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風竜の俺と竜騎士な君 作者:空色蜻蛉

Act.16 風竜の俺と竜騎士な君

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06 君が好きだと気付いても降参なんかしてやらない(最終話)

 久しぶりに両親の家でゆっくり休んだイヴは、翌日元気に学校に登校した。
 イヴは正式にはまだ軍属ではない。
 あくまでも本業は学生で、星翼協会エクセラードの手伝いで、三級戦務呪術師として色々な任務をサポートするという立場だった。
 空戦科の生徒で上級生は空軍で働きだしていたが、それは5年生以上の竜騎士と戦務騎竜の資格と単位を取っている生徒に限られる。イヴはまだ4年生で、竜騎士の資格は取っていない。規定通りに学校の授業を受ける必要があった。
 空戦科の教室に入ったイヴは辺りを見回す。
 カケルはまだ来ていないようだ。

 まさか、さぼるつもりじゃないでしょうね……。

 さすがにこの期に及んで授業をさぼってお昼寝三昧するつもりはないだろう、と思いたい。イヴの不安を余所に、カケルは教師が授業を始めても姿を現さなかった。
 あのお昼寝竜……何を考えてるのよ!

 苛々しつつ授業を終えたイヴのもとへ、空戦科の先輩であるロンドが空軍の服装で現れる。

「アラクサラ君、ちょっといいか」
「はい」

 イヴはロンドと共に、学校の人気の無い場所に移動した。
 中庭に面した廊下の隅でロンドと立ち話する。

「カケルがどこに行ったか、知っているか?」
「いいえ……まさか」

 ロンドは困った顔でイヴに二つに折り畳んだ紙片を渡した。
 そこにはこう書かれていた。



 イヴへ。

 家出します。探さないでくださいぴよ。



「……あんのお昼寝竜~っ!」

 イヴは紙片を千切って千切ってちぎりまくって呪術の炎で灰にした。ロンドが額に手をあてている。

「あー、アラクサラ君。カケルは今朝、空軍のマクセラン大佐のもとに現れて、高天原インバウンドにリリーナ君を迎えに行かせて欲しいと頼んだそうだ。ソレルが後押しして許可が降りた。カケルはオルタナ・ソレルと共に高天原へ向かった」
「家出って、紙には書いてありましたが」
「冗談だろうな。カケルは君の騎竜だ。空軍は当然、君と一緒に行くものだと思っている」

 そこまで聞いて、イヴは疑問に思った。
 ロンドは全て分かってイヴのもとに訪れたようだ。
 いったい何のために。

「今朝、僕のもとにこんな紙が降ってきてな」

 ロンドは溜め息を吐きながらもう一枚、紙を取り出す。
 そこには「ロンド兄、イヴをよろしく。もう一枚の紙はイヴに渡しておいて」と書いてあった。

「僕にも指令が下った。カケルと高天原にいるリリーナ君達のサポートの仕事だ。おそらく、それを見越してカケルは僕に置き手紙を置いていったんだろうな……」

 立場上、ロンドはイヴと共に高天原に行かざるをえない。
 イヴ達が追い付くまで数日程度だが、お昼寝竜は竜騎士無しに羽伸ばしができる機会が与えられたということだ。
 そこまでして、なぜイヴと距離を取ろうとしたのだろう。
 疑問に思ったイヴだが、昨夜の会話を思い出して理由を察する。アラクサラ家に入るのが嫌で、あのお昼寝竜は逃げ出したのだ。どうりで挙動不審だった訳だ。

「アラクサラ君、どうする?」
「決まってるわ」

 イヴは蒼天の瞳で、ロンドを真っ直ぐに見る。

「追いかけます! 私も一緒に連れていってください!」

 これから先、何回も口にする言葉をイヴは宣言する。
 カケルがカケルであり、イヴがイヴである限り、追いかけっこは終わらない。二人の絆も、終わらない。





 蒼い竜は澄みきった空を飛翔する。
 まんまと煩い少女を置いてきてやったと内心小躍りしながら。
 背中に乗った金髪に紅眼の青年が呆れた顔で言う。

「お前も懲りない奴だな。アラクサラをからかうのも大概にしとけよ。あの女に蹴り倒されて死んでも知らないぞ」
『イヴに殺されるなら本望だよ、ふふふ』
「馬鹿が……」

 親友オルタナの突っ込みにもめげずに、カケルはふわふわ笑った。

『別にいいでしょ。オルトもリリーナが心配で、一刻も早く側にいきたいんだから』
「そんなこと一言も言ってねえよ」

 オルタナはそう否定して顔をしかめるが、照れ隠しだとカケルには分かっている。親友が大切に想っている少女、リリーナのもとへ早く行きたいと考えているのを見越して、カケルは話を持ちかけたのだ。
 エファラン最速の風竜であるカケルなら、普通の竜より早く高天原へ到達できる。

『飛ばすよー!』

 蒼い竜は加速する。
 山を飛び越え、海を飛び越え、空を切り裂いて風と同化するように駆け抜ける。
 もう、故郷だった高天原に心残りは無い。
 今の彼の帰る場所は愛しい少女の蒼天の瞳。
 帰る場所があるから、好きな場所へ飛んでいける。




 これはエファランの守護風竜と呼ばれる青年の最初の物語。
 彼の活躍により、ソルダートとエファランの戦いは終止符が打たれることになる。やがて、竜でありながら呪術の知識を持つ彼は、ダイアルフィールドの七賢者セブンサージとして役割を担い、エファランを守っていくことになるが、それは別の物語として語ろう。


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