然のことに受け身を取り損ねて、体勢を崩しつつ地面に着地する。

「どんくせえな」

 尻餅をつくカケルを見下ろして、オルタナが言った。
 どうやら彼は樹上のカブトムシを落とすごとく、大木の幹を蹴ってカケルを落下させたらしい。
 いったい何のために。

「オルト、酷いよー。何するのさ」
「うるせえ」

 金髪を逆立てた獣人の青年は、カケルの非難の声をどこ吹く風とばかり、片耳をほじりながら聞き流した。

「おい、そろそろ何か考えついたか?」
「え?」
「あの馬鹿女に参りましたと言わせる方法だよ」

 思わぬ言葉に見上げると、オルタナは悪戯っ子のような表情で笑っている。
 カケルはぱちぱちと瞬きすると状況を飲み込んで、口元に笑みを浮かべた。それは彼の事をよく知らない人間が見れば驚きそうな、若干黒いものを含んだ笑みだった。

「じゃあ、こうしようぜ……」


イヴ「っくしゅ!」
リリーナ「どうしたの?風邪?」
イヴ「いえ…なんだか悪寒がするわ」
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